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 「ほーんと,疲れるんだよね!」

 先日,某ソフトウェア会社でSEをやっている友人のA美とB子に久しぶりに会いました。これはそのときの,A美の第一声です。「どうしたの?」と私が聞くと,A美は「新人教育担当になったんだ」といいます。

 A美の会社では,5人の教育係が総勢20人の新入社員の面倒をみなければならず,精神的にも肉体的にもへとへとに疲れてしまっているというのです。別の会社で働くB子もOJTで新人が隣の席に座っているため,「分かる~。1人でも大変だもんね。私だったら複数なんてムリ」と,相づちを打ちます。

 過去に新人教育を担当した経験のある私は,「そんなに大変だったっけ?」と聞き返しました。するとA美,B子は口を揃えて,「今の子は本当,スゴイんだから!」と年配のおじさん口調(笑)で言い返してくるのです。

 そのあといろいろ話を聞いているうちに,だんだんと状況が分かってきました。「なるほどな~。時代によって変わるもんだな~」。今回は,私がびっくりしたイマドキの新人事情について紹介したいと思います。

課題のレポートはネットのコピペ!?

 「IT用語やコンピュータの基礎に関わる知識について,調べて書いてくるようにという課題を出したら,4分の1くらいがウィキペディア(Wikiで作られたフリーの百科事典プロジェクト)のコピー&ペースト(コピペ)なの。信じられる? ありえないよね!」とA美。

 そのほかにも,“てにをは”を変えてはいるものの,明らかに技術サイトからコピペしたものがあったといいます。A美はそんなコピペによる文章を提出した新人を集めて,「なんでこんなことしたの」と問い質しました。

 すると彼らは「え? 何か不都合がありましたか。高校のときも大学のときも,レポートはこんな方法で提出しましたけど,何も文句など言われませんでしたよ」と,悪びれない様子。彼らは皆,「何で集められたのかさっぱりわからない」という表情をしていたそうです。

 A美はあきれながらも,次のように諭したといいます。

 「コピペして文章を提出しても,自分が損するだけだということがなんで分からないかな~。コピペは確かに楽だけど,その技術について考えたり,理解したりしなくても文章になるよね。一方,ある技術について文章を書くためには,その技術について自分なりに考えて理解しなければできないことなんだよね。考えようとしない人は,この仕事はできないかもしれないよ。システム設計という仕事はお客様の要件を聞いて,それを最もよい形で実現する方法を考えることなんだから」

 そしてコピペした全員に,再度書き直して提出するように言ったそうです。

 確かに,今は昔と違って家にPCとインターネットがあるのが当たり前の環境になりました。重い辞書や本を開かなくても,クリック1つで課題やレポートの参考になる答えが見つかります。さらに見つかった文章や画像は,簡単なマウス操作でコピーできてしまいます。子供の頃からそんな環境に慣れていると,数十年後には,だんだん考えることをしない人たちが増えてくるのかも……なんて想像してしまいました。

 もちろん,インターネットから情報を入手したり,知恵を拝借したりすることは,とても大切なことです。でも,それは自分が理解を深めたり知識の幅を広げたりするためにこそ,有効だと思うのです。

人の話を聞きながらメモを取るのが下手

 「教えてもらったこと,指示されたことはメモを取ろう」
 「先輩たちは忙しいのだから,何度も同じ質問を繰り返さないようにしよう」

 皆さんもこのようなことを言われた経験があると思います。私は新人研修で教わりました。実際に先輩にも「私は同じことは二度と教えないからね」と宣言され,ある日,メモし忘れたことを聞きに行ったら,なかなか教えてくれなかったという苦い思い出もあります。

 メモの取り方にも上手,下手があるようです。B子がOJTを担当している新人のOくんは,メモを取ることがものすごく下手なんだそうです。ちゃんとノートにメモするものの,それがなんと殴り書き。断片的な文章や単語が乱雑に書かれており,まるで暗号のようになっているのです。案の定,後になって本人がノートを見ても,何を意味しているか,何が大切なのかがまったく分からず,結局,また同じ質問をしてきたそうです。

 B子はなんでそんなメモの取り方になるのだろうと思い,説明しているときにOくんの様子をじっと観察していました。すると,Oくんはノートを見ずにメモ取りをしているではありませんか!それをOくんに注意してはみたものの,なかなかうまくいかないようです。

 「メモに集中すると,下ばっかり向いてしまって,本当に分かったのかどうか,表情が分からない。それを指摘すると,私の目をきちんと見てうなずきながら聞くんだけど,ノートを見ずにメモするので暗号文のようになってしまう。なんでどっちか一つの事しかできないんだろう??」

 そういえば以前,私が新入社員教育を担当した中にも,話している間中,ずっとメモを取っている人がいました。気になって横からちらりとのぞいてみると,なんと会話全部をビッシリ書き込んでいました。

 「えっ,そこまでメモる必要はないじゃん!」と思うような端々の事象まで細かく書いてあり,「これはある意味,特技かも!」と思うほどでした。でも,あるとき先輩の教育担当者が彼の行為を見て,「メモを取るのも大事だけど,ちゃんと話者の顔を見て話を聞かないと失礼だろう」と,注意していました。コミュニケーションとメモ取り技術。難しいですけどバランス良く身に付けたいものです。

やる気は買うけど,飲み会での起業宣言はNG?

 新人は怖いもの知らず──。私も新入社員の頃は「将来はコンサルタントになります!」とあちこちで吹いていたものです(笑)。それはいつの時代も変わらないようです。

 「すごくやる気満々の新人がいたんだよ。飲み込みも早いし,結構可愛がっていたの,ショックなことがあったんだ」とA美。数週間にも及ぶ研修が一段落したころ,教育担当と新人たちが飲みにいく機会があったそうです。飲み屋では「エンジニアとは」「開発の裏話」などの話題で盛り上がっていたのですが,突然,ある新人が次のような衝撃の発言をしたというのです。

 「実は僕,起業したいんです。一応3年後を予定しているので,それまでにすべきことってなんでしょうか?」

 開発に対する熱意もあり,大きな夢があることも分かります。でもA美を含め教育担当者がその飲み会を実施した裏側には,「戦力となる人材に育ってもらうためにも,普段,思っていても言えないことや聞けないことをざっくばらんに言ってもらおう」と思ったからなのです。「表向きは起業を応援するフリはしたけど。それ以降,しらけちゃって教える気がしないんだよね」とA美はしょんぼり。

 そりゃそうですよね。3年後に本当に独立できるかどうかは分かりませんが,「今の会社は起業のための踏み台です」と宣言されたわけですから。自分の大切な時間を割いて教える気が失せてしまうのもわかります。せっかく先輩達にも可愛がられていたのに,もったいない話です。

 私もそうでしたが,新人時代は根拠もなく「自分達はいろんなことができる,何でもやれるんだ」と思うものです。また実際に課題を与えられても,なんとか乗り越え,やり遂げられるのです。しかし,そうした成功の陰には,必ず先輩たちのフォローや支えがあるんですよね。数年経って,それに気付くのです。

 今回はちょっと驚きの新人たちを紹介しましたが,彼らが成長して教育担当となったとき,どんな風に新入社員を育てていくのでしょうか。なんだか楽しみな気がします。