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 中堅ソフト会社、日本システムディベロップメント(NSD)の冲中一郎社長がここ数年、社内の技術者に要求していることがある。「NSDの強さとは何なのかを再考せよ」ということである。

 NSDと言えば、38期連続黒字決算、営業利益率も年々改善し、2008年3月期には20%を達成するなど、同業もうらやむ業績を誇る企業である。だが冲中社長は現在、業種・業務分野や技術分野ごとにスペシャリスト制度を設けたり、技術者のキャリアパスや処遇ポリシーをより明確なものにしたりと、様々な改革を推進中だ。

 ソフト開発会社の多くは、これまで技術者の教育に十分な時間を割いてこなかった。NSDも例外ではなく、業績が右肩上がりの時代にはどうしても人員の確保が優先になる。現場から催促され、極端に言えばユーザーに言われるままに対応するような状況では、「何かやりたくてもできなかった」(冲中氏)という。

 今、ソフト開発会社を取り巻く経営環境は大きく変化し、案件は減りつつある。営業利益率20%を誇るNSDも例外ではなく、2008年度は減収減益(前年比で売上高は5.0%減の415億円、営業利益は15.3%減の74億円)となる見込みだ。ユーザー企業からは単価低減を求められ、案件ごとのリスク管理もますますシビアになる中、NSDでも組織の生産性向上は緊急課題である。

 ユーザーごとにバラバラだった開発手法をできる限り統一したり、人材の配置を見直したり、といった措置はもちろんとる。ただしそれだけでは、縮小均衡に陥る恐れがある。冲中氏は逆に「今こそ、NSDの付加価値を高める好機」として、技術者の教育や処遇にメスを入れることを決断した。

「自覚無き成功」は長続きしない

 同社の特色であり強みと言われるのは、非常に長期にわたり契約しているロイヤルティの高い顧客が多いことである。「10年、20年と同じ現場に通っており、ユーザーの社員と同様にみられるほどになっているSEも少なくない」(同)という。

 こうしたSEのほとんどが、ユーザー企業でミッション・クリティカルなシステムの開発・保守・運用に深く関与している。ユーザーから「いなくなってしまったら困る」と言われるほど深く食い込んでいる。「不採算案件は同業他社に比べて圧倒的に少ない」(冲中氏)というのも、このことと無縁ではないだろう。

 理想的とも思える状況だが、冲中氏が心配していることがある。それは「自覚のなさ」である。冲中氏によれば、顧客に食い込んでいるSEが「自分たちはユーザー企業とNSDの関係を支えている存在だ」ということを自覚していないケースがままあるのだという。また、NSDがどのように顧客に深く食い込んで事業を成長させて来たかを知らない社員もいるという。冲中社長は「自身の提供する付加価値がどういうものなのか、考えることがなくなっているのではないか」と心配する。

 教育や処遇制度にメスを入れるのと併行して、2007年末から表彰制度を開始した。対象は、ユーザーから「絶対に必要」「あの人は凄い」と言われる技術者である。さらに2009年4月に開催する創業40周年の大会では、SEが「こうした行動がユーザーに喜ばれた、高く評価された」といった経験を自ら発表する機会を作る。

 客先に常駐するSEが、自分の会社に業務上の成果をフィードバックできる機会はそう多くないだろう。「こんなすごい人がいる」「こんなよいやり方がある」といった情報を、表彰式や発表会などの場を設けて、半ば強制的に引き出すことは、NSDの「自覚ある成功」に向けた第一歩と言える。冲中氏は4月1日付で代表取締役会長になるそうだ。NSDの強さを明確にし、将来の姿を描くことに力を注いでほしいと思う。