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 「ハードがコモディティ化しても、革新することはまだまだある。決してあきらめないことだ」。

 NECのITプラットフォーム事業を長らく担当した小林一彦顧問は、ハード技術者にこう発破をかける。携帯電話、パソコン、さらにはサーバーやストレージまでコモディティ化しつつある中で、技術者が次にやるべきことをなかなか見つけられないことに危機感を覚えたのだ。

 小林氏は4年ほど前から、NECのベテラン技術者(部長クラス)が参加する「MOT研修会」のアドバイザをしている。参加者に対し小林氏は「成功も失敗もあるが、一生のうちチャンスは10回ほど訪れる。それをものにするかどうかだ」と、チャレンジの大切さを説いてきた。

 MOT研修会に参加するNEC社員は「キーマンともいえる部門のエースであり、これからそれぞれの事業を引っ張っていく人材」(小林氏)である。その彼ら・彼女らが固定観念にとらわれ、新しい発想ができなくなれば、NECが生き残るための道を探し出せなくなるかも知れない。

 サーバー製品の心臓部はインテルとマイクロソフトに押さえられ、コモディティ化も進んでいる。販売競争の激化で、売り上げは減っている。そうした中で技術者に付加価値を求めると、ともすれば既存の製品をサービスと連携させるアイデアばかりが出てくるという。

 しかし「それでは既存製品の延命策にしかならない」と小林氏は技術者たちを諭す。「新しい発想でチャレンジしなければ、NECは(メーカーではなく)国内のサービス会社になってしまう」と心配する。

サービス頼みの風潮に異議あり

 かつてNECが電話交換機で世界トップ3だった時代があった。電話交換機の好調は永遠に続くかと思われたが、そこに米シスコシステムズがルーターやスイッチなどを売り出した。従来型の電話交換機はそれに取って代わられ、急速に市場が冷え込んでいった。残ったのは「進化しなければ、生き残れない」という教訓である。

 そこにMOT研修会の狙いがある。例えば、技術者である参加者に「今取り組んでいる技術をどうビジネスに結びつけるか」を考えさせる。自分の担当分野で市場ニーズを分析し、どう商品化すればどの程度のビジネス規模や利益が出せるかを算出させる。「プレゼンテーションはうまくなってきたが、まだ大きな成果は出ていない」と小林氏は語る。

 小林氏が「サービスばかりに付加価値を求める」傾向を問題視するのは、新しい発想が生まれにくくなると考えるからだ。例えばサーバーの省エネ対応1つとっても、冷却装置や電源、ファンなどの物理的な改良のほか、ソフト技術とハードの機能を組み合わせてプロセッサの稼働効率を高めるといったやり方もあるし、データセンター側での対策も考えられる。

 だが実際には、期待したほど多様なアイデアは出てこないという。「技術が細分化されたことで、隣の人のしていることが分かりにくくなっているからだ」と小林氏はみる。同じ領域の技術を長く担当しているうち、新しい領域が見えにくくなったり、他部門との交流が希薄になったり、といった影響もある。

 MOT研修会のもう1つの狙いはここにある。異なる領域を担当する技術者らが集まるので、同じ課題を出しても例えばサーバー担当者とデータセンター担当者では異なる解決法を考える。一緒に議論することで、「なるほど、そんな考え方もあったのか」となる。