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 SaaSが普及するかどうかという、くだらない議論する人がまだいる。そんなの普及するに決まっているじゃないの。そんなことを言うと、「では、どんな分野で?」と質問される。それも簡単。ものすごくアバウトに言えば「サービス業にはサービス(SaaS)、モノ作りにはモノ作り(ソフト開発)」である。

 ここで言うサービス業は、小売なども含めた広い意味でのサービス業で、通信など装置産業は除いたぐらいの意味でとらえてほしい。さて、それを踏まえてサービス業を見渡すと、実はSaaSって既に随分普及しているんだよね。何かというと、既存のASPサービス。POSシステムなんかもASPの形態で提供するのが、既に当たり前になりつつある。

 そう言えば、SaaSとASPとは何が違うのかという、これまたくだらない議論があったが、今はさすがにそんなことを言う人も少なくなった。SaaSとASPは機能上の差異ではなく、マーケティング上の都合にすぎない。かつてASP事業で失敗した企業はSaaSという言葉を使う。一方、ASP事業でサービス業などのお客を獲得することに成功した企業は、頑としてASPという呼び名を変えない。

 で、サービス業におけるASPという名のSaaSビジネスだが、収益面でも多くの成功事例が出ている。外食産業相手のビジネスでは、営業利益率で3割以上をたたき出すベンチャー企業がある。これは少し前に、ある大手コンピュータ・メーカーの人に聞いた話だが、ソフト開発・パッケージ販売主体で長らく赤字だった小売業向けのビジネスが、ASP・SaaSなどサービス主体のビジネスに転換を図ることで黒字化したという。

 サービス業のお客とSaaSなどのサービスとの親和性が高いのは、ある意味当たり前。サービス・ビジネスに対する理解が深いだけではない。特に小売業なんかがそうだが、サービス業は大きな本社機能を持ちたがらない。できるだけ間接部門への投資は抑えたいから、立派なシステム部門は不要。IT投資も必要最低限だし、できれば経費化したい。

 こうしたお客にソフト開発を提案したり、パッケージ・ソフトを売り込んだりしても、手離れが極めて悪い。導入後のサポートも大変で、結局「小売業相手では儲からない」と天を仰ぎ、「とんでもない客だ」と毒づくことになる。一方、ASPなりSaaSなりといった形で、ソフトウエアを客の手元におかず、お客が経費として処理できるようにサービスとして提供するのは、とても筋がいい。ITベンダーもお客も共にハッピーな仕組みになる。

 一方、同じお客でも製造業となると、少し話が違う。製造業は投資の権化。ITについても投資が基本だ。大企業はもとより中堅クラスでも比較的しっかりしたシステム部門を持つ。当然、情報システムも自らの資産として構築したがる。サービス業でも金融や通信などの“装置産業”なら、事情は製造業と同じだろう。

 これまでITベンダー、特に大手はどちらかと言うと、こうした製造業や装置産業に依拠してビジネスを展開してきた。そのせいか、ソリューションの提供だと騒いでも、業種別にソフトウエアの機能はいろいろ考えるのだが、その提供形態にまでは頭が回らない。だから、SaaSというサービス化の波にイマイチ対応できていないような気がする。

 極めて紋切り型に「サービス業にはサービス、モノ作りにはモノ作り」と書いてきたが、ある程度本質を突いていると思う。もちろん製造業でも営業など“サービス的な業務プロセス”では、それを支えるITのサービス化は進むだろう。SaaSはもはや普通のビジネス。普及するかどうかなんぞを議論しているフェーズではなく、儲ける算段を考えるべき時である。