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デザインはコミュニケーションの道具

 商品を作ったり,販売する側を送り手,選択し消費する側を受け手と呼ぶとすれば,デザインとは,送り手の思想やコンセプト,気持ちなどを受け手に伝えるコミュニケーションの道具だと思っています。書店の店長の本を薦める強い気持ちを消費者の心にきちんと届かせるには,手書きという手法を使ったデザインが適していたということで,それは凝ったデザインや美しいレイアウトよりは効果的だったということです。

 スーパーのチラシも,あのデザインが効果的であるということが,昔から現在まで続いてきているということなのでしょう。チラシの目的がクリアにできるのであれば,現在のよくあるごちゃごちゃしたデザインでなくても良いと考えています。むしろ,そのようなチラシの研究を誰かやってほしいなと思っているのですが。

 人は美しいものや新しいものに注目し,それを好みます。ですから,美しいデザインやセンスの良いデザインを「良いデザイン」だと思ってしまいがちです。しかし,売れなかったり問題を解決しないデザインであれば,それはたとえカッコイイデザインでも,「悪いデザイン」だと考えます。デザインが美しくなくても,人の気持ちを動かすものは場合によってはたくさんあります。その,場合によって表現をうまく使い分けることが大切なのであって,デザイナーはクライアントの目的を達成する,効くデザイン,問題を解決するデザインを作る必要があるのです。

 さて,それでは,千葉県のロゴマークは良いデザインでしょうか,どうでしょうか?

 2006年の11月に発表になった,千葉県初めての統一したマークだそうです。皆さんはどう思われますか?新聞などでは「千葉初の県ロゴに県民からブーイング!」などという記事で話題になりました。賛否両論と言うよりも,賛成意見があまりなかったようです。ちなみに,デザインしたのは,著名なデザイナーですので,造形的に低いレベルということではないようです。

 なぜ,こんなにブーイングが多かったのでしょうか。それは,このマークを発表する時の千葉県のコメントが適切でなかったからだと思います。

 千葉県のホームページに記載されていた説明として,「様々な魅力を持ちながらも,県全体としては垢抜けないなどと言われることもあった千葉県のイメージの一新を目指して,統一的に活用する新しいロゴを作成しました。新しいロゴは,多様な魅力が集約した“ちば”の文字を使って「洗練」されたデザインとしました。」とあります。「洗練」の意味は,「あかぬけのした優雅・高尚なものにすること。」と辞書にはあります。

 正直,私は「洗練」というイメージはしませんでした。洗練と言うよりも,親しみやすく,明るく,素朴で暖かなイメージがします。造形的にも個性的で,決してひどいデザインだとは思いません。むしろ好きな造形です。

 しかし,私はこのデザインは今までの垢抜けない千葉のイメージを一新させ,洗練されたイメージを求めているなら,間違ったデザインだと思います。逆に千葉県のあか抜けないと言われてきた素朴さや,暖かさなどを表現し,親しみやすいイメージで県をアピールしたかったという意図ならば,良いデザインだといえるでしょう。

 もし,千葉県側が本当に洗練したイメージのロゴを作成したいのであれば,デザインの選択を誤っていますし,デザイナーとよく議論を重ねていないのでは,と思ってしまいます。これはデザイナーの能力ということが問題なのではなく,発注者側の問題です。

 このように,デザインが発信側と受け手側のコミュニケーションの道具として上手に機能していない場合,期待される効果も薄くなってしまいます。デザインを依頼する経営者,または担当者はこのようなことに留意して,良いデザインをデザイナーと一緒に作ってほしいと思います。

 デザインは必要なのか?と,ブログで疑問を投げかけていた著者に対しては,当然,「デザインは必然である」と申し上げたいですし,納得していただけるのではと思います。