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 文科省が実施した中学校・高校を対象にした「学校裏サイト」に対する初の実態調査結果が公表され,4月16日付の新聞各紙に紹介された。

 2008年1月から3月にかけてのわずか3カ月の調査で,見つかったサイトは3万8000件超。うち約2000件を精査したところ,「うざい」「キモイ」などの中傷が50%,わいせつな言葉が37%,「死ね」「殺す」という暴言が27%ものサイトから見つかった。しかし学校名を伏せたり,パスワードを設定したりする隠れサイトも多く,実際にはさらに多くの裏サイトが存在すると見られるという(日本経済新聞2008年4月16日付より引用)。

 そこは「悪意と不道徳がまかり通る無法地帯だ」(同2008年4月17日付)。無料で匿名という安易さから,「ブタ」「サル」「ブス」「チビ」などの中傷,万引きや援助交際などの根も葉もないデマが飛び交う。そして,有害広告が張られている。

いまひとつに思える新聞各紙,官・業界の対策案

 重要なことは,学校裏サイト対策をどうするかである。

 このニュースを取り上げた新聞各紙が主張する対策案は,いずれも効果がいまひとつの内容であることが気になる。各紙で取り上げている識者の意見も加味して,主要紙の主張する対策案をなぞってみよう。

  1. 学校が即座に対応する(福岡県中学の例で,裏サイトの残酷さを授業・学年集会・父母会で繰り返し訴え,掲示板運営会社に連絡して掲示板を閉鎖させる)(日経4/16,朝日4/17)
  2. 中身の詳しい検証が必要だ(朝日4/16)
  3. 携帯電話各社は今年から,未成年者が携帯電話を購入する際,原則有害サイトへ接続できないようにした。あるいは,フィルタリングソフトの導入(朝日4/17,東京4/17)
  4. サイト管理人が裏サイトを監視し,中傷記事を削除し,学校へ連絡すべき(朝日4/17)
  5. 教師や親がネット上をパトロールすべき(朝日4/17,毎日4/16,東京4/17)
  6. 教員や保護者が子供の携帯電話利用に無関心だったから裏サイトが激化したのであり,情報モラルに詳しい教員の育成が必要だ(毎日4/16)
  7. 行政の対策には限界がある。パソコンや携帯を買い与える親は,子供と使い方を話し合うなど責任を持って教育し,また親子でルールを作るべきだ(産経4/16,東京4/17)
  8. 「ひとの心を傷つけて喜ぶ心さびしき者に聞く耳はなかろうから,中傷された君に言う。(中略)君はひとり,大人になればいい」(読売4/17)「子供が情報化社会で生きる力を伸ばすことだ。(中略)誹謗や中傷への耐性も身に付けて欲しい。」(東京4/17)

 こうした新聞各紙の対策案の他に,官や業界が対策に動いている。文科省は,パソコンや携帯電話のネット利用の制限(フィルタリング)機能を活用するよう保護者らに呼びかける方針で,他省庁と共同で裏サイト対策を進めることも検討するという(日経4/16)。

 一方,電気通信事業者が加盟する「テレコムサービス協会」など業界4団体は,インターネットの違法・有害情報の削除を強化する。弁護士らを交えて裏サイトを削除するか否か判断し,助言する「違法・有害情報相談センター」が2008年1月に発足しており,4月以降は削除などの迅速な対応をとる体制を整える(毎日4/17)。プロバイダーが「有害か,削除すべきか」など判断に迷うケース,あるいは業界団体に非加盟の中小企業が判断に迷い野放しとなるケースが増えているためである。

 しかし,いずれも心もとない。裏サイトの一掃が難しいことはわかるが,それにしても決定打に欠ける。

 そもそも個人情報の削除依頼に対して,サイト運営会社はサイト作成者の責任という考えで,応じない方針だ。削除要求をすると,不必要なほどの説明を求められるともいう。

根本策は「他人を思いやる教育」

 今回は,学校名が入っているサイトが調査の中心であり,実際には,それ以外にも無数の裏サイトがあるはずだ。しかも有害サイトは消えては生まれるので,補足困難だ。有害として網にかかるサイトは,限られる。有害サイトへの接続禁止やフィルタリング処置にも限界がある。いわんや,中身の検証などすべてできるわけがない,今さら検証などと悠長なことを言っていられまい。

 裏サイトの監視やパトロールのために教員をトレーニングしても限界がある。削除依頼をした教師がサイト上で特定されて,「**先生はサイトの中をかぎ回って,削除依頼をしている」と集中攻撃された例もあるという(東京4/17)。教員が発見した裏サイトが閉鎖されても,モグラ叩きのように別サイトが立ち上がる。そもそも匿名の書き込みだから,対応のしようがない。

 また,親子でルールを作ってその通り使われるなら,教育について悩むことなんて一つもない。「君ひとり,大人になれ」,「誹謗や中傷への耐性を身に付けて欲しい」などは,悩んでいる当事者の気持ちを全く理解しない,評論家という大人の何と勝手な押し付けだろう。

 この「大人の勝手な押し付け」を除いて,各新聞が指摘する,あるいは官や業界が進める対策は,心もとないにしても多少の対症療法的効果はある。副作用があるわけでもないので,大いに進めるべきだろう。しかし,一方で根本的対策を打たなければならない。

 ちなみに,中国では「パノプティコン効果」(囚人から監視者が見えないが,常に見張られていると思い込まされる)を利用したネット監視方法があるという(NEWSWEEK 2008年4月16日)。これは,ネット全体を監視するのではなく,ユーザーを怖がらせる方が効果的だとするもので,当局があらゆる手口で,ユーザーがサイトを探す気がなくなるように恐怖感を植えつけるのだそうだ。

 それはそれとしてまじめな話,根本策について情報セキュリティ大学院大学の内田勝也教授の話にヒントがある。「他人を思いやる教育を改めて徹底するいい機会ととらえるべきだ」(日経4/16)。しかし,「他人を思いやる教育」の方法について,具体的に語られなければならない。

 座学だけではダメだ。生ける自然を大切にし,人間を尊重する心を養うために,長時間の自然保護活動・福祉貢献活動などを学校教育に義務として取り入れることを提案したい。しかし,時間はかかる。遠大な計画である。それだけに,取り掛かりに急を要する。

 筆者が考える根本策の詳細については,後日触れたい。