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 クラウドコンピューティング時代、日本のITベンダーは生き残れるだろうか。野村総合研究所の城田真琴主任研究員は「システム構築から運用、提供形態、利用方法に大きなインパクトを与える」とSIビジネスの変革を予想する。ハードやソフトといったIT資産を所有から共有する流れが加速すれば、システム構築に重点を置いたITベンダーは厳しい経営環境に追い込まれるのは間違いのないこと。
 城田氏は、顧客獲得のための差別化を生み出すプロセス、いわばミッション・クリティカル・システムのコアな部分以外はSaaSやPaaSといったIT資産共有の利用形態に進むと読む。収益源泉とする大手ITベンダーは縮小するSI市場をめぐって受注競争を激化させ、利益を圧迫する。機器販売の依存度の高いITベンダーは収益構造の転換に迫られることになる。

 中小・中堅ITベンダーはもっと厳しい状況に追い込まれる可能性がある。大手ITベンダーが内製化率を高めるし、米アマゾン・ドット・コムなどがクラウドを武器に日本市場開拓を強化しているからだ。

 城田氏は、中小・中堅ITベンダーが脅威に対抗するには、クラウド環境を積極的に活用することだとする。まずシステム開発環境としてクラウドを活用することを勧める。サーバーを購入しなくても、最新の開発環境をすぐに作り上げられるし、設備投資を大幅に抑制できるからだ。一歩進めて自身の基幹系システムに使い、SaaSやPaaSをはじめとするクラウドの活用ノウハウも蓄積する。それから、ユーザー企業の社内システムとクラウドサービスとの連携など、新規需要を取り込む。大手ITベンダーの下請けから脱却するチャンスととらえるのだ。

自らクラウド提供者になる選択肢も

 一方、大手ITベンダーは自らクラウド提供者になるという選択肢が考えられる。もちろん富士通やNEC、日立製作所、さらにはNTTなど通信事業者も、ITインフラを提供する事業を展開してきた。大手ITサービス会社もITインフラを差別化の材料としてきた。だが、こうしたITインフラは提供までの時間がかかり、コストも決して安価とはいえない。

 クラウドは規模の経済が働く事業だ。アマゾンのEC2はその典型で、日本のITベンダーが提供するサービスとコストに歴然とした差がある。城田氏は「日本のレンタルサーバーとコストを比較すると、一番安いところでもアマゾンの2倍になる」と言う。なぜか。日本は頑強なサーバー、高価なミドルウエアを使用しているのに対して、アマゾンらは安価なサーバーとオープンソースソフトを活用しているからだ。

 クラウド用データセンターに設置するサーバー台数も1ケタ以上違う。日本のデータセンターはせいぜい数千台規模で、東京・大手町など都心に配置する。対して、米国勢は数万台、数十万台で、土地の安い地域にセンターを設ける。風力や水力など安価な電力、豊富な水を確保できるところを選ぶ。コストで米国勢に太刀打ちできないのは自明だ。
 日本のITベンダーは、地の利を生かして事業展開を続けられるだろうが、ユーザーは高いものを使わされることになる。安価で柔軟なデータセンターをいかにして構築するか、その答えを早急に出す必要があるだろう。

※本稿は「日経コンピュータ」2009年1月1日号「田中克己の眼」を再録したものです。