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 先日,明治大学商学部の教え子から,講義ブログに「はっとするコメント」が寄せられました。

 私が講師を務める「ブログ起業論」は,自分がほれ込んだ商品を1年間ネットで広報し,行商するという変った授業です。1年間の講義…というより実体験を通じて,ブログ道が目指す「独立自創×共創共栄=独創共栄」の境地を味わい,「ブログ自在人」に少しでも近づいてほしいと願っているのです。

 講義も冒頭4回の案内を終え,いよいよ,各人がブログを開設することになった矢先に,そのコメントは寄せられました。

「商品を売る…といっても,それをどうやってやるのかの詳しい説明がされていないのに,とりあえずブログを立ち上げろ…,というのは少し無茶な気がします。」

 あまりに率直な感想に少々驚きながらも,問題の本質を深く考える好機となりました。その質問の中に,いつしか「一人称で感じ・考え・行動する」習慣から遠のいてしまった昨今の大学生の,いや多くの日本人の姿が見え隠れすると思ったからです。

講義の冒頭中で公開質問と感謝のことば

 この率直な質問に答えることは,大変重要ですから,あえて講義ブログのコメントで回答することは避けました。次の講義の冒頭で,質問をしてくれた学生に登壇してもらい,まず質問を読み上げてもらいました。


 一つ,質問したいことがあって,コメントさせていただきます。

 実は,アフィリエイトなどの仕組みがよく分からず,ブログをどうやって立ち上げればいいか,売りたい商品をどうやってセレクトしたらいいか分かりません。

 商品を売る…といってもそれをどうやってやるのかの詳しい説明がされていないのに,とりあえずブログを立ち上げろ…というのは少し無茶な気がします。

 私の知識が足りなすぎるのかな?とも思ったのですが,周りの友人に聞いても,商品の売り方がよく分からないと言っていたので,やっぱりその点に関して,もっと詳しく説明してほしいです。

 あと,昨年の先輩方のブログを見たいのですが,どこから飛べばいいですか?

 質問ばかりですいません。お願いします。


 気の短い先生ならキレてしまうかもしれませんし,私もアドレナリンが分泌されなかったと言えばウソになります。しかし,こうした質問を講義ブログに書き込む勇気を讃え,そして他の多くの受講生も感じていたことを代弁してくれた功績に,まず感謝の言葉を添えました。

 その上で,この問題に回答する前に,ちょっとした工夫をしたのです。

学生の1つの質問に対して,10の質問で対話する

 それは,反対に10の質問をお返ししながら,「どうすれば,今回の問題を解決できたか?」を一緒に考えることでした。ただ答えを教えてしまっては,学生たちのためにならないと思ったのです。

 そして,この10の質問に対して,ほぼ予想通りの答えが返ってきました。


問1 アフィリエイトというキーワードでGoogle検索をしましたか?
答1 いいえ

問2 書店でアフィリエイトやブログの本を探しましたか?
答2 いいえ

問3 CANPANブログのヘルプを見たり,電話で尋ねたりしましたか?
答3 いいえ

問4 売りたい商品=ほれ込んだ商品はありませんか?
答4 ? どんなものがネットで売られているかわかりません

問5 ビデオ「てんびんの詩」の少年は売り方を習っていましたか?
答5 いいえ

問6 一番最初に「新しい商売」を始めた起業家に道標となるものは?
答6 .....ありません

問7 私の知識が足りないと思った時,誰に聞くと良いですか?
答7 .....その道のプロ

問8 友人がわからないと言った時,起業家ならどう思う?
答8 チャンス!

問9 昨年の先輩方のブログはどうやって探しましたか?
答9 講義ブログで

問10 私がここで言いたいことを一言で表わすと何でしょう?
答10 自分で考えて行動する


 Yes/Noで答えるクローズドな質問が多いので,コーチングとまではいきません。しかし,後半,気づきがあったようで,最後に,見事に問10の答えにたどり着きました。少し,ほっといたしました。

 実は,これらの問答は,自らの「問題解決能力」を高めて「ブログ自在人」になるために欠かせない「10の人間力」を示しています。この問答をきっかけに,「10の人間力」について,1つずつ学生たちに説明をしていきました。

