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 「日本のITベンチャーの良さとNECの強みを組み合わせることで、海外進出の可能性を高められる」。

 NECの岡田高行執行役員・システムソフトウェア事業本部長は、2008年6月に帳票ソフトのウイングアーク テクノロジーズ(東京都港区、内野弘幸社長)に資本参加(株式の10%を取得)した理由をこう話す。ミドルウエアをはじめとするNECのソフト事業の成長にはITベンチャーとの協業が不可欠と判断し、ウイングアークとの提携をその第一弾に位置付けた。

 決断の背景には、IBMやマイクロソフト、オラクル、SAPなど欧米の大手ITベンダーが、ミドルウエア分野を中心にソフト・ベンダーのM&A(合併・買収)を加速させていることがある。例えばIBMは、この2年間で約50社を買収している。

 だがこれまで、NECのビジネスモデルは「作って売る」(岡田氏)という自前主義だった。垂直統合のメインフレーム時代はそれで成長できたが、水平分業のオープン時代を迎え、そのやり方は通用しなくなってきた。結果、ITインフラを構成する主要ミドルウエア製品の多くが欧米製品になり、日本のITベンダーは欧米製品の販売代理店になってしまった。NECも例外ではない。

 もちろん、NECは自社製品の海外販売を試みている。だが、ソフト販売の輸出実績は今でもゼロに近い。しかもこの10年余りの間、守りに入って開発投資を抑えてきた日本の大手ITベンダーのご他聞に漏れず、有望なソフトを市場に投入できなかった。この状況の打開策が、国内ITベンチャーとの関係強化というわけだ。

 一方、優れた製品を持つ日本のITベンチャーにも、悩みがある。やはり海外進出に挑むものの、販売力や資金力などの問題からグローバルで通用するまでには至らないのだ。そこでNECの登場である。「とんがった技術や製品を持つITベンチャーと組み、NECの人や金、販売網といったリソースを活用する」(岡田氏)ことで、海外進出の突破口を開く。


「M&Aより、穏やかな資本参加で行く」

 当のNECは、自社開発する製品分野を絞り込む。具体的には、運用管理、セキュリティ、サーバー実行環境、情報管理、コラボレーション、開発環境の6つのミドルウエア分野である。これ以外のソフト製品には直接手を出さず、ITベンチャーを支援するという形でカバー範囲の拡大を図る。

 「(海外展開を)NECだけでやるのは限界がある」と岡田氏は語る。ITベンチャーが手掛けるような、年間十数億円程度の小規模な事業にNECが直接投資することは、確かに得策ではなくなっている。そのことは、欧米ITベンダーがM&Aを加速させている現状にもはっきり現れている。

 ただし、NECは欧米ITベンダーと同じようなM&A作戦はとらないという。90年代に海外経験を積んだ岡田氏ではあるが、「日本ではM&Aよりも、穏やかな資本参加のパートナーシップのほうがいい」と判断しており、ITベンチャーの自主性を尊重する方針をとる。

 NECはソフト事業の2ケタ成長を計画している。「(ソフトの)サービス化に向けた新しい枠組みも考えられる」(池田治巳システムソフトウェア副事業本部長)としており、今後もITベンチャーとの協業を拡大する考えだ。

 NECグループのソフト技術者は、海外拠点も含めると約4000人程度になるという。その一部でも、提携先のITベンチャーの支援に本気で取り組み、ソフトやサービスの共同開発や販売にこぎつけられるか。海外進出の可否はそこにかかっているのではないだろうか。