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 昨年から,私は明治大学商学部クリエイティブビジネスコースの講師を勤めています。担当している「ベンチャービジネス論(前期)/起業プランニング論(後期)」の今年度講義は,いよいよ来る2007年4月12日から始まります。

 この講義では,受講生ひとり一人がブログを企画運営します。日々の情報発信を通じて,自己PRをしながら,惚れ込んだ商品について熱く語り,いわば「ネット行商=アフィリエイト」をするのです。また,先輩社長とも「経営者会報ブログ」を通じて対話することで,経営者の心に触れる機会を持ちました。そこで,この講義を「ブログ起業論」と称しております。

 初めての昨年度は,マーケットリサーチと経験が不足していたため,受講生に過度な期待をしたり,講義と課題のペースを誤ったりしました。そのため,開講時には60人強いた受講生が,後期の最後には10数名にまで減ってしまいました。また,時間が足りずに,企業の経営者やキーマンに出会い,プロジェクトを提案・実践して,最後に報告をするというゴールにまでたどり着けない受講生もいました。

 そこで,2年目を迎える今年の講義は,前年の反省と大学生の現状を踏まえ,内容をチューニングすることにしました。そして新たな「ブログ起業論」の挑戦を始めます。

講義ブログ+メーリングリストの活用で参加者全員を巻き込む

 昨年度の講義でも「講義ブログ」を積極的に活用しようと試みました。

 当日の講義で使ったPowerPointの資料を,講義ブログからPDF形式でダウンロードできるようにしたのです。また,講義の感想や課題の提出なども講義ブログへのコメントやトラックバックで行いました。

 しかし,ブログの欠点は,自ら見に行かなければならないこと,横連携がしにくいこと,一斉の情報共有がしづらいことなどです。総じて積極性に欠け,コミュニケーションも不得手な学生たちには,もっと積極的に情報を伝え,参加者全員を巻き込むツールが必要だと考えました。

 そこで,今年は講義ブログと合わせて,メーリングリストを活用することにしました。幸いにして,明治大学では全学生にメールアドレスを付与しているので,すぐにでも始めることができます。

 ここでは,講師からのメッセージに加えて,各受講生による自己ブログのPRや,相互リンクの依頼,共同PRなどができるようにしたいと思います。学生同士で力を合わせて,それぞれのブログへの集客や告知を行えるようにするのです。

2つのブログを1つのブログに統合

 昨年度は,前期に名刺代わりの自己紹介ブログを立ち上げ,後期に販売支援のための目的別ブログを立ち上げるという「2つのブログ」体制を勧めました。

 しかし,ただでさえブログに不慣れな学生には負担が重すぎたようです。そのため,後期のブログが軌道に乗るのに時間がかかり,肝心の販売支援プロジェクトが最後まで遂行できない例も散見されました。

 また,逆に2つのブログの役割があいまいになったり,更新頻度が少なくなったりという弊害も見られました。

 これでは本末転倒ですので,今期からは,企画運営するブログは1つに統合します。当初から,販売支援のブログを立ち上げて,その中で自己PRなども合わせて行うように勧めます。

好きなもの探しに時間がかかる学生には助け舟

 私が一番ショックだったのは,「惚れ込んだ商品」探しに時間がかかる学生や,なかなか見つけられない学生が多かったことです。

 この「ブログ起業論」のモデルは,実は,近江商人がわが子を育てる時に課したという「なべぶた行商」です。昨年同様に,今年も講義の最初に,映画「てんびんの詩」を見てもらおうと考えています。

 この修行は,そもそも「どこにでもあって売りづらい商品=なべぶた」を売ることで,「買い手よし,世間よし,売り手良し」三方良しのあきんどの真心を体得するものです。それに比べて,自分が好きな商品,惚れ込んだ商品,ネットでしか買えないこだわり商品を選んで売るのは,はるかに楽な課題だと考えていました。

 しかし,すぐに好きな商品を選べた学生は,ごく一部だけでした。これだけモノに囲まれた豊かな時代にあって,しかも就職や起業よりはるかに気楽に選べるはずなのにです。「自分が好きなものがない」「誰かに語りたくなることがない」という事実は,かなりショッキングでした。

 ですから不本意ながら,自分で選べない学生には,アフィリエイト関連のイベントに同行したり,こちらから課題を与えたりして,はやくブログのスタートが切れるようにします。

