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 RDD(ランダム・デジット・ダイアリング)という調査技術がある。これは前回取り上げたPDS(プレディクティブ・ダイアリング・システム)をプラットフォームにした電話調査法で,訪問調査の代替として開発された。このRDDの詳細は,筆者の知る限り次の文献にしか完璧で詳細な記述がない。

 「Survey Research Methodology, 1990-1999: An Annotated Bibliography (Bibliographies and Indexes in Law and Political Science)」,Graham Walden著,Praeger/Greenwood 刊

 このRDDは米国ではなぜか「ROD」と呼ばれている。PDSとRODの普及で,米国では電話調査は急激に拡大した。そして訪問調査がほとんど見られなくなるとともに,電話調査が利用される分野が急激に拡大した。USA Today誌などは,毎日,チョッとした話題の電話調査結果を毎日1面左下に掲載している。ほとんどがビジネス系の話題だ。

RDD(ランダム・デジット・ダイアリング)の相違

 PDSとRODにさらに「Computer Aided Telephone Interviewing (CATI)システム」を取り込むと,電話調査はほぼ完璧にシステム化できる。調査中にその結果がリアルタイムで集計できる。確か日経リサーチ社が数年前から米国製のこのCATIを使っているとローニン・ソフトウエア社(当時)のセールスから聞かされた。そのローニン・ソフトウエアは,Ronin Corporationと代わり調査専門企業となっている。CATIはその子会社の1by1社が扱っている。

 米国ではRODを使って完璧な無作為二段階地点抽出が可能だ。

 無作為二段階地点抽出というのは社会調査の基本だ。地点を無作為に乱数によって二段階で選び出す。サンプルを選ぶ場合の乱数の利用については,バイアスを避けるために当たり前に行われているが,社会調査の場合は,調査地点をまず選び出す。米国には住民基本台帳がないので,この段階ではまだ被験者たるインタビュー相手を選び出すことはできない。実際に被験者を選ぶのは,選ばれた地点から訪問調査のために作成された乱数表を参照しながら住戸番号を選ぶ段階だ。選ばれた住戸に調査票を投かんするか,訪問してインタビューするというのが以前の方法だった。

 日本では住民基本台帳があるので,同じように乱数を用意して,住民基本台帳から被験者を選び出す。選び出した住民に調査票を郵送するとか訪問するといったアプローチである。

 米国ではRODで無作為に段階地点抽出が実現できるのだが,日本では簡単ではない。その理由は,電話局の局番方式にある。

 米国の場合,局番は地域として表示される。だから市外局番と電話局番をランダムに選べば,簡単に無作為二段階地点抽出のサンプリング結果となる。ところが日本では,電話局番では地域表示できない。

 例えば東京都港区白金というと,米国方式では電話局番を特定できる。逆に電話局番が分かれば,おおよその居住区域が判明する。ところが日本式ではそれができない。ある特定の区域に複数の電話局番が割り当てられていたり,区域が広すぎるのがその理由だ。だから地点抽出が米国式のようにはできない。住民基本台帳から地点を選ぶという方法に準拠できないのだ。

 技術的には何らかの補正が必要だろう。筆者はその補正方法が議論されたという公開記録を探しているが,今のところ見当たらない。また従来の無作為二段階地点抽出とRDDとの間に,サンプル抽出方法の違いで調査結果に有意差がないという検証も必要だ。その検証は,うろ覚えだが読売新聞とNTTソルコ(コールセンターのアウトソーシングを引き受けている企業である)が共同で実施して,新聞紙面に公開したことがあったと記憶している。

 いずれにしても,関係者がどのようにしてこの地点抽出を補正する技術を開発されたのか,機会があったら直接尋ねてみたい。だから,筆者は今のところ,NHKなどが「RDDで電話調査した」という説明で示される調査結果を不思議に思いながら眺めている。

 財団法人日本世論調査協会という組織がある。筆者の知る範囲で,RDDやRODのことをきちんとアカデミックに論じている組織はここだけである。

 その研究内容は協会報「よろん」に所載されている。2007年3月発行の第99号には「R.D.D.における抽出方法とその精度」と題する会員からの寄稿が載せられている。関心を持たれた方は参照されることをお薦めしたい。

 また社会調査士資格認定機構が,社会調査に携わる専門家を認定している。この機構は,日本教育社会学会,日本行動計量学会,日本社会学会の三学会が連携し2003年に創設したそうだ。社会調査に必要な知識,技術,そして倫理を教えたうえで,社会調査士資格を認定している。

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