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 セキュリティ関連サービスやSI事業を展開するラックホールディングス(LACHD)が2008年8月、システム販売会社を傘下に収めた。ITサービス業の中上位グループ入りを目指すLACHDが、その一環として持ち株会社制に移行したのは2007年10月のことだ。傘下の事業会社は、セキュリティ事業のラックとSI事業のエイ・アンド・アイ システム(A&I)、保険システム開発の保険システム研究所の3社である。

 LACHDの2007年度(2008年3月期)の業績は、各社の決算期の違いを加味すると売上高198億円、経常利益14億円超になり、ITサービス企業としては中堅である。そのLACHDが今回、新たに傘下に収めたのはアイティークルー。民事再生法の適用を申請したニイウス コーの屋台骨だったディーラー事業を継承するため、LACHDが設立した事業会社であり、2008年8月に営業活動を開始したばかりだ。ディーラー事業の買収交渉にあたった岡良貴特別顧問は、「顧客や社員にインタビューしたところ、ディーラー事業はまだ生きていると分かった」と、買収に踏み切った理由を語る。

 これに伴って、LACHD傘下の企業の総従業員数は約1700人に達した。今期(2009年3月期)の売り上げ予想は、220億円から405億円に上方修正している。ディーラー事業の年間売上高(2008年6月期)は244億円(売上総利益33億円)程度になる見込みであり、岡氏は「売上高500億円は視野に入った。三柴元社長は1000億円を見据えている」(岡氏)と語る。売り上げ拡大は、新しいサービスを生み出すための研究開発や人材育成を強化するために必須だという。

 岡氏は「ディーラー機能を取り込むことで、コンサルティングからハード/ソフト販売、システムの構築/開発/運用までをワンストップで提供できる体制が整う」と買収のメリットを説明する。特に評価するのは、IBM製UNIXサーバー「pシリーズ」に関するSEサービス力にある。「pシリーズの販売シェアで、ニイウスは他を圧倒していた」(岡氏)。三菱東京UFJ銀行など有力ユーザーにSEを差し向け、高い評価を受けている。

 こうしたユーザーとの関係が、LACHDには魅力的に映ったのだろう。ちなみに金融分野を得意とするA&Iは、みずほ銀行との取引はあるものの三菱東京UFJ銀行との取引関係はなかった。

日本IBMとの協業に期待かける

 だが、売上至上主義に走ったニイウス コーは架空循環取引など、財務内容に重大な問題を抱えており、その解明はまだなされていない。「確かに、ディーラー事業の買収という案件は、当社の体力から言えば大き過ぎる。だが、民事再生法により裁判所がきれいな形にしてからの事業譲渡になるので、心配はしていない」(岡氏)。それでも、肝心の取引先との関係を維持できるかという問題は残る。肝心の取引先とは、ハードやソフトの調達先である日本IBMと、最大顧客の三菱東京UFJ銀行である。

 ニイウスは日本IBMとの緊密な協業で事業展開してきたシステム販売会社だ。それだけに、「日本IBMは必死になって支援会社を探し求め、10数社に声をかけたようだ。確約の紙(契約書)こそないが、日本IBMの金融部門などが全面的に支援してくるはず」と、岡氏は語る。

 とは言え、買収金額は77億3000万円。当初、84億3000万円で落札したが、「その後の調査で劣化した部分が7億円あった」(岡氏)という。純資産が18億円弱あるので、のれん代は60億円前後になる。10年償却の予定なので、年間6億円はディーラー事業で見込む売り上げの3%程度に相当する金額になる。決して少ない額ではない。

 LACHDはそれ以上の収益を期待しているだろう。しかし取引先との関係継続はどうだろうか。SEサービスだけで200億円超の売り上げを確保するのは難しい。IBMのUNIXサーバーやメインフレームの売り上げも要る。そのためか、アイティークルーの経営陣は社長の米田光伸氏をはじめ、日本IBMの金融部門出身者らで固めである。日本IBM出身でA&I社長を務めた岡氏も取締役に就いた。「乗り切るには、この体制しかない」と判断したという。

 もちろん優秀な技術者らが他社に流れずに新会社に移籍してくることも必要だ。現状では、技術者200人超、営業約60人を含む361人が新会社に移ったという。LACHDの案件のうち、顧客との直接取引は7割超にもなるという。ここに「顧客層を広げられる土壌がある」(岡氏)と期待する。

■変更履歴

 公開当初、LACHDの2007年度(2008年3月期)の売上高を203億円としていましたが、正しくは198億円です。また、「年間6億円はディーラー事業で見込む営業利益の3%程度」としていましたが、正しくは「売り上げの3%程度」です。ディーラー事業の年間売上高および売上総利益は、2008年6月期の業績です。以上、お詫びして訂正・補足します。本文は修正済みです。 [2008/09/03 11:36]