■1 ネット検索力:自力でネットを探して体得する力

 もし「アフィリエイトとは」というキーワードで検索していたら,参考になるサイトが山ほど見つかったはずです。アフィリエイト・サービス提供会社のサイト,有名アフィリエイターのサイト,それからウィキペディア。それらを読むだけで,かなりの基礎知識を蓄えることができたでしょう。

 何か知らない言葉が出てきたら,まずはネットで直ちに検索するのが「新しい常識」です。そして,数多くの検索結果から,正確かつ効率的に学べるサイトを選りすぐる能力が大切なのです。

■2 読書力:良い参考書を自分で探して体得する力

 明治大学の東京・駿河台キャンパスは,大型書店や古書店に囲まれています。おそらく「良い参考書を探しやすい環境」としては,世界有数でしょう。アマゾンなどのネット書店は便利で,私も良く活用しますが,大型書店や専門書店のジャンル別書棚の便利さには敵(かな)いません。もし三省堂か書泉の「ブログ」コーナーに行っていたら,参考書の多さに圧倒されたでしょう。目次や前書きをパラパラめくるだけでも多くのことが分かったはずです。

 その中から10冊とは言わなくとも数冊を熟読し,そこに書いていることを1つずつ実践し,さらに何度も読み返してほしいのです。そうすれば,「その道を歩む人たちの平均」以上,うまくいけば上位2割に入れる専門知識さえ身につけることができるでしょう。

■3 電話力:ネットで基本情報を得てから電話で解決する能力

 既に自力でブログを開設した受講生は,講義で利用しているCANPANブログのヘルプを読み込んでできたそうです。しかしながら,せっかくのコールセンターがあるのに,その疑問点や高度な活用方法について尋ねた学生はいませんでした。もったいない話です。

 多くのサイトではヘルプやよくある質問を読み込むことで,大抵の問題は解決できますから,よく調べずに「いきなり電話をする」のは考えものです。しかし一方では,メール時代の弊害なのか,電話一本かければ解決するようなことでさえ躊躇(ちゅうちょ)する人も多いようです。より深い問答や,心の通うコミュニケーションを手っ取り早く行うには,臆せず電話や面談を活用したいものです。

■4 商品への愛:商品にほれ込み,誰にも負けぬ愛情を注ぐ力

 その道を究めつつ,ブログで量・質共に圧倒的な情報発信を続けて,「この商品については,この人に聞け!」と言われる「ブログ自在人」になるためには,販売する「商品への愛情」が欠かせません。

 本来なら,講義でも使った近江商人のビデオ「てんびんの詩」よろしく,特別な愛着もわかなければ,独自の効能やウンチクがあるわけでもない「なべぶた」の行商をしてもらい,「どんな商品でも愛せる心」を体得していただきたいところです。しかし,それではあまりにハードルが高すぎるので「ほれ込んだ商品をブログで紹介」してもらうことにしています。

 ところが,実のところ「ほれ込んだ商品」が無いか見つけられない学生が多いことに驚き通しです。これも,モノや情報に恵まれすぎているからこその現象でしょうか?そこで,自社商品を熱く語る商人が揃っている「経営者会報ブロガー」とブログで対話したり,オフ会に参加して,「商品への愛」と「あきんどの誇り」を直接,体感してもらっています。

■5 試行錯誤力:10回や20回の失敗にへこたれない

 新しい挑戦だからこそ,失敗して当たり前です。むしろ,この講義では失敗をしては試行錯誤をする,強(したた)かな心を身に付けて欲しいのです。

 近江商人のビデオ「てんびんの詩」に登場する少年は,売り方を一切教わらずに行商に出かけることになりました。そして,ひどい商売を繰り返して,辛い体験を重ねることになります。その数カ月にわたる数えきれないほどの失敗を通じて,学ぶべきことを体得するのです。

 しかし,昨年の講義でも,目先の失敗が嫌で最初の一歩が踏み出せなかったり,たった一度の失敗でへこたれるケースが多く見られました。ですから,今年の講義では,無難に上手にまとめた学生よりも,失敗を重ね試行錯誤を繰り返した学生を評価すると宣言しました。

