PR

 ある外資系ITベンダーの幹部の人によると、今やクラウドコンピューティングはユーザー企業の経営者に“刺さる”話題だそうだ。特に金融機関など大手企業の経営者は敏感で、「ぜひ詳しい話を聞かせてほしい」と身を乗り出してくるそうだ。その話を聞いて一瞬「うそっ!」と思ったが、よく考えてみると極めて当たり前のことだった。

 ここで、「世界的な不況で・・・」と話を続けると、少々月並み。もちろん、経営者がクラウドに関心を持つのは、コスト削減に頭を悩ませているからという面も大きい。ただ単純にコスト削減だけなら、CIOなりシステム部長に研究・検討させれば済むことだ。普段は関心のないIT分野の話なのにクラウドの話題に思わず身を乗り出すのは、そこに時代の潮目の大きな変化を感じているからだ。

 大体において経営者は“流行り言葉”に敏感である。システム部門の人たちだけでなく、ITベンダーの営業担当者までもが「またお決まりのバズワードか」と笑っている時も、経営者はその意味を知ろうとしていたりする。少し前に「Web 2.0」が一世風靡した時、ある金融機関の経営者は関連書籍を部下にも読ませ、事業に与える影響を分析させていたそうだ。

 経営者はもちろん、およそビジネスパーソンは時代の変化、潮目の変化に敏感でなければ生きてはいけない。そのあたりの嗅覚の最も鋭い人が経営者へと勝ち上がるとの仮説に立てば、経営者がWeb 2.0などの流行り言葉に食い付くのは極めて当然と言える。今やWeb 2.0という言葉は口にするのも恥ずかしいくらい廃れたが、そのWeb 2.0的な現象がネットだけでなくビジネスや社会を規定し続けているのは、紛れもない事実だ。

 だから、クラウドについても然りである。今や多くの人が「クラウドコンピューティングはパラダイムシフトである」と感じているわけだから、経営者が強い関心を持つのは当たり前のことと言える。では、ITベンダーとしては、何をすればよいのか。簡単な話だ。クラウドを“マーケティングワード”として徹底活用すればよい。

 なんせ、顧客の経営者が話を聞きたがっているのだ。顧客の最高意思決定者に会うのに、これほどのチャンスはあるまい。クラウドの潮流の本質について解説し、顧客のビジネスへのインパクトとITインフラの変革の必要性を説き、自社のクラウド戦略を語れば、相手の経営者は感心するだろう。顧客とのリレーションはさらに深くなり、将来の大きな取引につながる・・・。

 こんなふうに書くと、「そんなこと、当たり前じゃん」と笑う人と、「できるわけないじゃん」と嘲る人がいるはずだ。もちろん前者は外資系ベンダーであり、後者は日本のITベンダーだ。日本のITベンダーの場合、自らのビジョンを持ちコンセプトを煮詰めていく作業が極めて苦手だから、顧客の経営者との会話という誤魔化しの効かない場で、クラウドを語るなんて怖しくてできない。

 でも、それをやれないから、時代の変わり目、潮目の変化の時期に日本のITベンダーは後手を引き続けてきた。これまではそれでもよかったのかもしれないが、クラウドの場合、ITベンダーに熾烈な椅子取りゲームを強いる。顧客に自らの言葉でクラウドを語れるようにならないと、顧客の中に座るべき椅子を失ってしまうかもしれない。