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 前回は,武豊町長 籾山芳輝さんのブログを例に,首長ブログの効用を考えました。

 しかし,同席された,もうお一人の町長は,首長ブログを始められない理由について,率直にお話をしてくださいました。その漠たる不安の中身は,大企業の経営者がブログに二の足を踏んでいる要因と大いに重なるようです。

 他の行政担当者からお聞きしたものも含めて,首長ブログを始められない代表的な理由を挙げますと,

  1. 揚げ足を取られるのではないか
  2. 毎日,書き続けられないのではないか
  3. 意見のバランスが取れないのではないか
  4. 役所や後援会から反対されるのではないか
  5. ブログ対応に忙殺されるのではないか

ということになるでしょう。

 そこで,今回は,首長ブログを始めるに際して「よくある5つの不安」を,どうすれば解消できるか考えてみます。

不安1:揚げ足を取られるのではないか

 たしかに国会などを見ておりますと,多くの政治家が「たった一言の失言」で大いにマスメディアを騒がせ,議会を空転させています。首長がブログを始めることで,ちょっとした「記事中の一言」が物議をかもす可能性は無いとは言えないでしょう。また,それが「ブログ炎上」という事態を引き起こさないとも限りません。

 しかし裏返してみれば,「揚げ足を取りたい」がために野党やライバル候補からマスメディアまで,眼を皿のようにして首長ブログを「毎日熟読してくれる」ということでもあるのです。競合相手や報道関係者にまで,自分たちのメッセージを伝えられるのですから,こんなに嬉しいことはありません。

 さらにありがたいことに,「揚げ足を取られた」内容が,先方の誤解や早とちりによるものであれば,今度は首長ブログという「自分のメディア」で,すぐさま冷静かつ客観的に「内容を正して伝え直す」ことができるのです。議会や記者会見で詰問される「土砂降りの状況下」でうまく切り返すのは難しくとも,一人静かにじっくりブログで真実を伝えることはできるでしょう。

 まかり間違って,うかつな失言で炎上したとしても,それこそ「全国区で無料広告ができた」と考えてはいかがでしょう。たった一言の失言があったにせよ,過去の膨大な記事も含むブログ全体で,これまでの「誠実な営み」や「首長の心意気」を伝えることができるかもしれません。むしろ,騒ぎに乗じて「面白半分に来た読者」の何割かを「生涯のファン」にできるかもしれないのです。

 また,既にブログ発信を通じて愛読者が増えて,心同じくする縁者が一定数以上いるとしたら,「揚げ足取り=底の浅い反論や攻撃」から守ってくれるはずです。コメントやトラックバックを通じて,首長を援護してくれる可能性が高いのです。ネット上で援護してくれる「勇気ある同志」は少なくとも,より数の多い「無言の支援者」は,きっと心ひそかに支援してくれるでしょう。さらに,静観していた人たちも,その後の誠意ある首長の対応を見て「どちらにつくか」を決めるでしょう。

 むしろ,「いわれなき反論」が盛り上がれば盛り上がるほど,愛読者が増えて,縁者の結束が強化されるでしょう。

不安2:毎日,書き続けられないのではないか

 これはブログを始める人なら,誰もが抱く不安でしょう。

 籾山町長の場合は,もともと日記をつける習慣をお持ちだったそうで,特に無理をすることもなくブログを続けられているそうです。しかし,ブログは日記よりも続きますので心配にはおよびません。現に,日記が続いた試しのない私でさえ,ブログなら長続きしています。

 ブログだと長続きする一因は,誰かが見ている気配がするからでしょう。アクセスカウンターが上がったり,誰かが訪れた足跡が残ったりすれば,嬉しいものです。いずれは,ブログ記事に対してコメント,トラックバック,応援メールも寄せられるようになるでしょう。

  もともと,首長に立候補して選ばれるような人物なら,「多くの人から注目される快感」も「自ら熱くメッセージを伝える喜び」も,よくご存知のはずです。しかし,責任ある公職についてからは,いつからか「奥の院」で内輪だけに情報発信をするか,「公的な会合」で四方八方に気配りをすることが主眼になってしまっているかもしれません。

 しかしながら,ブログを使えば,その根源的な欲求を満たす場=自分自身のメディアを「インターネット上に簡単に作る」ことができるのです。地元を自分の力で良くしたい,そのための熱意と方策を伝えたいという「内なる声」が大きい人ならば,首長ブログを続けるのもたやすいはずです。

 また,毎日多様な公用に追われ,多くの人と会う機会の多い首長の日常は,ブログネタの宝庫とも言えます。そのスケジュールを並べて,その時々の心に残った言葉や印象を付け加えるだけでも,立派なブログになるはすです。「首長の日常」は「市民の非日常」なのです。