■6 空想独創力:前例がないものやことを考える力

 リスクが知れている「学生時代の小さな起業体験」だからこそ,教科書にも無いような,私も想定しないような,新しい展開を考えてほしいと願っています。

 しかし,受験勉強やマニュアル完備のバイトに慣れ,レポートもネットで調べた情報をコピー&ペーストしているような学生は,独創的なことを生み出す力が乏しいようです。トヨタのプリウスや,クロネコヤマトの宅急便といった独創的な新商品が世に出る時の暗中模索に比べれば,学生が試すどんなブログ上の挑戦もリスクは知れています。だからこそ,空想どころかドン・キホーテなみの夢想や妄想でも良いので,思い切った挑戦をして欲しいのです

 プリウスや宅急便の例にもある通り,独創的な開発の種は,自分の中の強み弱みに隠されています。何人かの生徒は,自分の心中や家業などを見つめ直すことで,新しい試みをしてくれそうです。

■7 弟子力:その道の師匠たちに可愛がられる力

 何か分からないことや困ったことがある時に安心して尋ねられ,時に厳しく時にあたたかく導いてくれる師を探すことは,10代20代の大切な課題です。だからこそ,仕事,趣味問わず,自身の人生にとって大切な10のテーマを選んで,その道の師を探すことを学生に勧めたいのです。

 しかし,頼れる師の周りには常にファンや弟子たちが集まり,多忙を極めて時間はいくらあっても足らないはずです。「弟子間競争」が激しい中でも可愛いがっていただくためには,いわば「弟子力」が必要です。師の教えに素直にそして忍耐強く学びながらも,独立心旺盛で挑戦し続ける弟子になる必要があるでしょう。

 とはいえ,特別な能力が必要なわけでもありません。私の場合なら,拙著や拙コラムを熟読してくれて講義の前後に声をかけてくれるだけでも「違う」はずですが,意外に「そんな当たり前のことをする生徒」さえいないものなのです。

■8 孤立力:誰も分からない/やらないからこそ好機と心得る

 前例のない独創的な仕事を進めて,オンリーワンになるということは,誰が何と言おうと「わが道を貫く決意」が必要だということです。即ち,周囲から浮かないため,いじめられないために,「なるべく人と同じことをしてきた」多くの人にとって,「孤立する苦悩」を通り抜けなければならないことを意味します。

 ブログひとつ開設する時でも,誰も挑戦していないテーマとキーワードで,アクセスもほとんどないところからのスタートは孤独です。だからこそ,熱く語り,永く続ければ,検索エンジンで独自の地位を築けるのです。そんな,開拓者の孤独と喜びの一端を体感してもらいたいと思います。

■9 熟読力:目の前のヒントを深く読み解く

 求める先輩ブログへのリンクは,実は良く見たはずの「講義ブログのバックナンバー」の中にありました。この例が示す通り,答えが目の前に隠されていても気づかないことが多いものです。そして,目前の大きなヒントを見過ごして,どこか他所に答えを探し求めたり,安易に誰かに尋ねがちです。

 目の前の日常に非日常が潜み,当たり前の仕事を続けることが独創的な仕事につながることも少なくありません。「自分らしさ」「自分らしい生き方」と言葉では繰り返すなら,今参加している講義の「自分ブログ」で徹底的に自分と向かい合ってほしいものです。

■10 行動力:自分が動くことでしか問題は解決しない

 どんなにネットで情報収集をしても,素晴らしい企画を立てられても,結局のところ「行動力」が無ければ何も始まりません。独創的な起業家を横目に,後になって「自分も考えていた」とうそぶいても,誰も相手にしてくれないのです。逆に,準備が整う前から行動して,現場で有用な情報を集めることで,優れた企画のアイデアとパートナーを得ることも多いでしょう。

 昨年の講義では,最初に私が教えすぎて,逆に後半の実技で行動停滞を招いてしまいました。今年は,むしろ最初に行動してもらい,困った事態にどんどん遭遇することで,自分で行動しながら問題解決をしてほしいのです。

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 今回は,運良く勇気ある学生が素晴らしい質問をしてくれました。そこで,講義開始早々のブログ開設期に,伝えたい「10の心得」を発信することができました。しかし,このメッセージを改めて読み返しますと,学生のみならず,社会人にも通じる内容だと感じましたが,いかがでしょうか?

 私自身も今日から自分に言い聞かせ,「見るまえに跳ぶ」心の若さを失わないようにしようと決意を新たにしたのです。