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 最近「ニセ科学」系の本を立て続けに数冊読んだ。一番面白かったのは松永和紀氏の「メディア・バイアス~怪しい健康情報とニセ科学」。これは最初から引き込まれ,最後まで面白かった。松永氏の他の著書も面白かった。ただ,別の著者の本を何冊か読んでみると,この種の本が実にいい加減であることに嫌気がさした。

 多くの「ニセ科学」告発本は,初めのうちは一次情報が提示してあったり自身の体験に基づいていて説得力があるのに,後半で失速する。編集担当は何をしているのだろう。明かな事実誤認や矛盾があることに気づかないのだろうか。これではニセ科学を糾弾するどころか,ニセ科学の再生産である。

 IT業界にもニセ科学的なマーケティングがずいぶん横行していた。しかし,業界が成熟したのか,消費者が賢くなったのか,あるいは単に訴訟が恐いのか,いい加減な情報はずいぶん減ってきたように思う。その代わりに流行しているのが調査会社の結果を引用する方法だ。例えば,マイクロソフトの「Get the Fact」シリーズである。

 このシリーズは,マイクロソフトがスポンサーとなって第三者に調査を依頼している。不利な情報は隠されている可能性はあるし,マイクロソフトに有利な条件を設定しているかもしれない。しかし,あからさまなウソはないだろうと思われる。そんなことをしたら調査会社の価値が下がるからだ。ただし,大抵の結論は適当な前提条件を設定することで導くことができるので,十分に注意して読むべきだ。そのため,最後まで目を通すのはかなり骨が折れる。

 もう1つの方法はブログの活用である。ブログには非常に有益な情報が含まれる反面,多くの誤認も見られる。通常ブログは個人の責任で発表される。また,事実に基づくよりは印象に基づくものが多い。こちらは,読みやすいのが長所だが,思い違いや誤解が含まれることが多々ある。業務上の判断に利用するときは必ず裏付けを取る必要があるので,こちらも意外に面倒だ。

 最近教えてもらったのが「Oracle都市伝説」。ブログではないがブログ風のコラムである。其の三では「行ロックができるのはOracleだけ」と主張している。なるほどそれは確かに都市伝説だと思ったら「行ロックができるデータベースが他にある」というのが都市伝説なのだそうだ。

 どうやら暗黙のうちにMicrosoft SQL Serverを指しているらしい。確かにMicrosoft SQL Serverには多数の行ロックをページ・ロックやテーブル・ロックに変換する「ロック・エスカレーション」という機能があり,行ロックだけでは済まない場合がある。しかし,ロック・エスカレーションの回避方法(SQL Server でロックのエスカレーションが原因で発生するブロッキング問題を解決する方法)が存在し公開されている以上「Oracleだけ」というのは言い過ぎではないかと思うのだがいかがだろう。

 Oracle都市伝説の著者は「行ロックを効率よく実行できるのはOracleだけ」と言いたいのだろう。これは確かにその通りらしい。せっかく素晴らしい製品を持っているのだから,誤解を招くような書き方をせず,正面から勝負して欲しいものだ。