 いずれにせよ,首長になるだけのヴィジョン・行動力・自制心をお持ちの方なら,ブログを毎日書くことは,いつしか当たり前の習慣になってしまうでしょう。そして,3カ月も続ければ,「なぜ始める前にあれほど不安を抱いたのか」不思議にさえ思う日が来るはずです。

不安3:意見のバランスが取れないのではないか

 首長の周囲は,「主義主張も利害も異なる人たち」が取り巻いています。「ある立場の人」をブログで好意的に紹介しただけで,「逆の立場の人」が怒りそうだと危惧されるかもしれません。また,「特定の業者」を紹介したことで「癒着しているのではないか」と勘ぐられるのも不本意です。

 たしかに,その時その時のブログ記事を「ひとつだけ読む」と,誰かに肩入れしているように見えなくもありません。しかし,ブログは過去の発言もさかのぼって一覧できるところがポイントです。ですから,昨日「ある意見の人」をご紹介したら,今日は「反対の意見を持つ人」を,そして明日は「また違った意見を持つ人」を紹介すれば良いでしょう。読者は,それらを同時に比較しながら読むことができます。

 ちょっとした気配りで「それぞれの立場の人に理解」を示していることを,ブログで表現できるようになります。さらにブログに慣れてくれば,あえて「自分の意見」を「自分の言葉」として話さずに,ブログに登場する「各界の達人の言葉」を通じて伝えることさえできるようになるでしょう。

 それから,選挙時のマニフェストでも示した自らの政治理念・行政ヴィジョン・公約した政策について,繰り返しブログ記事で紹介する努力も必要でしょう。

 お薦めは,ブログのカテゴリーの筆頭に「私の政治理念・公約」という項目を作ることです。ブログを始めた当初の数回は,そのカテゴリーに「ご自身の理念や公約」を書き連ねておくと良いでしょう。そうすれば,日々のブログが様々な話題に触れたとしても,心ある人は「私の政治理念・公約」カテゴリーに保管された「大原則の記事」を読んで,首長にとっての「扇の要」が何であるかを確認することができるでしょう。

 もし何か反論があった時にも,「○月○日の記事で,たしかに○○についてご紹介しましたが,私の信念につきましては「私の政治理念・公約」の記事群をご高覧ください」と誘導できるのです。

 いずれにせよ,首長ブログの「真の読者」は,毎日読んでくださる長期愛読者です。首長が,毎日「多様な意見を聞き入れ,血肉にしている姿」を目の当たりにすれば,「真の読者」には,首長が特定の意見に偏るどころか,度量が大きくなっていることを感じていただけるでしょう。

 その場その場の発言に左右される「日和見読者」よりも,首長の信念に共鳴しながら,共に考え成長する「真の読者」に対して,繰り返し訴えかけたいものです。

不安4:役所や後援会から反対されるのではないか

 当然ながら,首長ブログは「役所内のスタッフ」から反対されることも予想されます。

 その理由はいくつか考えられます。まず,「市民の生の声」がダイレクトに首長に届く上,「首長からの情報」も直接市民に向けて発信されることで,「中抜きにされること」を恐れる人たちがいるでしょう。ひょっとしたら「職務怠慢」が発覚するばかりか,「自らの存在意義」さえ問われるかもしれないのです。

 また,首長のブログ発信それ自体には反対しなくとも,その結果「寝た子を起こす」ことになって「新たな仕事」「面倒な仕事」が増えるのではないかと恐れる人もいそうです。

 こうした不安に対する方策はシンプルです。行政の各部門長を中心に「部門ブログ」も立ち上げて,「首長ブログ」と連携すれば良いのです。

 例えば,首長ブログで「総論」をお伝えした後で,「当件の詳しい内容につきましては,○○部のブログで近日お伝えします」としめるのです。そして,当該部門の責任者にブログで公開返答するよう「口頭で指示」します。そして部門ブログで回答したら,「首長ブログにトラックバック」するように徹底すれば良いのです。

 これは,市民からの質問にお答えする時にも応用できるでしょう。まずは首長が,質問に対してお礼かお詫びをした後で,当該部署のブログでお答えするのです。いわば,ネット版の「すぐやる課」ならぬ「すぐ伝える課」「すぐ答える課」でありましょう。これなら「中抜き」ではありません。むしろ「部門の仕事」を「首長自身がPR」していることになります。また,首長と担当部門で簡単に連携できる上,一気に「公開回答」することで「面倒な手間」を省くことができるでしょう。

 また,首長自身の「後援会」や「支持団体」から,ハイリスクハイリターンの「首長ブログ」はやめてほしいと懇願されるかもしれません。これは,大企業のトップがブログをはじめようとすると,「広報」からストップがかかる理由とも似ています。

