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 “ミニ富士通”では困る、ということか。富士通が上場子会社の富士通ビジネスシステム(FJB)を100%子会社化するそうだ。上場を廃止してFJBを完全統制下に置くことで、中堅企業向け市場に特化させるという。うーん、中堅企業に富士通製品を売るパートナー企業は、蜂の巣をつついたような騒ぎになるだろう。でも狙いは正しい。問題は、富士通自身が“自己否定”できるかどうかだが、さて・・・。

 確かに富士通にとってFJBをどうするかは、ここ数年来の懸案事項だった。一応これまでも、年商300億円以上の大企業に対する営業は富士通、300億円以下の企業に対してはFJBという役割分担があった。しかしFJBは「ディーラー」がオリジン、基本的に売上を追う会社だ。当然、300億円以上の大企業にも営業をかける。一方、富士通も300億円以下の企業に売り込んだりするものだから、同じ案件を両社で争うなんて光景は日常茶飯事だった。

 しかも、今やディーラーでは食えないから、ここ数年は顧客に課題解決策を提案するソリューションビジネスを志向してきた。実際に、ディーラー商売からソリューションビジネスへ転換できたかどうかは別にして、その方向は富士通が目指すところと同じ。FJBが上場企業として“正しい道”を歩めば歩むほどミニ富士通化し、市場で競合する“二つの富士通”という笑えない事態に陥りつつあった。

 もう一つ、これは富士通本体のほうの問題だが、中堅企業、あるいは中小企業に刺さる“タマ”がなかなか作れていない。パートナー企業にも販売してもらう商材の企画・開発は主に富士通本体で行っているが、富士通の“上から目線”では独立系ソフトベンダーの“コテコテ系パッケージ”と勝負できるような有力商材を生み出せないでいた。

 そこで今回、100%子会社化を機に、富士通本体の中堅企業向けの営業や商品企画機能を人員もろともFJBに移すことにしたそうだ。一方、FJBの大企業向け営業は富士通本体に移すという。中堅企業向けの商品企画をFJBに移すココロは、富士通よりは中堅企業のリアリティを知るFJBに“売れるタマ”の開発を任せようということ。これにより、FJBは富士通の完全統制の下、中堅企業に特化したソリューションプロバイダを目指すことになる。

 このようにトレースしてみる限り、富士通の決断は極めて合理的なデシジョンだ。なんでもっと早くにやらなかったのかと思う。ただ、富士通のパートナー企業はいったいどんな反応を示すだろうか。彼らはFJBや富士通、特にFJBとは個々の案件で競合関係になるケースも多い。中堅企業向けに特化し強化されたFJBの誕生には、内心穏やかならざるものがあるだろう。

 今後、こうしたパートナー企業に“タマ”を供給するのはFJBの役割になる。パートナー企業の動揺や反発をなだめられるかどうかは、まさに“売れるタマ”を提供できるかどうか、そして彼らの商圏を荒らさない仕組みを作れるかどうかにかかっている。組織やガバナンスをいじっただけで上手くいくとは思えないが、まずはお手並み拝見といこう。

 それと富士通自身はどうするのだろう。年商300億円って、実は区分けとしては何の意味もない。だから富士通とFJBの間で“相互侵犯事件”が続発してきたわけだ。これからの時代、グローバル企業とドメスティック企業で顧客を区分したほうが、はるかに合理的だ。

まあ、年商300億円以上の企業の多くはグローバルを志向するだろうから、富士通自身はグローバル対応を求める大企業のニーズに応えるべく、IBMやHPに伍してグローバル展開を今以上に強化しなきゃならない。そのために、きめ細かい対応が求められるドメスティック企業はFJBに任せる。今回のFJB完全子会社化がそんな決意表明でもあったのなら、これは結構面白いと思うが、いかがだろうか。