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 システム開発の委託契約を締結し,引き渡し期限が経過しているにもかかわらず,ベンダーがユーザーにシステムを納品できない---。こうした状況では,ユーザーがシステム開発委託契約を解除して,支払い済みの請負代金の返還をベンダーに請求することがあります。この請求に対して,ベンダー側にはどのような反論が可能なのでしょうか。今回は,ユーザーによる請負契約の解除をめぐる攻防を検討してみようと思います。

ユーザーによる契約解除には3種類ある

 契約において特約を規定していない場合,ユーザーがベンダーとのシステム開発委託契約(請負契約)を解除する方法には,大きく分けて以下の3種類があります。

  1. ベンダーの債務不履行を前提とする民法541条又は543条に基づく解除
  2. ベンダーによる仕事が完成していないことを前提とする民法641条に基づく解除
  3. 請負契約における瑕疵(かし)担保責任として認められている民法635条に基づく解除

 1,2の方法は,請負人となるベンダーの仕事が完成していないことを前提として利用する制度です。これに対し,3の方法は請負人となるベンダーの仕事が完成していることを前提として利用する制度となります。今回は,1,2の方法に言及します。

 まず1の「民法541条又は543条に基づく」ユーザーの契約解除について検討してみましょう。

 民法541条は,ベンダーが自らの帰責事由により期限までに債務を履行しない場合,ユーザーが,相当の期間を定めてその履行の催告をしても,その期間内に履行がない場合に契約を解除できる,とするものです。一方,民法543条はベンダーが自らの帰責事由により義務の履行を不能とした場合に解除できるとするものです。

民法541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において,相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし,その期間内に履行がないときは,相手方は,契約の解除をすることができる。
民法543条
履行の全部又は一部が不能となったときは,債権者は,契約の解除をすることができる。ただし,その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでない。

 民法541条が想定しているケースを「履行遅滞」,民法543条が想定しているケースを「履行不能」と呼びます。いずれのケースでも,ベンダーの帰責事由が認められる場合に,ユーザーによる請負契約の解除が認められるという点は共通しています。

 典型的な事例では,納期までにシステムを開発できなかった場合に,納品できなかった理由(帰責事由)は,ベンダー側にあるのか,それともユーザー側にあるのかという形で争われることになります。

 ベンダーの帰責事由は,義務違反があった場合に認められるものです。従って,ベンダーとしては,システム開発委託契約においてどのような義務を負担するのかを把握しておくことが重要になります。

 契約書や民法に明示されている義務はもちろんのことですが,オーダーメイドのシステム開発委託契約においては,契約書等に記載されていなくても,ベンダーに課される義務があります。しかも,この義務に違反したかどうかが裁判の結果に強い影響を与えることがあります。以下,ベンダーやユーザーが負担する義務を,実際の裁判例で見てみましょう。