「講義→実技」あらため「実技→講義」に

 昨年は,前期に座学で教えたことを,後期の実技で生かすという発想で,前後期の講義を組み立てました。ところが,前期で教えたはずのことが,後期に生かされていないと感じることが多々ありました。そこで学生に尋ねてみると「教わってない」という答えが返ってきました。

 驚いてばかりはいられません。

 友だちに気楽なケータイメールしか出していない時に,経営者の心に響く「メール道」を説いても,その必要性も出す怖さも感じません。しかし,お会いした経営者にお礼メールを出す時には,さすがに困るようです。そこで,あらためて「メール道」についても聞いてくるのです。

 そこで,今年からは最初に,実践的な課題=実技に挑戦していただきます。そして,十分に困ってもらった上で,はじめて方法論を説くというスタイルに変更します。それも前後期といった大きなリズムではなく,1回おき2回おきといった小刻みなリズムで,小さな成功体験,失敗体験を繰り返していただこうと考えています。

前期から個別発表する機会を与える

 昨年の講義では,後期になってからは受講生が少なくなったこともあって,それぞれ2回に1回は全員の前で進捗発表をする機会がありました。そこで,私が個別にコーチングやアドバイスをしたのです。

 学生たちの中には,あと一歩が踏み出せない人,当然行うべきアフターフォローができていない人が多かったことにも驚きました。聞けば,小さなことで悩んで立ち止まってしまったのです。そこで,個別発表の時にそれを質しながら,自分で判断させたり,時には導いていきました。

 講義を完走!した学生たちに聞きますと,この発表がよいトレーニングになったと評価を受けました。ですから,今期は,前半から実技を盛り込むと同時に,その進捗を発表する機会をなるべく増やしたいと思います。受講生にとっても,仲間が先に進んでいくのを目のあたりにすれば,よい刺激になるでしょう。

 昨年の講義ではさらに,起業家を目指す学生たるもの,毎週1冊は本を読むべきだと考え,経営に役立つ本を選んで課題図書にしました。週に1回ぐらいの講義では,とても起業に役立つ基礎知識を伝えきれないと思ったことも一因です。私も,学生の時には,それぐらいのハイペースで読み漁っていたからです。理解を深めるために,読んだ本の感想をまとめてブログに書くことも勧めたのです。

 ところが,このペースで本を読み,感想文を書いた学生は,残念ながら一人もいませんでした。さらに,完走した学生でさえ,「毎週1冊はきつい」とぼやいていました。

 正直言えば,これはとても残念なことです。

 しかし,「ブログで自分と一押し商品を売ること」「その商品を販売する会社の経営者やキーマンに会って提言をすること」の方が大切です。ですから,今年は,推薦図書を月に1冊ぐらいに絞り込んで,小出しにしていこうと決めたのです。さて,どれだけついてくるでしょうか。

社会人サポーターのあたたかい協力

 昨年は,日本実業出版社のみなさんが一年にわたって講義を聴講してくださいました。また,後期からは「会計を使って経済ニュースの謎を解く」などの著作で知られる公認会計士の望月 実先生がご聴講くださったのです。

 社会人の聴講生の方々は,受講生たちの発表を聞きながら,ご自身の経験に基づく貴重なアドバイスやチャンスを与えてくださいました。講師のいたらぬ点をカバーしてくださり,大いに励ましてもくださいました。

 今年も,大変ありがたいことに,何人かの社会人サポーターの方が聴講してくださるそうです。

 惚れ込んだ商品が見つからない学生を導いてくださることもあるでしょう。また社会人の眼から見て,学生たちのブログやプレゼンについて,厳しくもあたたかい評価をしてくださるでしょう。

 そして,ともすれば「立ち止まりがちな受講生」の背中を「もうひとおし」してくださるはずです。

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 一見すると,今年の講義は学生たちのレベルやニーズに合わせて,チューンナップというよりデチューンしたように見えるかもしれません。しかし,「お客様は受講生のみなさま」であり「私はサービス提供者」という自覚で,マーケティングをしたと解釈してくださいませ。

 この挑戦が功を奏するでしょうか?

 ブログ起業論の模様は,引き続き「講義ブログ」などで公開していきます。コメントやトラックバックもお待ちしております。どうぞお楽しみに!