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図1●AMAのWebサイト
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図2●WebEXのWebサイト
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図3●Sugar Professional CRM by SugarCRMの紹介ページ
図3●Sugar Professional CRM by SugarCRMの紹介ページ
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 先日,あるアウトソーシング・ベンダーの方と懇談していたところ,マイクロソフトのCRMパッケージ・ソフト「Dynamics CRM」の話題に及んだ。この方の話では,あるユーザー企業がこの製品を選択して,現在導入作業に入っており,作り込みをしている。作り込み作業はアウトソーシング会社ではなく,ユーザー企業が指名したシステム構築ベンダー(SI会社)が担当しているそうだ。

 筆者はこの話を聞いて,「このプロジェクトは過剰投資だ。収益を得られるようになるまでには相当な時間がかかるだろう」との印象を持った。そもそも,CRMパッケージ・ソフトに作り込みを施すこと自体がおかしいと筆者は考えている。

 それに,このユーザー企業がなぜDynamics CRMを選んだのかがはっきりしない。価格が安い,あるいはSI会社が薦めた,というところが理由のようだ。そう考えると,ユーザー企業による主体的な製品情報の収集がないがしろにされているのではと思った。

 ユーザー企業が製品選択を論理的に,かつ主体的に実施するためにも,そしてCRMパッケージ・ベンダーは論理的にかつ主体的に顧客に選ばれるためにも,ITのマーケティング・コミュニケーションには「三種の神器」が必要である。

 今回も前回の記事に引き続き,展示会への出展,ユーザー・コンベンションやWebセミナーの開催といった,マーケティング・コミュニケーション活動のあり方について考える。

展示会の参加者は「本当の顧客」ではない

 展示会への出展と,ユーザー・コンベンションは区別して考える必要がある。展示会は,もっぱら潜在的な見込み顧客を見出す機会と考えるべきだ。一方ユーザー・コンベンションは,既存のユーザーを積極的に囲い込む機会とすべきだ。

 展示会は,ある種“見本市”である。数多くの展示会参加者と会える。ただ,展示会への来場者が明確にブランドを意識して「目指してやってくる」と考えるのは間違いだし,来場者が企業内における意志決定者や起案者――つまりCRMアプリの購入に影響力を持つ人物だと考えるのも間違いだ。

 どちらかというと,参加者の多くは情報収集というのが本旨だろう。また,従業員の動機付け,あるいは教育訓練の一環といった目的で参加させている企業も多い。それらの参加者を標的顧客(商談相手)と誤認するITベンダーが,意外に多い。

 筆者は米国の巨大展示会に何度も参加してきた。筆者の動機を振り返ると,参加した理由は,数多くのセミナーが開催されていたことである。セミナーでは専門的なテーマを取り扱っているため,ヒントが得られる場合もある。さらに大きな魅力は,そこで多くの人と出会えることだ。業界で活躍する多くの人と知り合う機会が,巨大展示会だったのである。

 出展社はこれらのことを考慮し,展示会への出展はリード情報の収集に徹するべきだ。ただ,そのリード情報の収集量によっては,出展費用が見合わない場合もあるので注意したい。

 ユーザー・コンベンションを開催する場合は,展示会への出展とはまた違った目標を設定すべきだ。ふさわしい目標の一つは,製品発表の場にすることだ。米Microsoftは3月に米サンディエゴでMicrosoft Dynamicsユーザー/パートナー向けカンファレンス「Convergence 2007」を開催した。ここでスティーブ・バルマーCEOが「Dynamics CRM Live」のデモを見せた。効果的なプレゼンテーションと言えるだろう。

 もう一つは,顧客を囲い込むための働きかけの場にすることである。いわゆる「日本型接待」が存在しない米国の場合,ユーザー・コンベンションには顧客を接待するという意味合いも含まれている。多くのユーザー・コンベンションは,リゾート地にある豪華なホテルを開場に選んでいる。

 ベンダーがユーザー・コンベンションを開催する際に心がけたいのは,顧客企業の担当者間でネットワークを作ってもらうように誘導することだ。オピニオン・リーダーになりそうな担当者を,セミナー・セッションのスピーカーとして招待する。するとしばしば,そのスピーカーを中心に,関心事が似た担当者同士でコミュニティが形成されるのだ。前回,企業は「顧客間インタラクション」を形成すべきと指摘した(前回の記事)。ユーザー・コンベンションは顧客間インタラクションを形成する良い機会なのだ。

