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 松下電工の事業部内でグループウエアの導入に挫折した後,社内ベンチャー企業の立ち上げに参加しました。1996年当時,世の中は不景気真っ只中で,大企業では閉塞感打破のため,社内ベンチャー制度を導入する企業が相次ぎました。私が勤務していた松下電工も例外ではなく,一般社員からビジネスプランを公募し,審査で合格したものをベンチャー企業として独立させる制度ができました。

 当時,野球場のスコアボードなど,大型表示盤を販売する部門に所属しながらも,社内の情報システム構築にどっぷりはまりつつあった私にとって,社内ベンチャー制度は福音でした。「なんとしてでも,情報システムの仕事に専念したい」と思っていましたので,必死にビジネスプランを考えて,決死の覚悟で申し込みました。

 その結果,他のチームと一緒にやることを条件に,社内ベンチャー企業を設立することができました。そのチームとは,サイボウズ初代社長の高須賀さんら,情報システムのプロフェッショナルが集まり,システムインテグレーションの事業化を目指すチームでした。私にとっては,自分のスキルを磨く上で,最高のチームに交ぜてもらえることになりました。

 事業部の仕事を終了し,社内ベンチャー企業を立ち上げ,新たにシステムインテグレーターとしてのキャリアをスタートした私は,仕事が面白くて没頭していきました。会社の近くに六畳一間のアパートを借り,時間を気にせずに働ける環境を作りました。そして,日々,お客様のシステム構築に奔走しました。LANの設置だったり,ファイルサーバーの構築だったり,DNSの運用管理だったり,ソフトウエアライセンスの管理だったり,いろいろやりました。新しいシステムの導入に,トラブルがつきものなのは,当時も今も変わりません。ハードの故障やソフトのバグに悩ませながら,何度も徹夜の作業を経験しました。

初めて見たWebアプリに衝撃を受ける


 そんなとき,あるWebアプリケーションに出会いました。それは,同じ社内ベンチャーのメンバーが作ってくれた「行き先掲示板」です。システムインテグレーターという職業は,現場への出張が多いので,他のメンバーがどこで何をしているのかわかりません。そこで,誰がどこで何をやっているかが一覧でわかるように,行き先掲示板のCGIプログラムをメンバーが開発してくれました。

 私にとっては,Webアプリケーションを間近で見るのは初めてのことでしたが,頭に雷が落ちたような衝撃を受けました。なにしろクライアントPCには,特別なソフトは要らず,Webブラウザがあればよい。WindowsでもMacでも使える。インターネットにつながっていれば,世界中どこからでも読み書きできる。ソフトはWebサーバー側に1回インストールすればよい。ソフトのバージョンアップもサーバー側だけでよい。

 さらに驚いたのは,そのソフトの開発期間でした。実質,3日くらいで作られたのでした。

 「なんだ,この技術は??」

 私は興味をそそられずにはいられませんでした。すぐにCGIとPerlの本を買ってきました。本のとおりにやってみると,私でも簡単にWebアプリケーションを作ることができました。CGIを使えば,Webブラウザとデータをやり取りするのは極めて簡単。画面表示はHTMLで書ける。それまでのソフトウエア開発とまったく違う,「標準化」されたネットワークアプリケーション技術に,大きな可能性を感じました。