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 たった1日の講座で、初対面の受講者に満足してもらうのは、なかなか難しいことです。今回は、私の10余年の講師経験から、講座を成功させる秘訣をいくつか紹介しましょう。ちょっと姑息なテクニックもありますが、講師をされている方の参考になれば幸いです。

安心してオレについて来い

 講座の第一声として、講座の目的と内容を示し、講師の自己紹介をしましょう。仕事の経験や持っている認定など、この講座の講師として自分がふさわしいことを示すのです。嘘はいけませんが、初対面の受講者にインパクトを与えるには、多少大げさに自己紹介した法がよいでしょう。私は、以下のような自己紹介スライドを使っています。

◆◆◆◆◆ 講師の自己紹介 ◆◆◆◆◆
矢沢久雄(やざわ・ひさお)
1961年5月5日 栃木県足利市生まれ 丑年の牡牛座 AB型
(株)ヤザワ 取締役社長
グレープシティ(株)アドバイザリースタッフ
電脳ライター友の会 会長兼事務局長
会津大学講師
企業セミナー講師(ITEC、ITA、SEplus、LAlabなど)
Microsoft MVP for Visual Programmer - Visual C#
ソフトウエア芸人の部屋(http://itpro.nikkeibp.co.jp/watcher/yazawa/)

 生年月日、出身地、血液型を示すのは、講師に親近感を持ってもらうためです。「オッサンなのに子供の日生まれなんだ」「田舎者なんだ」「ウシに縁がある人だなぁ」「AB型って変わり者が多いんだよね」などと思ってもらえるでしょう。仕事は、現職だけでなく、職歴を示してもよいでしょう。どんな仕事をしてきたかを話してください。ブログをやっている人は、URLを教えてあげましょう。

 講座は、受講者の前提知識に合わせて進めなければいけません。講師の自己紹介が終わったら、受講者にも自己紹介させて前提知識を確認しましょう。人数が少ない場合は、一人ひとりに自己紹介してもらいます。名前、現在の仕事、講座の参加目的、講座で取り上げてほしいこと、講座のテーマに関する知識の有無など、講師が知りたいと思うことをホワイトボードに書いて、受講者に答えてもらいましょう。人数が多い場合は、グループを作り、グループごとに答えをまとめてもらうとよいでしょう。

質疑応答で終わるのが最高の講座だ

 講師が一方的に説明するだけの講座は最悪です。そんな講座なら、本を読んで勉強しても同じだからです。だからといって「質問ありますか?」と聞いても、手を挙げてくれる受講者は滅多にいません。「こんな質問をしたら恥ずかしい」とか「自分の質問で皆の時間を使っては申し訳ない」と思うからです。質問しやすい雰囲気を作ることも大事ですが、発言ではなく紙に書いてもらうと上手くいきます。「ここまでの質問を紙に書いてください」と言えば、ちゃんと書いてくれます。もしも「質疑応答に時間がかかったら講座の進行が遅れてしまう」と思うなら、それは間違いです。極端な話、もっとも成功した講座とは、受講者の質問に答えるだけで1日が終わるものでしょう。受講者のための講座だからです。講師の独演会ではありません。

 講師と受講者の質疑応答だけでなく、受講者同士が意見交換する時間も取りましょう。部屋が狭い場合は隣の人と意見交換させ、部屋が広い場合は机をグループ形式にして意見交換させます。講師は、何かを説明するときに、自分にとってわかりやすい例を示します。ただし、この例が、すべての受講者にわかりやすいとは限りません。隣の人やグループで、他にどんな例があるか意見交換させましょう。質疑応答と意見交換ができることに、講座に参加する意義があります。

 休み時間は、質問を受け付ける絶好のチャンスです。講師は、休み時間も退室せず、質問を受け付けましょう。講座中に遠慮して質問できなかった人も、休み時間なら質問してくれます。受講者に「ここまでの説明わかった?」と声をかけてあげましょう。

給料もらってるのだから寝るな

 「噺家殺すにゃ刃物はいらぬ、アクビのひとつもあればいい」と落語家が言いますが、これは講師も同じです。講座中にアクビをされると「この説明ではダメなんだ」とヒヤヒヤします。もしも受講者に寝られたら「本当にゴメン」という気持ちになります。「給料もらって講座に参加しているのだから寝るなんてあるまじき行為」だと言う人がいるかもしれませんが、私は、受講者をアクビさせたり寝させたら、講師が悪いのだと思います。

