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 前回までの女性コンサルタント,Kさんのパン屋さんでの話は人気があったようです。今回も引き続き,Kさんに絡んだお茶屋さんの話です。春日部で3割のシェアがある老舗のお茶屋さんです。私からみたら神様のようなKさんもこのお茶屋さんには感心して,以前からいろいろと話してくれていました。マスマーケットでの一人勝ちシェアは25%といわれています。このお茶屋さんのように30%を押さえているのは脅威的なんです。

見た目は100%アナログだけど深い魅力が根底に

 口コミの基本3原則ってあるそうです。「1.体験」「2.ストーリー」「3.単純化」だそうです。この原則はマーケテングでもブランディングでも同じです。このお茶屋さんは1と2です。前回のパン屋さんは,さしずめ2と3でしょうか。

 ある日,Kさん主催のWeb集客セミナーで,私の隣に無精ひげの男が座りました。名刺交換したら,Web集客セミナーにもかかわらずメールアドレスもURLも何もない名刺です。100%アナログのような。セミナーで彼が発言する機会がありました。「私はまだまだリアルに興味があり,Webは考えていません」。名刺をシッカリ見たら,Kさんがいろいろと話していた春日部のお茶屋さんです。「この人があの有名なお茶屋さん!」。私は思わず大声を出してしまいました。Kさんはニコニコ笑って頷(うなず)いています。

 大声を出されたお茶屋さん(専務)は,目を白黒。自分が一部の人間の間で超有名人になってるのは,全く知りませんから。彼とはセミナーの2次会にも一緒に行ったんですが,魅力的な人です。冗談も言うし,一見普通です。でも仕事に対するセンスや哲学観は深く,芯があります。人間としての深い魅力が根底にあり,それが春日部とお茶と自分との黄金のトライアングルを形作っているようです。

 2次会では,そのカリスマお茶屋さんにWeb店舗の素晴らしさを生意気に説いている若いニーチャンがいます。ハラハラしました。でも2次会の後で,「生意気な者がいて申し訳ありません」と謝ったら,何と逆なんです。「一生懸命話をされ,とても嬉しかった。リアル店舗にこだわりすぎていたのかもしれない」と素直におっしゃいました。“向う見ずの勇気”は間違いなく,現状を打破する革命や革新の基本ですが,お茶屋さんは一生懸命に話す若いニーチャンの気持ちを察し,本当に感謝していたのです。

 このお茶屋さん,「売らない」キャンペーンをやるそうです。無料の茶摘,工場見学,お茶会席料理。買ってもらうより知ってもらう。今までの苦労話を社長のオヤジさんがコンコンとするそうです。何故,春日部で頑張り貢献したいのかを…。毎月第4金曜日は,月1回の2割引きデーです。宣伝しないけど,長蛇の列だそうです。3店舗ありますが,2割引きデーの1日で何と1000万円も売り上げます。

 ここまで聞いたら,お茶屋さんをもっと知りたくなりますね。そこで,「カリスマお茶屋さんを是非調査・探求したい」とKさんにお願いしました。Kさんが隊長で,隊員は勉強会仲間の社長さん2人と私との4人。イザ春日部探検隊です。

ブランドを超える何かに大勢のファンが集まる

 2割引きデーの第4金曜日午前9時半に春日部駅集合です。一番最初に来たのが,横須賀の花屋の社長さん。午前6時前に家を出たと言ってましたから,ワクワク遠足気分です。最初,駅近くの本店に行きました。お客さんはもう行列を作っています。

 興味津々のトナチャンは,何人ものお客さんにインタビューしました。皆さん同じことをおっしゃいます。「おいしいから」と。客の売上単価は1万円以上。月1回の安売り日に1カ月分を購入するのでしょう。自転車のオバサンは4つの大きな袋をもってフラフラ。「40年前からこの店に決めている」「20年前から(以下同)」。

 「もっとおいしいお茶がもっと安い値段で出したらどうします?」と聞いたら,「そんなことはありえない」が8割,「乗り換えるかな?」が1人,残りが「ウウン??…」。「問題は何も無いのですか?」と聞いたら,「あるある。その時は先を争って投書する。投書したら即改善してくれる」。

 店の雰囲気は明るく,とても良い感じ。混んではいますが,呈茶サービスもあります。お客さんに聞いても,皆さんファンだから聞くだけムダです。思い切って通りに出て,お茶屋さんとは全く関係ない通行人や自転車のおばさんをわざわざ止めて,聞いてしまいました。「知っているけど,私はスーパーで玄米茶」「春日部に住んでいないのでわかりません」がそれぞれ1人,後は全てそのお茶屋さんのファンでした。

 お茶は確かにおいしい。でも,飛び抜けているわけではないと思います。「おいしい」「何年も前から」「(自社運営の)お茶園もあるから」…,は自分への理由付けです。自分を納得させる理屈を言っているだけです。クレームも,地元春日部の大好きな店だから恥ずかしいことはさせられない,という家族意識・身内意識からです。決してクレーマではありません。ブランドを超える何かがあります。あえて語弊ある言い方をすれば“洗脳”されているような,宗教的な信念や春日部の誇りのようなプライドを感じます。でも,遠くから買いにくるお客さんも多いようです。

 ブランドの構築には夥(おびただ)しい時間がかかりますが,崩壊は一瞬です。単なる日々の努力では40年の継続は無理です。いったい,何があるんでしょう?