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 前回は,我々のところにプロジェクトマネージャ(PM)研修に訪れている桧山に,ヒントのカードを使った思考法を説明しました。

 桧山は,初めて大規模なプロジェクトを管理することになり,プロジェクトマネジメント…,特にヒューマンマネジメントに関するノウハウ,テクニックを学びたいと先輩PMに話を聞いてまわっていました。そこで,私は彼にカードを使ってマネジメントのノウハウを教えることにしたのです。

 仕事上の戦略,戦術を考えるときには,ヒントがあった方がより速く思いつきます。人間は過去に覚えたこと,経験したことのうち,脳が有用と感じたものを長期記憶として保存しています。しかし,とっさには,それを引き出すことができないと言われています。

 そこで,思い出すきっかけとなる「ヒント」を使うのです。前回は「友好関係を構築するための方法」を考えるために,以下のカードを桧山に渡して,説明をしました。

問2と解決のヒント
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 今回も,“仕事に役立つ7つの科目”の「(5)思考力」に関する「速攻思考」がテーマです。最後にPDFファイルで,今回紹介する「芦屋式 思考力トレーニングカード!)」を用意しましたので,会社の研修,教育にご活用いただければと思います。

「対立しやすいPM」はプロジェクトを疲弊させる

芦屋: では,3日目の講義を始めよう。まず問題…,君はPMにはどんな能力,スキル,知識が必要と思うか?
桧山: いろいろですね。問題解決能力とか,情報収集力とか。論理性とか,批判的に考える…,クリティカルであることとか。
芦屋:

そうか…,結局,なんでも大事ということか…。抽象的で絞れていない感じがするが,その中で一つだけあげるとしたらどうか?

桧山: うーん。どうでしょうかね。みんな大事じゃないのかな? 芦屋さんは?
芦屋: 僕なら意見調整力だな。
桧山: 意見調整力?
芦屋: プロジェクトマネジメントで必要なスキルのひとつに意見調整力がある。意見調整とは,プロジェクトの利害関係者の話,意見を聞いて,運営に活かしていくことと僕は定義してる。簡単に言うと,人の話を聞いてYes,Noを判断していくことだな。もし,僕にPMに必要な能力がなくて,神様がひとつだけ能力をくれると言ったら,僕は高い意見調整力がほしいな。
桧山: なぜですか?
芦屋: 僕は意見の調整を失敗することが一番怖いからだよ。いいか,桧山,PMがつぶれる原因の多くは,他人の批判だ。上司,部下,関係部門,顧客…,他人と対立して調整できないまま,しだいに包囲されてつぶれていく。
桧山: どういうことでしょうか?
芦屋: いいか,桧山。誰でも自分の考えというものがある。自分の考えを相手に受け入れられれば満足し,受け入れられなければ不満が残る。ただし,相手に受け入れられない理由が納得できるものであったり,自分の意見よりもよい考えを相手から説明されれば,それでも納得できる…,不満が残らないんだ。
桧山: それは,そうですね。
芦屋: しかし,相手に意見を言って,相手から無視されたり,文句言われたり,納得する説明を受けることができなければ,不満が募って,モチベーションが下がるんだ。そして,次第に攻撃モードに変わっていく。これが,人間関係が悪いという状態だな。
桧山: なるほど…。でも,上司と部下の関係ように,支配力を持っている人は部下の意見調整をしなくても,さほど大きな問題にはならないのではないでしょうか?
芦屋: そうだな。そこには人事権,命令権,支配権があるからな…。部下がいくら不満を持とうが,力で部下を黙らせることもできる。でも,それは,支配権のある部下やプロジェクトメンバーとの関係に限定されるものだ。