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 IT組織を機械のような組織として捉えるのではなく,「血の通った生物,人間」による組織として理解する必要性が,ますます高まっているように思います。

 内部統制違反を作り出すシステムを作るのは人間ですし,内部統制を意図的に壊すのも人間です。情報および情報技術を活用する経営活動についてみても,一つ一つの業務は分業ですが,全社的でなければなりません。COBITにいう34のITプロセスは,全社的なIT組織,すなわち全社的な人間の役割体系によって実行されるのです。

「全社IT組織」の最高責任者は,CIOではない。

 「全社IT組織」を考えるとき,営業部門,製造部門,物流部門,研究開発部門,管理部門などのIT部門以外の組織単位についても,当然,視野に入れなければなりません。この視野に入れるという姿勢は,「情報(Information)組織」として,経営全体を全社的に掌握(統括)するということを意味しています。

 下の図をご覧ください。

 あまり例えは良くないかもしれませんが。組織を人の身体に例えると,組織を形づくる骨格としての業務体系(プロセス),筋肉としての人事体系,血管としての財務報告体系それらを神経系としての全社IT組織が縦横にめぐっていると言えるのではないでしょうか。

 もちろん,それらの機能系は,頭脳としてのトップマネジメントチームが活動の指令を与え,監視と統制を行うわけです。CIOは,トップマネジメントチームの一員ではありますが,あくまで最高責任者は,経営トップです。

 このことから,IT組織の最高責任者は,CIOでないことがわかります。

 今,話題になっている内部統制は,「経営者が行う内部統制の評価」を要求しています。  

 内部統制の目的の最たるものは,財務報告の信頼性のことですが,その本質は,「財務情報の信頼性」に他ならないことは,既に周知のとおりです。  

 単にIT組織というと,その責任者は,CIOなのか,情報システム部門長の役割なのか,判然としないところがあります。  

 ところが,「全社IT組織」を取り上げるならば,「それは,経営トップである」ということが,内部統制の視点からも明確にされたといってよいのではないでしょうか。

ITプロセスは,「血の通った生物,人間」が,機能させる。

 現在,「COBITでは,ITガバナンスをITプロセスの成熟度としてとらえている」ように思います。この考え方には,私も頷きます。

 しかし,ITプロセスを実行するのは,ほとんどが人間であり,「血の通った生物としての人間」なのです。分業で目的を与えられた機械が,あらかじめ決められたプロセスを電磁的,物理的な力で実行するのとは,大きく異なります。

 ITプロセスの成熟度は,良いとしても,その成熟度を上げていこうとすると,機械ではない「血の通った生物としての人間」の特性を無視できません。

 例えば,人間は,良い意味でも悪い意味でも「いい加減」だと互いに見える存在です。

 このことがすべてではないにしても,ITプロセスすなわち一種の分業による成果を一定の品質で実現しようとするときに,常に「協働の難しさ」という問題を生むと考えられます。また,この「協働の難しさ」は,結果的に「ITプロセスの成熟度を上げる難しさ」の原因でもあると言えなくもありません。

「CIOは,トップマネジメントの“情報統括の執行および監視統制機能”を 持っている」

 経営の最高責任者は,トップマネジメントのチームを必要とします。財務責任者や法務責任者,人事責任者,製造責任者,営業責任者,IT部門責任者などが,取締役と任じられているというのは代表的な例です。

 一般に,日本におけるCIOは,IT部門の責任者かそれを監督する執行役員か取締役クラスを指すことが多いと思います。名ばかりのCIOもたくさんいるため,「実質のCIOは,○○だ」という現状も少なからずあります。

 ここ数年,大手企業や一部の中堅企業でようやくCIOの設置が兼任も含めて,一般的になってきたことから,「CIOは,トップマネジメントから“情報統括の執行および監視統制機能”を権限委譲されている」ということを,無理なく理解されるようになってきたのではないでしょうか。

IT組織は,プロセスだけでは機能しない!

 COBITのITガバナンスの成熟度を上げようとすれば,書式をつくり,手順を定めて実行することが求められます。(これは,内部統制を構築するとき,統制環境を整え,統制活動を行うことと重なる部分が多いのです。)

 このような,ルールや規定をいくら作っても,「ITプロセス間の連携の信頼性」が維持されなければ,内部統制もITガバナンスも足元から崩れるのです。

 全社IT組織を理想的に構築し,運用するためには,「人の連携とも言うべき職制とコミュニケーション構造」に着目することが,重要となります。

 さらに,人の身体が持っているような自律的な連携性を維持するような運営をする必要があるのは,当然のことです。これを全社的な規模で行う必要があるわけです。筆者が講師を勤める「CIO養成講座」でもこれらの詳細について解説しています。

CIO川柳コーナー

 前回の川柳である「忍耐で コミュニケーション 喫煙所」を説明します。

 このようなことは,皆様の周りにもあるかもしれません。

 ある製造メーカーのCIOの人から聞いた話です。

 情報システム部門を統括するように異動を命じられ,情報システム部長となったのですが,まず驚いたことには,情報システム部門のほとんどのメンバーが喫煙者だったというものです。

 午前中,昼休み,午後の休憩時間には,喫煙所にメンバーが殺到し,システム室は,もぬけのカラになっていた。喫煙室からは,部下の談笑する声が聞こえ,見るからにも楽しそうだったといいます。

 そのような状況の中,そのCIOのK氏は,15年も禁煙していたにもかかわらず,

 禁煙を解いて喫煙所に飛び込んだというのです。新任のCIOならではの方策として,喫煙所で皆とコミュニケーションする必要性を感じたからにほかなりません。

 これを聞いた私は,コミュニケーションを重視したこのCIOの決断に,頭が下がりましたが,身体のことが気になってしかたがありませんでした。

 次の句は次回に説明します。皆様も,考えてください。

IT戦略 社長を超えて 会社去る KENJIN:CIO川柳/第31句