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 SEが仕事をするときには様々な情報が必要である。それらの情報を上司のSEマネジャだけが持っていても何の価値もない。第一線で働く部下のSEが持って初めて価値がある。IT製品やアプリケーションの各種事例やトラブル情報,システム開発や提案にかかわる顧客の情報,システム化に対する顧客の部長や課長の考え方,自社の売り上げなどビジネスの状況,派遣法や個人情報保護法などの法律関係の情報,会社の方針や価格改定,ルールの変更などはSEが知っていてこそ初めて価値がある。

 それらの情報をSEや営業がどこまで知っているかは非常に重要である。それが彼らの仕事上の物事の判断の良し悪しを左右するからである。場合によってはSEが一つの情報を知っていたかどうかがビジネスを大きく左右することさえある。例えば,一つのトラブル情報や設計の注意点を知らなくて顧客に迷惑をかけたり,他社事例を知らなくて失注したりすることもある。たかが情報,されど情報である。

 だが,SEマネジャの中にはそんな情報を自分だけ後生大事に持って,部下に渡さない人がいる。きっと彼ら彼女らは「これは自分のものだ」と美しい誤解をしているのか,その重要性に気がつかないのだと思う。読者の中にもそんな経験をした方もおられると思う。筆者もSE時代同じような経験をした。そんなときにはいつも「このマネジャは何を考えているのだろうか」と思ったものだ。今回はこれについて述べる。

SEマネジャは情報のハブ

 販売活動やシステム開発などを行うのはSEや営業である。上司たるものそのSEや営業に関係する情報は積極的に与えるのは当たり前のことである。だが,SEマネジャの中にはそれが当たり前でない人がいる。そんな人は往々にして,SEが相談したときや何か問題が起こったときに「そんなことも知らなかったの!」などと,それを知らなかったお前は勉強がたりないぞと言わんばかりの態度をとるものだ。

 今さらそんなことを言われても部下は困る。読者の中にも,同じような経験をして「なぜ前もって言ってくれなかったんだ」と上司に不満を持った方もおられるだろう。もともと会社組織というのは,地位の高い人に様々な情報が集まり,地位の高い人がいろいろなことを広範囲に知っているものだ。各部門の担当者→課長→部長→事業部長→役員の順に,ビジネスから労務管理や法律関係まで様々な事項が報告され,社員や各部門に知らせるべき事項は逆順に降りてくる仕組みになっているからである。

 従って,SEマネジャが部下のSEより会社の方針やビジネスの状況,製品の適用事例,トラブル情報,顧客業界の動向,顧客の状況を広範囲に知っているのは当たり前のことである。仮にそれらの情報をSEマネジャが自分のみ持って部下に教えないとすると,部下は仕事上の物事を正しく判断をすることは難しい。こう考えるとSEマネジャは上下左右から来る情報のハブでもある。筆者は現役時代そう考えて主に次の5点を心がけ,部下との情報共有に努力した。参考になればと思い,次にそれを紹介す る。

(1)ビジネスや顧客に関する情報は必ず部下に渡す

 SEマネジャは,会社のトップや営業マネジャ,担当営業から,ビジネスや顧客に関するいろんな情報を聞く。当時,筆者はそれらをできるだけSEに伝えていた。例えば,会社・営業部門のビジネスの状況や顧客の状況,彼らが顧客訪問時に聞いたシステム開発や提案に対する顧客の意見,顧客の人事といった類の情報である。また、筆者自身が顧客訪問したときに感じたことや顧客から得た情報も,必ずSEに話した。「あのテストのやり方は,この点を気をつけろよ」とか「お客様の誰々が○○の件はこう言われたよ」とか「△△課長が君を褒めていたよ」とかいったことだ。特に、顧客から褒められたことをSEに伝えると,彼ら彼女らは喜んだものだ。

(2)SEには他の顧客のシステムに関わることやトラブル情報なども教える

 SEは1~2件の顧客のシステムの状況やトラブル情報しか持たないが,SEマネジャは全顧客のそれを知ることができる。ある顧客のシステムの状況やトラブルなどの情報をほかのSEに知らせると効率的な仕事ができるし,同様なトラブルを未然に防げる。筆者は当時そう考えて,SEにはほかの顧客の情報を積極的に知らせた。

(3)社内のマネジャ会議で聞いた話も全て部下の渡す

 SEマネジャは週次・月次の部門のマネジャ会議にでる。時には会社全体のマネジャ会議にも出席する。筆者はそんなときは必ずメモを取って,部下に話してもよいものは部下に説明していた。会社や部門のビジネスの状況・方針・動向,会社ルールの変更,プロジェクトのトピックス,IT製品やアプリケーションの各種事例,人事など諸々の事項だ。特にビジネスの状況・方針・動向は,多くの社員にとって会社や部門が今何を問題視し,何をやろうとしているのか気になるものである。SEマネジャの中には,それに無関心で「君たちはそんなことは知らなくてよい。与えられたことだけやればよい」と言わんばかりの姿勢でいる人がいるが,それでは部下は付いてこな い。

(4)社内の関係部門などから聞いた情報も部下に渡す

 筆者は関係部門から入手した情報は,関係する部下に必ず渡していた。例えば「この製品でこんな問題が起こった。こんな設計は危ない」などいうトラブルにかかわる情報や「○○部門の△△プロジェクトでこんなシステムを開発している」などほかのプロジェクトの情報とか「○○部門でこんなシステムを提案している」など事例の情報だ。SEにとって,その情報は何かのときに役立つものだ。

(5)会社からマネジャあてに来る情報も部下に渡す

 SEマネジャあてに来る情報,例えば派遣法など法律関係や会社の新規ルール,価格変更,顧客や協力会社との契約事項などは,必ずSEが分るように説明していた。現在はイントラネットなどで全SEが見られる情報も増えているが,SEマネジャにのみ来る情報もあるはずだ。そんな情報は,SEマネジャがきちっと解説してSEに教えることが重要である。

思い切って情報はすべて部下に渡す

 以上色々述べたが,これらをきちんとやると,部下は仕事がやりやすくなるし,部下とのコミュニケーションも良くなる。ただ,注意すべきは情報は単に部下に渡せばよいというものではないことだ。そのSEに関係のない情報を無闇に渡してしまうと,部下の仕事の邪魔になる。個々のSEの仕事にかかわる情報のみを渡すという取捨選択が必須である。

 また,SEマネジャは上司や会社にいろんな事項を報告をする。例えば,プロジェクトの状況や今後の計画,勤務時間や研修など労務管理的事項などだが,それらについても「この件はこう報告した」と部下に知らせることが重要だ。それによって部下は組織目標を理解し,上司と一体感をもって所定の目標達成に向けて頑張るからである。

 筆者は,以前のブログで「SEマネジャは部下に使われるマネジャになれ」と主唱したが,今回の「情報は部下がもってこそ…」もそれに大きく関係する。なぜなら「情報は部下がもってこそ価値がある」と考えるSEマネジャは部下に仕事を任せるし,部下を主役にして仕事をするからだ。逆に「情報は自分のもの」と考えるSEマネジャは部下に仕事を任せないし部下を使おうとする。

 従って,SEマネジャが情報をどう考えるかは極めて重要である。SEマネジャの方は「思い切って情報はすべて部下に渡す」。ぜひそれを実践してみてほしい。部下とのコミュニケーションも一段と良くなるし,仕事を任せられた部下は責任感をもって生き生きと働くはずだ。

 「情報は部下がもってこそ価値がある」。これが今日の一言である。