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 松下電工にいた当時,事業部内にMacintoshを普及させ,様々なシステムを導入していったわけですが,その中で大いに活用されている情報共有ソフトがありました。「Now Up-to-Date」というスケジュール管理ソフトです。クライアント・サーバー型のスケジュール管理ソフトなのですが,自分のスケジュール管理だけでなく,他人のスケジュールを閲覧することができました。見栄えも使い勝手もよく,登録したスケジュールをドラッグ&ドロップで変更したり,バナーをグイッと引っ張って登録したりできました。Mac専用ソフトでしたが,事業部はMacだらけでしたから,パソコン上級者を中心に,スムーズに広がっていきました。難点は‥‥特にありません。とにかく大人気のソフトでした。

 その頃,「グループウエア」なるものがコンピュータ雑誌で話題になっていました。それがどういうものか分からなかったので,様々なグループウエアを業者に紹介してもらい,実際に触ってみました。富士通さんの「TeamWARE」,九州松下電器さんの「PANAPIOS」。そして,IBMさんに買収される前のロータスさんの「Lotus Notes」。国産の製品はスケジューラや掲示板,施設予約などのアプリケーションを提供するタイプなのに対し,Notesはアプリケーション自体を作り込めるミドルウェアという印象でした。当時のグループウエアは,「Now Up-to-Date」と比較すると,アプリケーションの完成度はまだまだ低いと感じましたので,Notesで作り込んで完成度を高められるのは魅力的でした。

 当時,情報システム担当を兼務していた私には,数多くの野望がありました。例えば,事業部内のメンバーが部門の壁を越えて活発に議論できる掲示板を作りたい。それから,過去に作った提案書を文書データベースに保管して,他のメンバーが再利用できるようにしたい---などなど。Notesを導入してアプリケーションを作り込めば,それが実現できると思いました。

Notesは導入されたものの‥‥

 その後しばらくして,事業部にLotus Notes が入ってきました。事業部内の全パソコンにインストールを終え,すごいシステムを作ろうと意気込んでおりました。しかし,いつまで経っても活用されることはありませんでした。導入担当の私自身の問題です。アプリケーションを作り込む時間を持てなかったのです。

 そりゃそうです。当時,私が片手間に管理していたパソコンは,約120台。すべてにIPアドレスを設定し,引越しのたびにイーサネットを引き直し,調子が悪いパソコンがあれば修理に出して交換し,使い方がわからない人がいれば教育し,メンバーのメールアドレスを追加したり削除したり,メーリングリストを作ったり,ファイルサーバーのバックアップを取ったり。私の限界でした。せっかく導入したNotesは,まったく活用できないままでした。

 そして,ショッキングな出来事が起きます。その日は朝からNotesサーバーがトラブルでダウンしていました。しかし,私がそれに気付いたとき,既に正午を過ぎていました。使っている人が少なく,クレームすら上がってこなかったのです。「せっかく導入したのに,使ってもらってない」。導入を推進した私は悲しい気持ちになりました。

 私はグループウエアの意味を考えていました。グループウエアはメンバー全員が使うから意味があるのではないか。グループウエアの掲示板に重要なことを告知しても,もし読んでいない人がいたら,伝わらないのです。グループウエアで,事業部をもっと便利にしようという私の野望は打ち砕かれました。