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 かなり前だが、ある食品メーカーの人から製品開発のやり方について話を聞き、とても感心したことがある。インスタントラーメンの製品化の場合、開発責任者は宣伝担当者だそうだ。新製品の企画・開発という最上流から宣伝部門が取り仕切る。で、何が言いかと言うと、製品開発に行き詰まり感のあるITベンダーは、その手法を真似てみたらいかがかということだ。

 この話を聞いた時、私は「へぇ」と驚いてしまったが、いま思えば少し恥ずかしい。驚いてしまったのは、単に私にコモディティ(日用品)に対する知見がなかったからだ。技術的には成熟したコモディティ分野では、品質なんかでは差がつかない。つまり技術力より、マーケットを熟知した商品企画力やブランド力がモノを言う。

 インスタントラーメンをはじめ食品や飲料は、毎年大量の新製品が登場する。そして短期間で消えていく。特に、コンビニの棚の確保を巡る戦いは熾烈で、ほとんどの製品が棚の確保もできないまま敗れ去る。だから、プロダクトアウト的に新製品なんか作れない。宣伝担当者の主導で、客が振り向いてくれそうなコンセプトを考え、それに沿った製品を作り、告知し、うまく販路に乗せないといけないのだ。

 つまり、当たり前の話だが、インスタントラーメンの世界ではトータルなマーケティングの一環として製品開発がある。今でこそ少なくなったが、日本のITベンダーにはかつて、こうしたマーケティングのイロハが分かっていない人が大勢いた。そういう人は、まず開発した製品ありきで、それをどう売るかを考えるのがマーケティングだと思っていたのだ。

 まあ、かつてはIBMが新しいコンセプトを次々と打ち出してITマーケットを引っ張り、日本のITベンダーは事実上IBMについていくだけだったから、これは仕方がない話。それに以前のITマーケットは、次から次へと新しい技術が登場したテクノロジー・ドリブンの世界。まず製品ありきで、それから売り込み方を考えることも可能だった。

 で、ご存知の通り、今やITプロダクト、特にハードウエアは一部のハイエンド製品を除き、その多くがコモディティ化した。インスタントラーメンと同じになったとまでは言わないが、要素技術だけではライバル製品と差が出ない。マーケット・リーダーと同じ製品を作っていては、価格競争で追い込まれていくだけだ。

 「あのね、インスタントラーメンと違って、PCやPCサーバーなんかでは製品に差が出ないよ」との声も聞こえてきそうだが、本当にそうだろうか。この前、「ハードウエア・ビジネス激変の予感、日本のITベンダーはどうする?」でも書いたが、HPやデルは“特定の超大口顧客向けのコモディティ製品”なるものを製品化している。コモディティ部品の組み合わせでも、新たな付加価値は生まれてくるものである。

 日本のITベンダーも、宣伝担当者かどうかは別にして、マーケットを本当に分かる人が製品開発を主導するべきだろう。もっと言えば、それぞれの製品の企画・開発から販売まで一貫して責任を持つ厳格なブランド・マネジャー制を取り入れてみてはどうか。個々の顧客のニーズに応えるソリューション路線に逃げ込むのもよいが、ボリュームを取るマーケットを自ら創れないようでは、メーカーとしての未来は暗い。