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 これまで,中国,ベトナム,インドと,日本からのオフショア・アウトソーシング先について,現地の目線でビジネスの現状や日本企業の強み/課題などを述べてきました。ただし,これらの国でアウトソーシングを進めているのは,日本だけではありません。言うまでもなく,米国や欧州諸国のほうが一足早くアウトソーシングを進めています。今回は,世界で最も進んだアウトソーシング関係にある「米国-インド」の関係を軸に,そこから感じとれること,学ぶべきことを述べていきたいと思います。

突出したアウトソーシング大国「米国」のIT市場

 米国の調査会社のレポートによると,世界をリードしている米国企業のアウトソーシング/外部サービス支出額が,2011年にはIT市場における総支出額の30%以上を占めると言われています。電気通信関連のコストを上回って,最大のシェアを占めることになります。

 さらに,米国企業のITサービスのうち,海外へアウトソーシングしているものは現在15%程度ですが,2013年には25%に,2018年には40%に増加するという報告があります。米国企業は,業務内容に応じてインド,中国,東南アジア,南米,東欧など,最も適した国や地域にアウトソーシングを拡大しています。海外のさまざまなスキルを持つ人材を,安い人件費で利用して,可能な限りコストを削減するグローバルソーシングは,さらに拡大していく見込みです()。

図●世界中に広がる米国からのアウトソーシング先

「ルピー高」「高度人材の不足」--成長したインドが抱える新たな悩み

 米国の良きパートナーであるインドは,世界中に存在するオフショア・アウトソーシング先の中で,ソフトウエア/ITサービス分野のトップに君臨しています。インドにおける2007年度のソフトウエア/ITサービス輸出の収益は400億4000万ドル(約4兆円)を達成し,前年度より約30%増加しました。

 その一方で,アウトソーシング元およびアウトソーシング先の各国の社会経済環境が変化し,リスクも増大しています。世界最大のITサービス輸出国であるインドは,金融危機による米国景気後退の影響を避けることが難しい状況です。インドのソフトウエア/ITサービス輸出のうち,およそ6割(2兆数千億円)が米国向けと言われているからです。インドのサービス輸出が年率3割以上の成長を続けてきた原動力は米国市場であるため,米国市場の景気変動がインドのIT業界に大きな影響を与えることは間違いありません。

 インドの通貨「ルピー」が高くなっているのも懸念材料の1つです。経済が成長していけば自国通貨は強くなります。過去,日本は経済成長の過程で急激な円高に直面しました。そのときは日本の産業界全体が共通の危機意識を持ち,海外生産などを進めて乗り切りました。では,広い国土,多様な人種,大きな人口を抱えるインドは,どのように対処していくのでしょうか。そこが課題であり,注目すべきポイントです。

 さらに,ルピー高に負けない高品質なソフトウエア/ITサービス輸出を拡大していくには,十分な技術スキルを持つ優秀な人材を増やさなければなりません。しかし,現状のインドでは優秀な人材が不足し,早期育成が急務となっています。とりわけ,プロジェクト管理者や設計技術者の養成には時間がかかるところに問題があります。インドは,地域により言語,文化が大きく異なる多民族国家です。大量の技術人材を特定の都市へ集めて養成することが難しいのです。

 当初,インドのIT産業は,チェンナイ,デリー,バンガロールなどが中心でしたが,インド政府はIT人材養成,成長拡大のため,プネやハイデラバードをIT都市として成長させる政策をとりました。現在は,さらに別の都市群でIT人材育成を進めようとしています。大国インドが,IT人材を集積・育成する都市をどれだけうまく増やしていくかは今後の課題です。