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 SaaSはシステム販売会社の脅威なのか。ハードやソフト販売が減れば、業績に大きな影響を及ぼすのは間違いない。自らSaaS事業を立ち上げられるならまだしも、SaaSベンダーのサービス商品を扱ってもわずかな手数料しか入ってこない。もちろんPCサーバーなどのハード・ベンダーへの影響も小さからぬものがある。販売会社に依存した拡販だけに頼っていたら伸び悩むだろう。

 こうした中で、システム販売会社が無関心ではいられない発表があった。ERPソフトなどをSaaSで提供する米ネットスイートと米ヒューレット・パッカード(HP)が2008年11月、HPの販売店を対象とする特別紹介パートナー制度の立ち上げで合意したことだ(関連記事)。

 SaaS専業ベンダーとハード・ベンダーがSaaS市場をめぐって協業する初めてのケースだという。ネットスイートは日本やイギリス、オーストラリアなどへと事業範囲を拡大させていくと表明しているだけに、日本のシステム販売会社は同社の動きに注視する必要があるだろう。

 ネットスイートのザック・ネルソンCEOは2008年12月に来日、「どのアプリケーションもSaaSへと向かっている。(調査会社)IDCによると、自社運用よりSaaSのほうが3倍も伸びている」と力説した。

 同社の2007年度(12月期)の売上高は,前年度比62%増の1億854万ドルに達した(ただし、2390万ドルの純損失を出している)。2008年度第3四半期の売り上げは前年同期比44%伸びており、36四半期連続の売上げ増を達成している。ユーザー数も世界で6000社を超えた。その多くは中堅・中小企業で、ERPやCRM、Eコマースをサービスとして利用しているという。

 今回ネットスイートが発表した内容は、HPの販売店がネットスイートの中小企業向けSaaSを販売することで、HPと販売店それぞれに手数料が入るというもの。ユーザーが契約を更新すれば、ネットスイートは新たに手数料を支払う。しかし、ハード・ベンダーのHPにメリットはあるのだろうか。

 実はネットスイートは自社データセンターにHP製サーバーなどを大量導入しており、ユーザーが増えればデータセンターに設置されるサーバーも増えるという関係にある。HPにとっては、新たな販売ルートという見方もできる。

「既存の販売ルート」

 だが、既存の販売ルートであるシステム販売会社にとって、SaaSは収益モデルを崩壊させる脅威の存在である。ある販売会社の役員は「SaaSはいままでのシステム販売の付加価値がなくなることを意味する」と語り、新たな付加価値を作り出していく必要があると頭を痛める。ハードの価格競争も激化する一方だ。

 例えば日本HPは2009年1月8日、x86サーバーの価格を平均20%値下げした(関連記事)。その実態は、定価を実勢価格に近づけるためのものであり、販売会社の裁量は小さくなるだろう。

 ハード販売による売り上げの落ち込みを食い止めるのはもはや難しいことを認識し、発想を転換するしか道はない。あるシステム販売会社の役員は「SaaSを利用してやる、という前向きな気持ちになること」と説く。

 システム販売会社の中でも、中堅企業をメインターゲットに全国販売網を持つ大手であれば、SaaSを中小企業開拓のツールとして活用し、売り上げを増やすチャンスを作れる可能性もある。ただし、営業担当者が1社1社を訪問する方法では儲からないので、Webを活用するなど新しい売り方にチャレンジすることが求められる。

 半面、中小企業をターゲットとするローカルなシステム販売会社は苦戦を強いられるだろう。自社のアプリケーションと組み合わせて提案するといった工夫が必要だ。ユーザー企業との協業の道も探るべきだろう。黙っていたら、淘汰されるだけだ。中小ソフト開発会社も、会計などの開発案件が激減すれば同様にダメージを受けるだろう。

 しかし、従来型ビジネス・モデルの崩壊は常に、新しい勢力の台頭を意味する。そこに名乗りを上げることだ。オフコン時代、富士通やNEC、日本IBMなどは販売会社の育成に力を注いだが、オープン・システム時代の到来とともにメーカーと販売会社との関係は希薄になった。

 最近でも、ハード・メーカーが中堅・中小企業市場攻略を目的にシステム販売会社との関係を再構築する動きがある。だがシステム販売会社はメーカーだけを頼るのではなく、自ら打開策を探し出すべきである。