 受講者を眠くさせないコツは、いくつかあります。まず、休み時間を頻繁に入れてください。1時間に1回、10分ぐらい休み時間にするとよいでしょう。講座中にときどき「後20分で休み時間にしますからがんばってください」のように、残り時間を示すのも効果的です。休み時間が終わって講座を再開する時も「さあ、また1時間がんばってください」と言いましょう。1日の長い講座も1時間ずつだと思えば、気が楽になるはずです。

 講座の内容に変化を付けることも大事です。講師の説明は、長くて15分が限度でしょう。これ以上長いと、受講者は眠くなってしまいます。講義、質疑応答、意見交換、演習といった出し物を15分きざみを目安に切り替えるとよいでしょう。そういえば、寄席でもだいたい15分きざみで出演者が変わります。出し物も、落語だけでなく、いろもの(漫才や奇術など落語以外の演芸)が登場します。

 最も眠くなる時間は、昼休み明けの1時間です。昼休み明けは、いきなり講義から始めるのではなく、意見交換や演習を行うことをお勧めします。意見交換や演習のタイミングでないなら、10分ぐらいの遊びをするとよいでしょう。ストレッチ体操や発声練習など、講師の持ちネタを披露してください。私は、持ちネタがないので、突然以下のスライドを見せて、クイズ大会を行っています。講座のテーマに関係したクイズなら、堂々とできます。賞品を出せば、大いに盛り上がります。高い賞品を用意する必要はありません。コンビニで駄菓子を500円分ぐらい買って袋詰めにしたものがお勧めです。「賞品をもらった人は、皆に分けてあげてください。次の休み時間までは、特別にお菓子を食べながら受講してOKです」と言えば、眠くさせずに進行できます。

終わりよければすべてよし

 ほとんどの講座で、終了時にアンケートを取ります。アンケートの内容は、多くの場合に「十分に理解できたか」「講師の教え方はよかったか」「教材の内容はよかったか」の5段階評価と、「今後受講したいテーマは何か」および「自由意見」です。このアンケートの結果で、講師が評価されます。受講者に満足していただければ、次の機会にも同じお客様から講師依頼をいただけます。リピートしてもらえることが、講師にとって最大の喜びです。

 「理解できない」「教え方が悪い」と評価されないように、常に受講者の理解度をチェックしながら講座を進めましょう。初めて学ぶことは、1回聞いただけで理解できるものではありません。講座の中で、復習やまとめの時間を取りましょう。「やさしすぎた」と評価されるのは、それほど悪いことではありません。

 教材(市販書ではなく講師が作成した資料)に誤りがあると、評価が下がります。事前に十分にチェックしましょう。もしも、講座中に誤りを見つけた場合は、きちんと訂正してください。口頭ではなく、ホワイトボードに訂正内容を書きましょう。教材を部分的に飛ばしても、評価が下がります。飛ばす理由を説明してください。もしも時間が足りずに教材を網羅できなくなっても、決してあせらないでください。あせって駆け足で説明をすると、評価が下がります。「もともと多めに資料を用意していたのだ」という顔で、堂々としていればよいのです。

 今後受講したいテーマが空欄というのは、寂しいものです。今後どのような学習に発展すればよいか、講師が例を示してあげましょう。受講者が新人さんの場合は、「報告書というものは、Done(何をしたか)よりToDo(これから何をするか)が重要です」とアドバイスするとよいでしょう。一生懸命ToDoを書いてくれます。

 自由意見でドキッとさせられるのが「ホワイトボードが見えにくかった」「部屋が寒かった」といった意見です。これらを書かれたら、かなりまずいです。「そんなことも言えない雰囲気の講座だったのか!」と評価されてしまうからです。こういった意見を書かれないように、「見えますか」「寒くないですか」と頻繁に受講者に声をかけてあげてください。

 アンケートが書き終わったら、講座を締める言葉を言いましょう。「1日お疲れ様でした」「ありがとうございました」「予想以上に皆さんの理解が早いので驚きました」など、講師の感想を述べてください。ノリがよい受講者なら、1本締めをしてもいいでしょう。1本締めをすると、「よ~お」の掛け声で1回手を打った後に、自然と拍手が湧き上がります。皆で拍手すると、とても嬉しい気分になります。講師も受講者も、講座が成功したように感じます(かなり姑息なテクニックですが)。

 以上あれこれテクニックを紹介してきましたが、一番大事なことは、常に受講者を見ることです。講座の主役は、講師ではなく受講者です。講師は、受講者のために自分ができることを精一杯やってください。必ずよい評価が得られるはずです。