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 これまで国内および海外の企業と連携して様々なモデルの海外オフショアを実行し,その中で多くの企業の責任者や担当者と問題点を話し合いました。そして,オフショアの改善・拡大に関連して,!)オフショアがうまく進まない,!)オフショア工数が予想以上にかかる,!)日本人が数名常駐しており予想以上にコストがかかる,!)育成したオフショア技術者が離職した──などの問題を聞きました。

 これらの問題の原因を海外側に押しつけるケースをよく目にしますが,日本側に原因があることも多いように思います。海外IT企業には見識の高い経営者やスキルの高い技術人材が確実に増えてきており,彼らと協力関係を築き,ソフトウェア開発などの委託を最終的に決めるのは日本企業だからです。

 日本の製造業には数十年前から海外取引や海外生産などを行っているところもあり,海外市場の特質,あるべきプロセス,なすべき対応を知っている人材が比較的多く育っています。

 それに比べて,国内ソフト会社の多くは国内取引が中心だったため,海外取引の経験やノウハウが少ないのが現状です。国内ソフト会社も,市場のグローバル化,顧客の強いコストダウン要求,人材不足などにより,打ち手の一つとして,海外オフショアに急きょ強い焦点を当てるようになりました。国内でさえ遠隔地とうまく取引できていない状況であるのに,一足飛びに海外オフショアに飛ぶところにリスクが潜んでいます。

 今回はオフショア展開を円滑に進めるための日本側の変革マネジメントついてお話しします。

トップの号令だけでは現場は動かない 

 海外オフショアの実情や課題を知らず,経験のないところで,トップが「海外オフショアに向かって進め!」と号令しても,現場がその方向に進まないという光景を多く目にします。海外オフショア拡大のための各種セミナーも頻繁に行われていますが,期待されたように進んでいないのが実情です。なぜでしょうか。

 日本企業の担当者の多くは,オンサイト/ニアショアでの仕事のやり方に慣れ,遠隔地にある会社,ましてや海外企業とオフショアで仕事をすることに大きな抵抗感があります。国内でも,東京の会社が沖縄や北海道の会社と日々コミュニケーションしてタイトなスケジュールの仕事をうまく進めるケースはあまり多くありません。これを克服するためには,遠隔地とうまく協働するための「オフショアマネジメント」が求められます。

 国内の技術者の多くは,詳細なドキュメントをあまり書かず,Face-to-Faceの打合せでコミュニケーションして仕事をすることに慣れているため,オフショア対応によって手間が増えることを懸念します。また従来のやり方が変わるとなれば,自分の得意分野や位置付け,そして先行きに不安を感じます。

 グローバル化に向け,英語でドキュメントを書き,海外企業と英語でコミュニケーションせよとトップが指示しても,現場にその下地や風土がなければすんなりと進むことはありません。現場の担当者は,未知の領域や異文化対応に不安を感じ,積極的に取組もうとしないのが普通です。

 他社のオフショアプロジェクトの成果報告を聞いたとしても,それはあくまでも事例であり,自分の会社への適用は難しい,あるいは自分の担当するプロジェクトは全く別であると考えます。

 一番大事なことは,オフショアがうまくいくような感触を,技術者自身に持たせながら進めるということです。

 一部の有能な人材が積極的に手を挙げてオフショアプロジェクトに取り組み,順調に進むケースがあります。その一方で,組織的な取組みではなく,企業トップが特定の担当者に対してオフショアを号令し,担当者のスキルや努力に依存し過ぎてうまくいかないケースも多く見受けます。

 海外人材のスキルと対応がよくて,初期段階は一時的にうまく進んだとしても,海外市場の技術,人材等は刻々と変化するため,次の拡大段階で行き詰まることもよくあるのです。

 トップが海外オフショアの方針を決めた。重要なのは,その後のアクションです。