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 今回は、Skype社の創業者であるニクラス・セントローム氏とヤヌス・フリス氏が作ったソフトウエア「Joost」を紹介します。Joostとは、どんなソフトウエアなのでしょうか。

 SkypeとJoostはどちらもP2P(Point-to-Point)技術を使います。ところが、この二つは全く違うサービスです。どこが違うかというと、Skypeは著作権がない音声を扱うのに対して、Joostは著作権がある映像を扱うという点です。

 Joostが映像を扱うと知った時、私は大変驚きました。というのは、Skypeの創業者は過去に、著作権で懲りていると思っていたからです。Skypeの前に創業者二人は、「KAZAA」というソフトウエアを作っていました。KAZAAは、日本で普及した「Winny」のようなファイル交換ソフトです。

 Winnyと同様にKAZAAも、著作権があるコンテンツを違法にやり取りするソフトなのではないのかと疑いをかけられました。それに懲りた彼らは、次のプロダクトとしてSkypeを作りました。Skypeは電話なので、著作権の問題がありません。ところが、Joostは映像を扱います。彼らが著作権の問題を避けるためにSkypeを作ったという経緯を考えると、Joostが映像を扱うのは非常に不自然に思えました。しかし、Joostを詳しく見たところ、Joostには著作権の問題がほとんどないと気づきました。

ネット上に既存のテレビを乗せるのが目標?!

 映像を扱うサイトというと、「YouTube」が有名です。YouTubeは、誰でも動画をサイトに投稿できます。誰でも情報を発信できると、著作権を侵害した動画もアップロードされてしまう可能性があります。一方Joostは、YouTubeのように誰でも自由に動画をアップロードできるわけではありません。Joostで動画を配信できるのは、特定の人だけのようです。Joostは、情報の発信者が限られている既存のテレビというメディアそのものをインターネット上で実現しようとしているように見えます。

 この意味でJoostは、日本の「GyaO」に近いと言えるでしょう。GyaOは、USENが広告収入によって運営しているサイトで、著作権の処理が済んだ動画を配信しています。広告料で運営するというビジネスモデルは、Joostも同様です。

 GyaOとJoostの違いは、配信技術です。GyaOはサーバーから配信する形態のため、サーバーへの負荷が高くなります。ユーザーが増えると広告収入も増えますが、その分サーバーや回線などの設備投資にお金がかかります。一方Joostは、P2P技術で配信するので、ユーザーが増えてもサーバー負荷の問題は起きません。

写真●「Joost」の画面
写真●「Joost」の画面
Joostは、GyaOなどWebブラウザ内で再生するネットテレビと違ってフルスクリーンで再生する。
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 またJoostの見た目は、YouTubeやGyaOなどWebブラウザ内で再生するネットテレビと違います。Joostはフルスクリーンで再生します(写真)。既存のネットテレビとは違って、「Joostはテレビである」と主張しているように見えます。ただし、ネット上のテレビという側面も主張しています。例えば、同じテレビ番組を見ている人同士でチャットする機能「Widget」があります。Widgetには、Firefoxなどで使われているGeckoエンジンが使われているようです。DRM(デジタル著作権管理)でがちがちに固められていそうな映像配信で、オープンソースソフトが使われているのは珍しいと思います。

 Joostはまだベータ段階のソフトウエアです。Joostは今後どうなっていくのでしょうか? 方針を変えて、YouTubeのように誰でも情報発信者になれるサービスになるかもしれません。しかし私は、今のまま特定の人だけが発信者になるサービスとして発展するのではないかと思います。インターネットは、「誰でも情報発信者になれる」というのが最大のメリットです。しかし、このメリットを切り捨てでも既存のテレビがインターネットに乗るようにしたい、と割り切って考えているのではないでしょうか。