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 「つい最近までSEが足りないと言っていたのが、夢だったのかと思う」。ある大手ITサービス会社の幹部がそう述べたという。ITサービス業界でも2009年3月期の決算が出そろったが、軒並み減収減益。同じITベンダーでもメーカーとは異なり、さすがに“草食系”だけのことはある。少なくとも大手では大幅な赤字転落は見られない。ただ、その裏で例のメカニズムが働いているのが容易に想像できる。

 例のメカニズムというのは、これまでも何度か書いた“内製化”というやつだ。SIerなどのITサービス会社は、好況期にはビジネスにレバレッジを効かせる。外部、つまり下請け企業を利用することで、自社のリソース以上の仕事を獲得し売上拡大を図る。例えば仕事量の半分を外部に出せば、倍の仕事を受注でき売上は倍増する。レバレッジは2倍。誰にでも分かる計算だ。

 ユーザー企業のIT投資は好況期に集中する。だから仕事はいくらでもある。自社のリソース(技術者)を増やすだけでなく、レバレッジ係数を高めれば、理論上は売上をいくらでも増やせるわけだ。もちろんレバレッジ係数を高めれば、プロジェクトの失敗リスクも高くなるが、それはプロジェクト管理能力を高めることで対応する。ITサービス会社の経営者が常々口にするように、まさに「人がすべて」である。

 レバレッジを高めておくことは、不況への“備え”としても有効である。案件が減り自社の技術者を遊ばせると、彼らの人件費はそのまま販管費になる。そこで内製化となる。以前なら外部へ出していた仕事を社内の技術者にアサインする。つまり、レバレッジ係数を低くするのだ。今、多くのITサービス会社が事業部や子会社の再編に取り組んでいるが、要は組織のくくりを大きくして、技術者の異動を容易にし、内製化の取り組みを強化しようとしているのだ。

 ただし内製化によるレバレッジの減少は、下請け企業に犠牲を強いる。心ある経営者は「申し訳なく、辛い」と語るが、ユーザー企業のIT投資に大きな波がある以上、現状のSIビジネスは“非情の論理”が組み込まれた多重下請け構造なしには成り立たたない。しかも、非情の論理に徹したとしても、内製化を進めれば原価率は高まる。ユーザー企業の料金引き下げ要求と相まって、経営は苦しくなるだけだ。

 さて、こうしたSIビジネスの構造を維持したままで、好況時に多くのITサービス会社の経営者が語った「若者に魅力ある産業への脱皮」など可能だろうか。以前から言われていることだが、今こそ「作らないビジネス」へ経営モデルを変えていくしかない。「今は生き残ることに精一杯」と言う経営者もいると思うが、“クラウドの時代”が目前に迫るなか、生き残るためにも道はそれしかないはずだ。