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 先日,武蔵大学名誉教授・愛知東邦大学教授,一樂信雄先生主宰のCCCF(クロス・カルチュラル・コミュニケーション・フォーラム)で,大相撲の千賀ノ浦部屋を訪ねる好機がありました。

 千賀ノ浦部屋は,元関脇の舛田山を師匠に,11名の若い力士が稽古を重ねる新しい相撲部屋です。九月場所たけなわの相撲部屋で,本物の親方を囲んで,本物の現役力士が作る,本物のちゃんこ鍋を味わおうというのです。

 遅ればせながら,そこで私たちは親方や力士と交流する楽しさや,美味しいちゃんこの味をおぼえました。そして,相撲甚句を聴きながらみんなで手拍子をしたり,本物の土俵を素足で歩いて「鉄砲のまねごと」をして楽しんだのです。その結果,参加した老若男女の多くが,たった2時間で相撲が大好きな人に変わっていたのです。

 さらに驚くことに,千賀ノ浦部屋の手作りチラシを見ると,右下にブログの案内とQRコードがありました。その手作りブログにアクセスして読みながら直感しました。昨今,良い話題も少なく,客足が遠のいていると聞く大相撲には,相撲部屋や力士のブログがファン拡大にきっと大いに役立つはずです。

 このブログ効果は大相撲に限ったことではありません。歴史と伝統がありながら,年齢層が高い固定ファン中心で,ちょっと敷居が高く見える「あらゆる芸能・武道の活性化」にも有効だと確信しています。

文化放送「熱戦十番」 細田勝さんの名ガイド

 今回のイベントのきっかけは,先日,CCCFの勉強会に,かつてラジオの文化放送「熱戦十番」で活躍された細田勝さんが登場されたことでした。細田さんしか知らない「相撲の魅力とよもやま話」を伺ったのです。

 もともと私は,国技館が近く相撲部屋も多い墨田区で生まれ育ちました。通った保育園は元力士が経営していましたし,地元の公立小学校にも力士の子弟が通っていたりしました。そして,小学校や市民センターの体育館でも,ひまさえあればみんなで相撲を取っていたのです。今でも,弊社は有名な相撲部屋や国技館のご近所にあり,お隣の高層マンションには某著名関取が住んでいるのです。

 そんな,相撲が誰よりも身近なはずの私でさえ,気がつけば,若貴以降は相撲を見なくなっていました。

 しかし,さすが電波を通じて相撲人気を支えてきた「生き字引」細田さんのお話には引き込まれました。お話を伺うそばから,また相撲を見たい気持ちがどんどん膨らんできました。そして,勉強会後の懇親会で,私は何気なく「細田さんなら,どこのちゃんこ屋さんがお勧めですか?」と聞いてみたのです。細田さんのお答えは「ちゃんこは場所中に相撲部屋で食べるのが一番美味しい」でした。そして,今回のちゃんこの会が実現し,参加者は誰もが相撲ワールドの虜(とりこ)になったのです。

 だからこそ,私が日本相撲協会の事務局でしたら,今すぐ手を打ちます。細田さんはじめ「相撲を誰よりも愛し誰よりも詳しい達人たち」のお話を真っ先に「動画ブログ」化するでしょう。また「相撲評論家の頁」を自主的に運営されている坪田敦緒さんのような方を,誰よりも大切にして応援するでしょう。

 そして,達人たちに,こうした相撲や巡業観戦ツアーはもちろんのこと,相撲部屋ちゃんこツアーなどのミニツアーのガイドを三顧の礼でお願いするのです。つまり,私たちが感動した体験を仕組みにして,新しいファンを開拓するのです。

ちゃんこパーティで見た若い力士の素顔

 ちゃんこパーティを実際に体験する前は,おそらく多くの参加者はもっと有名な関取がいる部屋だったら良かったのに,と思ったはずです。しかし,参加してみて細田さんがなぜ千賀ノ浦部屋を勧めたのかわかったような気がしました。

 これから上を目指す若い力士と接して,参加者は「特別な感情」を抱いたのです。

 私たちが鍋を囲むまわりには,まだあどけない表情も残る10代後半から20代前半の若い力士たちが等間隔に立ちました。若くて番付もまだまだですが,誰もが120キロを超えていそうな見事な体格をしています。そんな若い力士たちが,ちゃんこをよそったり,ごはんのおかわりなどの世話をしてくれるのです。ちょっと恐縮してしまうような「もったいない体験」です。

 しかも,若い力士だからこそ,こちらも気軽に「いつか聴きたかった素朴な質問」をすることができます。そのまじめで朴訥(ぼくとつ)とした答えを聞いているうちに,いつしか不思議と「親心」もわいてきて応援したくなってきます。

 言葉は良くないかもしれませんが,有名力士をはべらす成金感覚ではなく,若い力士が育つのを見守る純粋な相撲ファンの心持ちになるのです。いわば「育成ゲーム」の喜びを,現実で味わえるのです。

力士が力士を呼び,ファンが集まるブログ作り

 だからこそ,帰宅後,若い力士たちの顔写真や連日の星取表などをブログで目にした時に,特別な親密感を抱かずにはいられませんでした。

 千賀ノ浦部屋のブログは,元力士のコーチが作った手作りです。ネットで検索して,相撲関連のリンク集などをたどれば,相撲部屋や力士のブログは数多く見つかるので驚くでしょう。ブログのデザインや内容だけを見比べれば,千賀ノ浦部屋のブログは,いかにも素人が作った体裁の個人日記風です。しかし,部屋から強い関取を出したいというコーチの気持ちが伝わります。そして,ちゃんこパーティで言葉を交わした真面目な若者たちのイメージが重なります。

 今後,若い力士たちの稽古の様子=成長の過程が,生き生きとした表情や肉声と共に発信されれば,ファンがファンを呼ぶことになるでしょう。パソコンが苦手でも,日替わりで一人ひとりの動画ビデオを配信すれば,そちらの方が情報伝達力が高そうです。

 ぜひ,こちらも動画化していただきたいものです。