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 富士通の国内アウトソーシング事業が数年以内に1兆円規模に達する勢いで成長している。同事業の売り上げは06年度の4600億円から07年度に5100億円、08年度に6000億円を見込んでいるが、サービスビジネス本部長の阿部孝明常務理事は08年3月上旬、「アウトソーシングは、富士通が一番伸ばすべき分野である」とし、今後年率10%以上で成長させるとともに、営業利益率16~17%を確保する考えを明らかにした。

 同社がシステム構築のSI事業を10ポイント程度上回る数字で、アウトソーシングなどのストックビジネスを収益改善の大きな柱に位置付けるのは、収益率が低下する一方のハードやソフトといったプロダクト開発の強化につなげる意味合いも込められているようだ。プロダクトとサービスの両輪で事業展開することが、富士通の根本的な強みだからだ。プロダクトから生まれるサービスも数多くあるが、プロダクトの営業利益率は1%強とほとんど出ていない状況にある。

 しかし、黒川博昭社長はそれぞれの事業のキャッシュフロー内で投資を考えろと指示している。なので、05年度からテクノロジーソリューションという括りにし、この中にサービスに加えて、ハードやソフトなどのシステムプラットフォームを取り込んだという見方ができる。

 ストックビジネスを推進する1つが、SaaSプラットフォーム事業になる。大手から中小企業までが使えるような共通基盤を全国に整備し、その活用を促す。経済産業省が08年度に実施するSaaSプラットフォーム構想も視野に入っているが、「国内でプラットフォーム提供者は数社程度」(阿部氏)と予想し、いち早く市場を獲得する作戦を展開する考えだ。

 08年2月に発表した会計ソフトなどを展開する中堅・中小ソフト・ベンダー向けSaaSプラットフォーム提供事業はその第一弾である。オービックビジネスコンサルタントやピー・シー・エーなどのソフト・ベンダーにSaaSプラットフォームを利用してもらい、中小企業市場を開拓する。

 中堅・中小ソフト・ベンダーがSaaS事業参入するには、プラットフォーム構築などの初期投資が大きくなるリスクになっていた。そこに必要な技術変化に追随することも求められる。「そのリスクを当社が受け持つことで、SaaS参入の障壁を低くした」(阿部氏)わけだ。オフコンを使い続けるユーザーを、販売店がソフトベンダーとの協業で切り替えるチャンスにもなる。

自らもSaaS事業を展開する

 ここまでの話は、SaaSプラットフォーム提供者の立場だが、富士通が得意とする大手企業向けにアプリケーションを含めた形で取り組む計画もある。CADやeコマース、eラーニングなど一部のアプリケーションをSaaSで提供し始めているし、ストレージなどハードをオンデマンド型で用意するサービスもあるが、中心は基幹系より情報系になる。

 例えば、携帯端末を業務端末として使用するために、社内情報システムとの接続が必要になる。こうしたインフラをユーザーが自ら構築すれば、コストもかかるし時間もかかってしまうので、富士通がセキュリティなどを含めて共通的な機能を備えたプラットフォームをSaaS型で用意する。

 「SNSやEC/EDIの商談も多くなっている。インフラをしっかりしないといけない」(石田一雄経営執行役常務)。ソフト・ベンダーと協業しながら、ビジネス拡大を図り、今後3年間(08年度から10年度)で、SaaSプラットフォームで合計1300億円を見込む。年率30%成長である。

 しかし、こうしたストックビジネスで得た収益をプロダクト開発に振り向けても、富士通が作るべきプロダクトが明確になっているかが大きな課題である。業界関係者は「大手ITベンダーは今、何をすべきかがはっきりしていない」と指摘する。強い分野、成長させる分野を絞り込まないと、無駄な効果になりかねないことが懸念される。