 しかし,何かやましいことが山積しているならともかく,「2割前向き,6割普通,2割後ろ向き」の内容があるような「当たり前のリーダーシップ環境」であれば,ブログで発信した方が「行政」上も「選挙公報」上も有利でしょう。過去の愛すべき政治家を思い起こしても,聖人君子のような人物よりも,時に失言やミスも犯すような,欠点が「見える化」している「人間臭い人物」の方が人気があるはずです。ブログを使って「親しみやすい本来の姿」が見えた方が,支持を得やすいはずです。

 揚げ足取りのところでもご説明したように,問題は「失言」や「攻撃」にあった時の「すばやい対応」「誠意ある対応」です。「今,どのような状態か」よりも,危機的状態を「どう切り抜けたか」「どう変えようとしているか」が大切で,将来に向けた「強い意思のベクトル」がブログで伝わることが重要なのです。

 ブログがあろうがなかろうが,危機的な状況はいつあるとも限りません。その時,ただ一方的に報道されたり,言いたい放題の「ネットのウワサ」に身を委ねて良いのでしょうか?そんな時のためにも「首長自身がリアルタイムで語る等身大のメディア」があった方が良いはずです。そして,「早く始める」ほど「長く続く」ほど,読者と支持者を増やすのに役立ち,いざという時の備えになるでしょう。

不安5:ブログ対応に忙殺されるのではないか

 ブログを書くのも大変そうだが,「コメントやトラックバックが増えたらもっと大変そうだ」と思う首長も多いでしょう。

 これは,ブログやコメント対応を,「新たに増えた仕事」だと考えた時に起こる誤りです。ブログは「首長業効率化ツール」でもあるのです。むしろ「ブログに30分だけ費やす」ことで,これまでの仕事の数時間分,時には数日分の効果を挙げると考えればよいでしょう。

 なにしろ,一人に親身に語りかける手間で,それを数百数千,いずれは数万数十万の市民が読んでくれる可能性が高いのです。職種こそ異なれ,営業の勘と能力に優れたトップセールスがブログやメールを活用することで,これまでの営業活動の効率を何十倍にもしている事例を見習えば良いでしょう。

 よく考えてみれば,市民と対話して良い意見を吸収しつつ,政策立案に役立てることや,その政策の意義をやさしく根気良く伝えていくことは「首長の本分」とも言えます。しかし,市民との対話は,口で言うのは簡単でも実際には難しいでしょう。しかし「首長ブログ」を活用すれば,時間や場所を問わず効率的かつ効果的に実現できるのです。

 首長ブログにアクセスできる方,ICT(情報通信技術)を普通に活用している方は,現況ではまだ少ないかもしれません。しかし,当面,ブログアクセスは増えこそすれ減ることはないでしょう。そして,現在ブログを活用している方の多くは,心ある各部門の新しいリーダーやネットコミの発生源である可能性が高いのです。こんなチャンスは,今しかありません。

 先日,わが地元,東京商工会議所墨田支部の役員会で,墨田区長の山崎昇さんを囲む会がありました。その時,オフィスビルやマンションが続々と建設されて「新区民」が増えたので,「新たな対話」を始めたいと熱弁されていました。町会や商工会といった古いコミュニティとつながっていない「新区民」の人たちにこそ,首長ブログは有効です。光回線が引かれた高層マンションに「朝と夜しかいないホワイトカラーの人たち」には,首長ブログこそ「私の区役所」「私の町内会」に成り得るからです。

 ブログへのコメント対応も,慣れれば時間はかからないはずです。秘書室のスタッフにブログに教えて,一緒に対応しても良いでしょう。たくさんコメントやトラックバックがついた暁には,翌日のブログ記事の中で,まとめてその返信をするのもお勧めです。いずれ,動画ブログも一般化しますから,毎日5分のあいさつにまとめても良いのです。

 さらに,いずれは首長の発案で,役所の各部門ブログと連携して「オーケストラのように協調しながら情報発信」できるようになるでしょう。そうなれば,ますます区長の応対はシンプルで簡単になります。例えば,各部門が発信した情報のエッセンスをコピー&ペーストしたり,リンクで誘導したりすることで,簡便にかつ深い情報提供ができるようになるでしょう。問い合わせがあっても,まるで区役所の受付に座っているように,各ブログに誘導することもできるでしょう。

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 このように,首長ブログを始める際の「5つの不安」も,しかるべき心積もりと準備の後に始めれば,想像していたよりは簡単に解消できるはずです。そして,想像を超える大きな効果を上げることができるでしょう。

 いずれ,首長がブログを書くことは当たり前…,否,「首長の必修科目」であると言われる日が来るかもしれません。そうなる前に,一刻も早くブログ始めれば,それだけ,社会的にもインパクトが大きく,マスメディアや市民の注目も集めやすいでしょう。ぜひ,今日からでも,首長ブログにチャレンジしていただければ幸いです。

 次回は,既にブログを始めた先駆者たる首長ブロガーにエールを送り,今後のビジョンをお示しするために「5つの展開案」をご提案したいと思います。