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 前回に続き,「ねんきんあんしんダイヤル」をCRMの切り口から批評する。6月16日付の日本経済新聞の5面にねんきんあんしんダイヤル関連の記事が載っていた。「電話相談を大幅増員」という見出しである。現在640ある電話相談のブース数を200増設する。最終的には1000ブース以上にすると伝えていた。企業の現場では「泥縄式」という言葉をしばしば使うが,こういう状況にこの言葉を適用するのだな,と思いながら読んでいた。

 記事には,次のように書かれていた。

 『全国に約300ある社会保険事務所から職員を上京させる。増員は500人規模になる見通し。』

 社保庁はNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを利用している。だとしたら,「どうして職員を上京させる必要があるのか」という疑問が浮かぶ。フリーダイヤルには「ネットワークACD」という機能が備わっている。フリーダイヤルの着信呼を全国の電話に転送する機能である。つまり,わざわざ職員を上京させる必要などない。現地で電話を受ければよいのだ。

 職員を上京させるには経費がかかる。上京する職員の旅費交通費,宿泊費,コンタクト・センターの設備費(賃料,事務備品,電話回線など)などだ。これらは税金で賄われることになる。

 ネットワークACD機能を利用して着信呼を現地の職員に転送させれば,これらの経費は不要になる。なぜ職員を上京させるのか。なぜネットワークACD機能を使わないのか。社保庁はこれらの理由を明示する必要があるだろう。

泥縄式きわまる社保庁の対応

 誰かがコンタクト・センターの基本的な知識やノウハウを社保庁の担当責任者に教える必要があるだろう。

 テレビのニュースなどが伝えるところでは,ねんきんあんしんダイヤルは応答率が3.6%だという。これを50%にするという。社保庁は「2回に1回はつながる」という表現を使っている。

 筆者は,この「2回に1回はつながる」状態は永遠に実現しないと考えている。今の電話受け付け要員の増員が少なすぎるというのが根拠だ。

 応答率は着信呼量と関係している。次のように考えればよい。1120台の電話機とは,要するに1120回線あることを示している。平均通話時間は既報のように30分とすると,1時間当たりの応答可能数は2240件である。24時間では,5万3760件だ。単純な数値を見るとかなりの件数にも見えるが,1日の呼量は30万とも40万とも伝えられているねんきんあんしんダイヤルの現状を考えると,どう考えても足りない。

 そもそも,着信呼の数は24時間ずっと一定ではないだろう。それに電話をかける側は,電話をかけて通話中だと一回切り,それほど間をおかずにリダイヤルする(これを「再呼」と呼ぶ)ことが知られている。つまり,応答できない状態はさらなる呼量の増加を呼び寄せ,さらに事態を悪くするのだ。だからこそ,ねんきんあんしんダイヤルは千単位ではなくて万単位のブース数を設けないと電話での対応は不可能である。

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