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この最高のドラマを、読みのがすべからず。

本書「スーパーコンピューターを20万円で創る」は、世界で最も有名な専用並列計算機GRAPEを創った四人の物語であると同時に、著者、伊藤智義の自叙伝でもある。

まず、「GRAPE創世記」として。この四人の長であった杉本の「手作りスーパーコンピュータへの挑戦」が絶版となった今、「中の人」によるものとしては、手軽に手に入る唯一の一般書である。GRAPEの黎明期の有様は、立花隆の「電脳進化論」でもある程度伺い知ることが出来るが、立花ほどの書き手であっても、それが「外の人」によるものであることは、本書を読めばすぐにわかる。例えば戎崎と著者の確執というのは、外の人には絶対に書けない。

GRAPEという稀に見る科学者の成功物語を、中の人自身が活写した時点で、本書の面白さはすでに約束されたようなものであるが、本書を「読まずにはいられない」ものにしているのは、被写体だけではなく「カメラ」の素晴らしいから。本書は「カメラマン」自身が被写体でもある本であるが、著者はあえて自身を「私」ではなく「伊藤」と三人称で書くことで、終止「カメラマン」、すなわち「外から見る」ことに徹しつつ、「中の人」でなければなしえない接写に成功している。これをうらやまぬノンフィクションライターが存在するだろうか。

あきれることに、「カメラマン」としても、この人はプロなのだ。伊藤はまぎれもない第一線の研究者でもあるが、ノンフィクション漫画「栄光なき天才たち」の原作者でもある。本書には、漫画原作者伊藤智義も登場する。その上あきれたことに、伊藤はもう一つの「夢」も実現してしまう。その夢がなんなのかというのは是非本書で確認していただきたいが、こういう人を果報者と呼ぶのだろう。

しかし、そんな伊藤は、他の三人と比べると明らかに「鈍才」である。いや、鈍いのではない。伊藤自身が掲げた四文字だと「鶏口牛後」ということになる。この人は、研究者、いやパイオニアとしては実に稀な「待つことを知る人」だ。進級しようと思えば出来たのにあえて留年したり、原作者としての高収入を研究のために捨てたりといった、「次のチャンスを待つために、手持ちの最強カードを切る」というのはなかなか出来ることではない。それを10代の時からやっている著者の「待ち力」には、もう脱帽するしかない。

出来れば高校二年あたりまでに読んでおきたい--おきたかった一冊。さもなくばこんなあわてんぼうな人生を送ることもなかったろうに。中学以上のお子さんがいるかたは、是非買って上げてください。最高のプレゼントとなることは保証します。

P. 182 - 183
本当のチームワークとは何か?
それはきっと馴れ合いでもなければ助け合いでもない。

その答えを、本書で是非確認してほしい。

Dan the Lucky One

編集部より:今回の記事は,小飼弾氏のブログ404 Blog Not Foundより編集し転載させていただきました。本連載に関するコメントおよびTrackbackは、こちらでも受け付けております。

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