 米Avayaのユーザー・グループ,InAUUが主催するコンベンションを筆者は長年ウォッチしてきた。実際,そうした顧客間インタラクションの形成がしばしば見られた。

 このように筆者は複数のITベンダーのイベント活動に関与してきた。その経験から言うと,展示会への出展とユーザー・コンベンションの開催は,目的を明確に分けないと失敗する。それぞれの目的を見失わないようにしないと,いつの間にか出展したり開催したりすることが目的になってしまう。

 さらに指摘すると,費用対効果を厳しく評価する尺度を設けておかないと,すぐにコストがふくれあがり,その投資に見合わないものになる。特に制作物やデモンストレーションに関する費用は見栄えを重視していくと過大になりがちなので,注意が必要だ。BtoB製品にきらびやかなデモンストレーターが必要なのだろうか。

Webセミナーをもっと活用せよ

 ITベンダーはしばしば,セミナーを開催して見込み客を集めようとしている。最近はそのセミナーを「Webinar(ウェビナー)」や「Webcast」という動画配信技術を使って,Web上で展開するケースが増えている。

 次の画面は,Webセミナーの一つである。米国マーケティング協会(the American Marketing Association:AMA)が運営しているサイト「marketingpower.com」のものだ。AMAのモデレータとスポンサー企業のスピーカーが対談形式でスポンサー企業の製品やサービスを紹介する(図1)。

 Webセミナーのメリットはいくつかある。一つはコスト面で有利であること。言わずもがなのことだが,“リアルなセミナー”とは違って,会場を用意して案内状を送り,という段取りを必要としない。このため,セミナーの開催にかかる総コストが相対的に低くなる。最初は,また,実況中継型,録画型の両方の形態を選択できる。ライブの場合は,スピーカーと視聴者との間でQ&Aセッションを実施できる。セミナーを録画しておき,ネットに公開しておくことも簡単だ。一方で,スタジオで対談形式の対話を録画しておき,それをネットに公開するというアプローチも可能である。

 米国は電話会議(テレコンファレンス)が一般的なので,こうしたWebセミナーが受け入れられやすいのだろう。日本ではまだそれほど普及していないが,米国のサイトを見るとWebセミナーがたくさんある。

 さて,サイト上で「view on-demand webcast」といった視聴するためのボタンをクリックすると,実際にWebセミナーの配信を受託している米WebEX社のサイトに移動し,図2のような画面が表れる。WebEXはIPベースのテレビ会議システムやWebセミナー技術を開発・提供している大手ソフト会社である。

 参加希望者や視聴希望者は,自身の住所,氏名,会社名,連絡先,自社のプロジェクトにどう関与しているか,といった情報を登録しなければならない。マーケティングの典型的な情報収集方法である。

 企業はこのWebセミナーを活用すれば,さまざまな展開が可能になるだろう。WebExのサイトを見ると,CRMアプリの機能としてこのWebセミナーを取り込もうとする試みが進んでいることが分かる(WebEXのWebページ)。

 「Sugar Professional CRM by SugarCRM」は,WebExが開発・提供しているソフト「Interactive Selling」をCRMソフト「Sugar Professional」で使えるようにするプラグイン・ソフトである(図3)。WebExのサイトマップ(http://www.webex.com/sitemap.html)を見ると分かるが,さまざまな業務パッケージ・ソフト向けにプラグイン・ソフトを開発している。米Cisco SystemsがWebExの買収を発表しているが,買収する理由がここにあるように筆者は感じた。

 WebEXは当初テレビ会議システムとして広まったが,すでにこの枠から飛び出して,様々な場面で使える「マーケティング・コミュニケーション・メディア」として育っているようだ。

 「Web2.0」という言葉がもてはやされているが,製品にしろ,サービスにしろ,接する人々の態度や,あるいは市場や顧客のアダプション(adaption:適合度合い)は日米で大きく違う。当然,米国の方が積極的な人が多い。だから米国の方がマーケティング・コミュニケーションがやりやすいわけだが,日本も可能性がないわけではない。

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