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 「日本のITサービス会社はドメスティックで、国際競争力はない」。これはもう常識というか、ITサービス会社自身がそう思い込んでいる定説だ。ガラパゴス化した国内市場に閉じこもり、上陸しつつあるインド企業や中国企業の影に怯える・・・。だが、ちょっと待て。それは本当だろうか。

 まず原理原則としては、ITサービス会社がドメスティックなのは、ある意味当たり前。プロダクトはグローバル、サービスはドメスティックなのである。プロダクトならマーケティングさえ間違わなければ、優れた製品は海外でも売れる。サービスの場合は、そうはいかない。中国で流通向けのSIサービスを売り込もうとしても、「現地の商習慣も知らないのに何言ってんの」と笑われるのがオチである。

 だから、IT分野でもグローバル企業はプロダクト型が多い。顧客がそれを優れたものと信じる限り、プロダクトは手離れよく売れる。その辺りをうまくやったのが欧米のERPベンダーで、「ERP製品には欧米企業のベストプラクティスが詰まっている」とマーケティングして売りまくった。日本で売る場合、カスタマイズというサービスがどうしても必要だったが、それはドメスティックなITサービス会社に任せることで解決した。

 一方サービスの場合、売り物はソリューションである。つまり問題解決。そのためには、顧客や顧客を取り巻く環境に精通し、課題そのものが見えなければならない。必然的にITサービスはドメスティックにならざるを得ない。唯一の例外は“経営”という、ある程度普遍性がある領域ぐらいか。世界共通語の“MBA語”を語れるコンサルティング部隊を持つ企業は、グローバルでITサービスを展開できる。

 そんなわけだから、SIを主力とする日本のITサービス会社は必然的にドメスティックにならざるを得ない。どうしてもグローバルに打って出たいのなら、大手顧客のグローバル展開に付いていくか、欧米のコンサルティング会社を買収するしかない。実際、日本のITサービス会社の“グローバル展開”を見ると、だいたいこの2つのパターンのいずれかだ。

 このように書くと、日本のITサービス会社は世界でまともに戦うための強みなど持ち合わせていないかのように見える。ところが以前、ある証券アナリストの人から、こんな話を聞いた。「大規模システムをゼロから作ることにかけては、日本企業の右に出る者はいない」。

 言われてみれば、確かにその通り。欧米ではパッケージの活用が主流で、スクラッチでの大規模システムの案件は日本に比べて極めて少ない。しかも、日本のITサービス会社は、顧客の無理難題や曖昧な要求への対応、あるいは以前続発した大規模案件でのトラブルへの対応で鍛えられている。

 そのアナリストは、やはり顧客の無理難題に対応する力を持ったプラント・エンジニアリング会社がグローバル企業へと飛躍した事例を挙げて、日本の“システム・エンジニアリング会社”にも世界に飛躍できるチャンスがあることを指摘していた。ただ問題は、そのような大規模システムをスクラッチで作るニーズが、世界でどのくらいあるのかである。

 実は、こうしたニーズは結構あるかもしれない。まずBRICsをはじめとする新興国家にはIT化ニーズが山のようにある。そんな中でも、社会保障制度などの国の制度整備に伴うシステム構築案件などは、スクラッチ開発の塊だろう。

 それに社会保障制度などは、日本のような先進諸国の制度を参考にしながら設計するわけだから、現地の事情に詳しくない日本のITサービス会社が“ソリューション”を提供できる余地もありそうだ。要は“先進国ニッポン”の経験を受け入れてもらえる領域を事業ドメインに、グローバル展開を図ればよいわけである。

 ちょっと楽観的すぎるかもしれないが、逆に日本のITサービス会社の経営トップは「ガラパゴス化現象」とか「内弁慶」とか自己卑下することで、国内市場というぬるま湯に留まる弁解をしているようにも見える。グローバル展開を図っていても、「お客さんに付いて行きます」だけでは、ちょっと寂しい。ぜひ自らの強みを再確認して、それを武器に世界に打って出てほしい。

 ところで全くの蛇足の話だが、欧米企業は新たな形態でITサービスをグローバル化することに成功したようだ。SaaSである。

 SaaSは「サービスとしてのソフトウエア」という意味らしいが、実はこれ、サービスをパッケージ化することで、つまり“プロダクト化”することで、グローバルなサービスにすることに成功したと言える。いわば「ソフトウエアとしてのサービス」である。さすが欧米企業はグローバルなマーケティングに長けている。