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 「顧客を獲得できる力と、しっかり仕事ができること。これが下請けから脱却する条件」。中小ソフト開発会社向けコンサルティングを手掛ける船井総合研究所の長島淳治・戦略プロジェクト本部チームリーダーは08年3月に開催された日経ソリューションビジネスの講演会で、高収益型への転換を提案した。

 全国にソフト会社は1万社以上あり、その8割が年商10億円未満と言われている。しかし、利益率は極めて低い。日経ソリューションビジネスの調査でも、ソフト会社の営業利益率は平均約4%だが、年商10億円未満の7割超がその平均値を下回っている。長島氏は「人を増やしてシステム開発需要に応える労働集約型だが、時流は作るから使うに移ってきた」と指摘し、労働集約型に限界が出てきたとする。だから、年商3000億円を目指す最近の業界動向に疑問を持つ。人を増やしても付加価値を見出すことにつながらないからだ。

 こうした中で、長島氏は中小ソフト会社に高収益型企業への転換を薦める。国内市場は伸び悩み傾向にあるし、インドや中国へのオフショア開発が急増し、下請け構造による成長の限界が如実になってきたことがある。「(元請の大手・中堅企業から)根拠のない価格交渉や取引継続に各種認証資格の取得を求められるなど、場合によっては理不尽な要求も出てきている」(長島氏)。しかも、プロセスの細分化、短納期による創造性が排除されてきている。システム開発の全体像も見えない。

 だからこそ、本業回帰になる。「現実はシステム開発とは言っているが、そのなりわいは時間による技術者派遣業」とし、長島氏は3年間で年商10億円、営業利益率10%を目指すべきだと提案する。目指すのは専門店化で、「規模の拡大ではなく、知的生産性を生かした付加価値を基本とするビジネスへの転換」(同)である。

 そのためには、まず自社の得意領域を明確にすること。ターゲットとする市場規模を調べ、そこに投入する商品が必要になるのは当然だが、それを答えられなければ、技術者の派遣業ということになる。

特定領域を明確にする

 得意領域を特定するのは、「感覚ではなく、数字で表現すること」と長島氏は説く。例えば3カ年の損益計画から売上高、原価、粗利益、販売管理費、営業利益などの推移を見る。その数値を事業ロケーション別、部門別に細分化し、そこから出た数値を顧客別、プロジェクト別にさらに細分化していく。そうすれば、事業ごとに黒字か赤字かを分析でき、成長分野を見つけ出せる。さらに、ビジネスモデル別の売上高、営業利益率、社員数を調べ、自社にとっての利益源泉となるビジネスモデルを明確にする、という作業を進める。

 もちろん、経営者らが自信を持って取り組める領域なのか、成長率が10%超の領域なのか、受注期間が短く高収益で効率的な領域なのか、を見極める必要もある。長島氏はこのうち2つの条件を満たしたものを強みと認識することだという。

 次に、特定した市場の規模をつかむ。「現状を、シェアの観点から説明する、それが分からないと、魚がいるのかいないのかを知らないで、釣り糸をたらしていることになる」(長島氏)。その市場を攻めることが正しいのかが分からないということだ。

 市場規模がつかめてもマクロな数字では意味がない。システム開発市場は10兆円だとしても、自社が特定した領域の市場規模は1億円かもしれない。ここをしっかり調査する。加えて、顧客1社1社に深く入り込むことが利益率や生産性に大きく影響するので、どの程度まで顧客に浸透しているかの基準を設ける。取引先の顧客がIT投資計画を立てたら、例えば請け負っている運用予算の5割のシェアをそのソフト会社が持っていたら、それ以上増やすことは難しいことになる。顧客は予算を1社に集中させたくないからだ。

 業種別のIT投資額や市場規模などの数字は様々なところに公表されている。こうしたものを利用して、自社の商圏範囲における市場の成長性を予測するとともに、対象顧客を明確にしていく。顧客数や顧客ごとにIT投資額をつかみ、本当にこの市場開拓でいいのか、別の市場や他の地域を探したほうがいいのかも見えてくるという。例えば生産管ソフトを何社購入してくるかを調べるには、対象市場から顧客数、投資額を調べる。仮説を立てることが重要なのだ。思い込みだけで開発した商品の対象顧客が数社で、しかも投資額が小さければ、狙う意味はないということになりかねない。「マーケットを知る、知らないでは大きな違いが出てくる。やみくもに進むのではない」(長島氏)。

 次が商品開発になる。いずれにしろ経営者がそうしたビジネスモデルを実現させるという強い決意が必要になる。