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 月並みだが、今年は「変化」をキーワードにIT業界を見ていこうと思っている。なにも米国のオバマ次期大統領にあやかったわけではない。昨年の秋以降に起こったこと、そして今年起こることを「景気後退」ととらえるより、「変化」ととらえる方が精神安定には良いし、なにより前向きにビジネスを発想できるからだ。

 考えてみれば、昨秋以降「100年に一度」の経済状況に陥ったのには、ITが片棒を担いでいる。企業情報システムの整備が進んだことで、企業の経営者が事業環境の変化に気付くタイミングが早くなった。実際にリーマン・ショックのはるか前、昨年の年頭には、日本の経営者の多くが景気の変調に気付いていた。どうやら直近の景気の山は2007年10月らしいから、ほぼリアルタイムに事業環境の変化を把握していたわけだ。

 表面的には強気を装っても、営業現場などから上がってくる数字がおかしい。で、徐々に投資を絞るなどの対応をとりつつ、業績悪化に備えたリストラ策を準備していた。そこにドッカーンと金融クラッシュが襲った。多くの企業が迅速に対応する。新規投資の凍結、人員削減などを猛スピードで実施し、危機を乗り越えようとする・・・。

 全世界で同時に多くの企業がそんな“最適行動”をとれば、景気は“自由落下”となる。それに、これはどなたか大企業のトップが指摘していたことだが、インターネットの普及で大不況という情報が瞬時に全世界を駆け回るようになった。そのため多くの消費者が生活防衛という“最適行動”に走る。そうした諸々の結果、超高速で景気が後退するという、信じられないような激変に見舞われることになった。

 そう言えば以前、ニューエコノミー論という“傲慢な理論”が幅を利かせたことがあった。いわく「情報システムが整備されたことで、個々の企業が在庫調節などで最適行動がとれるようになった。その結果、景気の循環は消滅する」。実際は全くの正反対。そもそも、景気というマクロレベルのアナログの波をミクロレベルのデジタル化で制御できると考えること自体が、大きな誤りだった。

 おっと、「前向きにビジネスを発想」と冒頭で宣言しながら、不景気な話を書き連ねてしまった。注目したいのは、急激な景気後退という「変化」を目の当たりした企業経営者の反応だ。「現場で起こっていることを、もっと素早く知りたい」、「トップダウンで迅速に決断するための情報が欲しい」などといったコメントを耳にしたり、読んだりする機会が増えたのだ。

 情報システムを整備してきたが、それでもリーマン・ショック以降の環境の激変を捉えきれなかった。もう少し情報の鮮度や質を上げられないのか。ITに対して、そんな思いを語る経営者は確実に増えている。それは現在進行形の事態への対応のためでもあるし、競争環境の激変への備えでもある。また、将来やはり超高速で進むであろう景気回復の波をとらえるためでもある。

 だからITベンダーも、「変化」をキーワードにソリューションを考えてみる価値がある。それがBI的なものかもしれないし、別なものかもしれないが、そこに様々なビジネスの可能性があるだろう。

 そもそも、今日の事態を「後退」ととらえるか、「変化」ととらえるか、心の持ち様、ビジネスマインドが全く異なってくる。「後退」ととらえれば、貧乏神が寄ってくるような提案しかできないだろう。逆に「変化」ととらえれば、自分自身のビジネスの「変革」にも発想が及ぶ。やはり今年は「変化」をキーワードにビジネスを組み立てるべき時である。