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 「最近の若い技術者は、びっくりするほどお客の業務を知らない」。そんな話を年配の技術者から何度か聞いたことがある。その理由として必ず挙げられるのが、「システムがオープン系に移行したため、多くの技術者は最新の技術について行くことに精一杯で、業務を理解する余裕がない」との“俗説”。私もそんなもんだろうと同意していたが、どこか「ちょっとヘン」との違和感が残っていた。

 そもそも最新の技術について行くことに精一杯の技術者って、どんな人だろう。私はこれまで、プロを自認する技術者からそんな泣き言を聞いたことがない。年配の技術者だって、もし今、Javaあたりでシステム開発をバリバリやっていれば、嬉々として最新の技術に取り組んでいることだろう。

 きっとプロとしては疑問符がつく技術者が大勢いるのだろうが、こういう人たちは今も昔も、顧客の業務をまともに理解してなんかいない。昔の方が多少は理解していたのかもしれないが、所詮は五十歩百歩。顧客の業務をほとんど理解せず、指示された通りにコーディングしていた人は、以前も数多いた。だから「最新技術の習得に精一杯」説には違和感が残ったのだ。

 それが少し前、ある中堅ITサービス会社の幹部の人から「オープン系になってから優秀な技術者はいくらでも技術にのめり込めるようになった」との話を聞いて、違和感が解消した。そう、問題は優秀な技術者の方だったのだ。システム設計やプロジェクトマネジメントで高い潜在能力を持つ技術者が、まさに嬉々として最新技術にのめり込んでしまう。

 そりゃ、そうだ。好きで選んだ仕事で、挑戦し甲斐のある技術的課題が次々と目の前に現れる。技術者冥利に尽きる。楽しくて仕方がない。しかも、最新技術を理解し、いち早く習得すれば、技術者としての社内での立場も磐石だ。一方、昔はそうはいかなかった。メインフレームとCOBOLの世界では、学べる技術は無尽蔵ではない。あふれる好奇心は自ずと顧客の業務、さらにはプロジェクトマネジメントへ向かった・・・。

 そんなわけで昔に比べ、「最近の“優秀な”若い技術者はびっくりするほどお客の業務を知らない」のである。プロとして生きてきた年配の技術者は、同じプロとして認めることができる優秀な後輩に目が行く。で、驚愕するわけだ。まあ、好きな技術にのめり込むことができるのだから、ある意味、今は技術者にとって幸せな時代だ。しかし、ITサービス会社にとっては由々しき事態である。

 将来を嘱望される技術者が皆、“技術オタク”になってしまったら、どうなるのか。優秀なアーキテクトになってくれたらいい、と安易に考えることなかれ。ITインフラを設計するアーキテクトにも、顧客業務への理解は不可欠である。優れたプロジェクトマネジャーやITコンサルタント、さらには将来の経営幹部をどうやって育てるのかも含め、オープン時代の人材育成を再考してみた方がよい。