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 これまでオフショア開発を進める中で,報告のやり取りでとても苦労しました。今回はその経験をお話しします。

 遠く離れた海外の企業やチームと一緒に仕事をする上で,情報や状況を相手側に正確に伝達させるため,報告(連絡)がとても重要になります。まず相手に,こちらの状況,意図,関連情報および依頼内容を的確に連絡することが必要です。そして,それを受けた相手は依頼された業務や作業を行い,それを報告として正確に依頼元に返すことが大事です。

 文化,習慣,言語が異なる海外の人との連絡や報告には,国内より難しい面があり,注意が必要となります。これまで海外側メンバに正確な報告書を書くように,数多く指示・指導しました。しかし,すぐにうまく書いてもらえることはほとんどありませんでした。報告をうまくしてもらうための工夫や改善もいろいろやってみましたが,どうもうまくいきませんでした。

 そこで,指導を半ばあきらめ,報告は個人の資質や経験によって身につくものだからそれができる人を選ぶのが一番よいと判断した時期もありました。この場合,日頃誰が正確にうまく報告しているか知り,それが得意な人材を活用するよう心がけていました。

 しかし最近,このやり方には育成の視点が不足していることに気づき,報告書をうまく書けるように指導することも大事だと考えるようになりました。以下に,成果の出た指導法について書いてみたいと思います。

時間の経過を意識して書く

 日頃,東南アジアのIT技術者の英語を見たり聞いたりして感じることですが,インドやフィリピンなど英語を公用語として使っているところでは,文法の間違いが比較的少なく欧米の英語に近いように思います。これに対し,英語が公用語ではない国の場合,いくつかの特徴があることに気づきました。

 ある海外プロジェクトでやり取りしたメールや報告書では,過去,現在,未来の時制がはっきりしていない文章が多く見受けました。物事が時間の意識なしに混在して書かれているため,時間の経過にともなう動きが理解できない内容でした。そのため,報告書内容の確認に毎日2時間,1週間以上の時間がかかるような苦い経験もしました。

 その理由として,アジアの言語の中には,現在,過去,未来という時制がはっきりしないものがあり,その影響ではないかと思うようになりました。例えば,日本語には,現在,過去,未来を表す時制と語尾の変化があるのに対して,ベトナム語ではそうした語尾の変化はありません。その代わりに,過去や未来を表す言葉を動詞の前に付けます。また,「昨日」,「今日」,「明日」など明らかな時を表す言葉がある場合,この時制を表す言葉は省略されます。

 もともと言語の時制について注意していない人々に,「時制をはっきり書くように」と指示するだけでは,改善は難しいようです。しかしアジアの言語の特徴を知ってから,そうした地域の人々の文章の傾向がわかるようになりました。時間の経過を意識した報告書の書き方を指導することによって,効果を上げることが出来たのです。

事実,推測・予測,所見を分けて書く

 別の海外プロジェクトでは,事実と予測とが混ざって記述されている報告書に悩まされました。1つの不具合対応に関する報告文書の中に,事実,本人の考え,それから発展した本件に直接関係のない話などが混在していたのです。

 これでは内容をよく理解できず,とても困りました。筆者は報告書を書いた本人に,事実は正確に,予測はこのような情報をもとにこのように予測した,そして自分はこのように考える──と,明確に分けて書くようにお願いしました。

 また,報告書提出を依頼すると,やたらと長く書いてくるケースもありました。それも,メールの場合にはいくつかの圧縮ファイルが添付され,pdfやword,excelが混ざっているのです。このため,全部をざっと見るためには,何回もクリックしていろいろなファイルを開かざるを得ない状況でした。このときは,読む人のことを第一義に考えて,クリック回数が少なくなるよう工夫するよう改善をお願いしました。

 多くの場合,報告書を作成する人が自分の立場で書きやすいように書いており,読む人のことを念頭に置いていないケースが見受けられました。これは,報告書が何のため,誰のためのものかわかっていないからだと思います。

 そこで,この報告書は何のためのものか,必要な人に必要な報告を出すことが大切であると説明して指導しました。すると次から報告内容ががぜん改善されました。報告書を書いたり見たりする視点には,マネジメントの立場,開発技術者の立場,営業の立場,品質保証の立場,お客様の立場等様々ですので,適切な視点で書くことが求められます。そして要求される内容をわかりやすく,簡潔に記述することが要求されます。