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 初めまして,弁護士の松島です。私は現在,弁護士として活動していますが,もともと大学では理工学部に在籍し,大学を卒業した後は電機メーカーでエンジニアとして勤務していました。大学の研究室では,医学用の画像処理に関する研究に従事し,企業に就職した後は,マイクロプロセッサの開発や,電子商取引に関するシステムの開発等に従事していました。

 このような過去の経験から,弁護士となった後も,インターネット上の紛争やシステム開発をめぐるトラブル,特許権や著作権をめぐる問題など,エンジニアとして以前従事していた業務と比較的密接に関連するIT分野の事件を,企業からご相談を受けて担当させていただいています。そこで,この連載では,特にIT企業の方向けに,世の中でトピックとして取り上げられている話題や,普段よくご相談を受ける問題を中心に,IT企業が直面する法律問題を取り上げて,それぞれの裁判例の動向,問題への対処方法などをお伝えしようと考えています。

 今回からは数回にわたって,著作権の間接侵害をめぐる問題を取り上げます。近年,インターネットを利用した動画共有サイトや録画予約サービスといったITビジネスに関連して,著作権の間接侵害と呼ばれる問題が注目を集めています。まねきTV事件,録画ネット事件,ファイルローグ事件,MYUTA事件,選撮見録事件,ロクラク事件などご存知の方もおられると思います。これらの事件では,著作権の間接侵害が問題になりました。

 録画予約サービスは,例えば,下図のような仕組みになっています(図1)。ここで,IT企業はユーザーにテレビ番組録画システムの機能を提供し,ユーザーから使用料等の名目でその対価を得るとします。

図1●テレビ番組録画予約サービスの概要
図1●テレビ番組録画予約サービスの概要

 このとき,テレビ番組を録画(複製)する主体がユーザーだとすれば,自宅のDVD/HDレコーダーでの録画(複製)と同じように著作権法30条の私的使用に該当するため,著作権の侵害にあたらないと考えられます。しかし現実の裁判では,テレビ番組録画システムを提供したIT企業が,著作権侵害の主体と認定される事案が少なくありません。

 録画用パソコンに保存(複製)する行為の主体が,IT企業であるとすると,録画用パソコンにテレビ番組を複製した段階で,テレビ局の「放送」について複製権(著作権法98条)を侵害し,かつ,テレビ番組が複数のユーザーからダウンロード可能であれば送信可能化権(同法99条の2)を侵害したことになります(注1)

 では,なぜ最終的に録画予約の指示を出すユーザーではなく,システムを提供するIT企業が著作権侵害の主体と認定されることが多いのでしょうか。これには,“カラオケ法理”と呼ばれるカラオケにおける著作権侵害の判例が大きな影響を与えています。そこで次回は,カラオケ法理のおける最も重要な判決であるキャッツアイ事件を解説します。

(注1)複製権,送信可能化権など著作権法を構成する権利の詳細については,文化庁のサイトなどで参照できます。