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 「ソフト開発を国家の中核産業と位置付け、政府も産業界もその発展の促進に取り組んでいる」。中国・上海にある華東理工大学の居徳華教授は、2008年10月下旬に都内で開催された「IPAフォーラム2008」(主催:情報処理推進機構)で、中国のソフト産業育成策を熱く語った。

 かつて製造業の強化に力を入れてきた中国は、今や知識集約型サービス・ビジネスの育成へと大きく舵を切り、その代表であるソフト産業に照準を定めている。

 政府や市も様々な育成策を打ち出している。IT産業全体を年率平均17.6%、ソフト産業を同30%で成長させ、2010年にはそれぞれ10兆元、1.3兆元にする。GDP(国内総生産)の10%を稼ぎ出す産業にするのだという。

 具体策としては、「情報産業省」を設置し、北京や上海など22カ所にソフト会社の集積地である「ソフトパーク」を開設。そのうち6カ所をソフト輸出拠点として位置付ける。

 ソフト会社にはCMMI(capability maturity model integration)の取得を推奨しており、取得資金の50%を援助する。3~5年で、ソフト会社1000社にCMMIレベル3以上(そのうち300社はレベル5)を取得させる計画だという。

 2008年3月時点で、CMMIを取得済みの企業は448社。既にインドの311社、日本の180社を上回っている。ただし、レベル5の取得企業はまだ34社。5年以内に、インドの151社と同水準にするという。ちなみに日本は14社である。

 国内各地での取り組みも活発化している。例えば北京は「ソフトの都」、西安は「アウトソーシングの中心」、大連は「国際的なソフトモデル都市」などといった目標を掲げている。

 江蘇省の無錫は、2010年までに社員2000人規模のソフト会社を100社作り、3000万ドルの輸出獲得を狙っている。「無錫では、300万ドルのアウトソーシング契約を獲得すると、政府が100万ドル近くの支援をしてくれる」(居氏)。

 アウトソーシングでは大抵、料金を顧客から月額で受けとる。人件費やシステム構築など、初期費用の膨らむ当初は、サービス提供側の持ち出しになることも多い。そこで早い時期に資金援助するということらしい。

同じことをやっても勝てない

 アウトソーシングなどに必要なIT技術者の育成も推進している。「インドに追いつくには、人材が重要。ここがボトルネックになっている」と居氏。5年以内に多国籍企業100社を誘致し、アウトソーシングをインドから中国に切り替えさせる計画で、そのために国内に10カ所のアウトソーシング拠点を設ける。

 これが実現すれば、250万人がアウトソーシング関連の仕事に携わることになるという。そこで「能力強化のために欧米に人材の育成方法を学ぶ」(同)。ソフトウエア・アーキテクチャや要求工学など11分野の知識体系を整備し、誰もがソフト開発の知識を習得しやすい仕組みにする。

 中国は2015年に向けた次の5カ年計画を策定している。現在の第11次5カ年計画(2006~2010年)では,電子政府を構築するための予算を計上したり、組み込み用OSやLinux、データベース、財務パッケージなどの開発資金を提供したりしている。

 これからは、ソフトを輸出するだけでなく、国内の需要も伸びてくるだろう。「外国への依存度を低くする」(居氏)狙いもある。中国政府がソフト製品を調達する際には、国産製品を優先的に購入する方針だという。

 日本は中国が策定中の5カ年計画に注視する必要がある。そして中国とは別のところに力を入れるべきだ。


 編集部から: 本コラムを始め,筆者の最近の記事を基に編集した書籍「IT産業再生の針路~破壊的イノベーションの時代へ~」(日経BP社)を2008年12月に刊行します。