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 多くのユーザー企業で、情報システム部門が衰退した----これは動かしがたい事実であるが、ではその原因は何か? 経営者がITに無理解だったからという天動説や、経営の期待にシステム部門が応えらなかったという地動説など諸説ある。しかし、よくよく考えてみると、システム部門の衰退は“歴史的必然”なのだろう。

 今、システム部門が総力を挙げて取り組む開発プロジェクトは、どれくらいの頻度があるだろうか。おそらく金融機関、通信、一部の製造業を除けば、よほどの大手企業でも4~5年に一度程度だろう。そんな頻度では、システム部門が経営の視点でIT活用を考え、利用部門に対してリーダーシップを発揮してIT化を推進することなど、夢のまた夢である。

 そもそも、システム部門が最も経営の視点でモノを考える機会は、基幹業務システムの構築など大規模な開発プロジェクトの時である。大規模なシステム構築とは業務プロセスの再設計であり、極めて戦略的な意味を持つ。程度の差こそあれ、システム化計画には経営者の意向が強く反映し、システム部門もそれはもう必死で既存の業務プロセスを分析し、あるべき姿を描き出そうとする。

 しかも、要件定義や実際の開発においては、経営陣はもちろん、利用部門を巻き込み、外部のITベンダーを指揮してプロジェクトを進めなければならない。しかも、開発は運用とは違い“非日常”の仕事で、予期せぬトラブルの連続だ。そんな修羅場をくぐり抜けるから、強いリーダーシップを身に付けた人材がシステム部門の中に育つ。

 15年前、20年前なら、大手企業にはそんな開発プロジェクトがごろごろあった。なんせIT化の真っ最中。昨年、会計システムに手を入れたと思ったら、今年は販売管理システムの構築、来年には生産管理システムをなんとかしないといけないし、その次は・・・。開発の積み残し案件、いわゆる“バックログ”が山積みで、システム部門は四六時中、開発に追われていた。

 しかし一通りIT化が終わると、開発案件はガタ減りする。さらにERPの普及で、ますます開発案件は減少した。バックログ問題はめでたく解消したが、システム部門が経営の視点でモノを考えたり、次世代の若手リーダーを育成したりする機会も失った。仕事は楽になるどころか、人員を減らされ運用業務に忙殺されることになってしまった。

 運用は開発と違い、日常の業務オペレーションである。戦略的思考を鍛える機会はほとんどなく、ルーチン業務では強いリーダーシップも生まれない。そんな日常に埋没したシステム部門に4~5年、場合によっては10年に一度、戦略的思考とリーダーシップを要求される大規模開発プロジェクトの機会が巡ってくる。

 こんな現状では、システム部門にかつてのような能力を求めるのは土台無理である。かくして、システム部門の弱体化は“歴史的必然”ということになる。よくITベンダーの営業担当者や技術者が「顧客のシステム部門がダメでねぇ」とぼやくのを耳にするが、こうした発言はちょっと恥ずかしい。プロであるなら、システム部門の弱体化は与件とすべきである。

 そう考えるとITベンダーにいる技術者は、ユーザー企業の技術者に比べて圧倒的に幸せだ。経営の視点でITを提案し、業務プロセスを分析・理解して知見を蓄え、強いリーダーシップを身に付ける機会がいくらでもある。4Kか7Kかは知らないが、自分を磨く機会を無駄にしないでほしいと思う。