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 大和証券グループ本社が、ITサービスの外販ビジネスを3年後に現在の2倍の約1000億円に引き上げるという計画を実行中だ。同社CIOの中村明取締役兼常務執行役員が明らかにしたもの。そのために、業務提携を含めた積極的な投資をしていくとしている。

 その一環として、100%子会社の大和総研の体制を見直した。2008年10月1日には、大和証券グループ向けのシステムを手掛ける「大和総研」と、外販ビジネスを展開する「大和総研ビジネス・イノベーション」に分割する。それぞれの役割を明確にするのが狙い。分割後の規模は、両社とも売上高約500億円、社員約700人程度になる。

 中村氏は「証券業のIT部門の役割と、ITの外販ビジネスを1社で手掛けることに課題が出てきた」と分割理由を説明する。数年前から、証券ビジネスを支えるIT活用と、ITサービス産業の中で事業展開する2つの側面を、同時に満たせる方法を模索してきたという。その答えが分割だった。

 だが、多くのユーザー企業は情報システム子会社に両方の機能を持たせた体制を続けている。親会社向けで培ったIT活用のノウハウを生かして外販事業を展開するためだ。だが中村氏によると、外資系や台頭するネット証券との競争が激化する中で、革新的なIT活用をするには、社内に強力なIT部門を抱えることが急務になってきたという。

 外資系証券やネット証券は、100%子会社を設立せずに社内にIT要員を抱えており、特に外資系は数千人規模のIT要員を配置しているという。「迅速に戦略的なシステムを作り上げるには、内製化に近づける必要がある」(中村氏)と分割を決断した。

 収益からみても、両者の機能は異なる。IT部門は言わばコストセンターなのに対し、外販ビジネスは収益の最大化がミッションになる。「証券業における競争優位を確立するためのIT活用」を目指すIT部門に対し、外販ビジネスの狙いは「ITサービス産業における競争優位の確立」になる。「経営理念の異なる事業を1社で実現するのは難しい」(中村常務)。

上流工程への集中が外販ビジネスの成長を鈍化させた

 外販ビジネスの状況をみると、実はこの10年間で売り上げは50%しか伸びていない。また売上高500億円と言えば、ITサービス業界では60位ぐらい。「中位グループ」の位置付けであり、大きな影響力を持つ存在とは言えない。

 ただし、「外販ビジネスにおける1人当たりの売り上げは7000万円近いし、1人当たりの経常利益率も10%を超えている。いずれも上位グループと肩を並べられる実績だ」と中村氏は胸を張る。これは顧客企業と直接契約するプライム・コントラクターとして上流工程に集中してきた結果だ。しかしそれが一方では売り上げ拡大を遅らせるという「先詰まりの原因」(同)になった。

 そこに、外販専業会社を作る狙いもある。金融の監督省庁との関係もあるようだが、その戦略は業務提携の推進、ターゲット市場の絞り込み、SI事業の拡大、の3つになる。

 大和総研ビジネス・イノベーションには、証券向けの金融ソリューション事業本部、通信向けなどのエンタープライズSI事業本部、健康保険組合向けの社会保険システム事業本部を置く。各部門が担当のマーケットでシェアを拡大させる。データセンターを活用したSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業にも乗り出す考えもある。

 SI案件も積極的に取りに行く。そのため、大和総研ビジネス・イノベーションの開発子会社となるDIRシステムテクノロジーの陣容を、今の400人から大幅に増やす計画だ。今後、業務提携などによるマーケット拡大にも取り組むという。「これまで、こうしたことに積極的ではなかったし、投資もしてこなかった」(中村氏)という同社だが、戦略を切り替えた。外販ビジネスの経常利益率は10%以下に低下するだろうが、それでも売上規模の拡大を目指していく考えだ。

 ※本コラムは日経ソリューションビジネス2008年8月30日号17ページ「ニュースレポート」に加筆したものです。