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 コミュニケーションについて議論するとき,よく「会って話すのが一番だよね」と言う人がいます。さて,みなさんは本当に一番の手段だと思いますか?

 その主張の根拠は,たいてい「会うことで微妙なニュアンスも伝わるから」ということなのですが,会って話したにも関わらず「言った,言わない」というトラブルが起こることがあります。明確に文章でやり取りしていれば防げたのに,会って口頭で済ませてしまったがために発生したトラブルです。

 もし,会うことで微妙なニュアンスが伝わり,誤解が解消されるのなら,なぜ世の中の夫婦はこれほどまでに夫婦喧嘩を起こし,大量の離婚を発生させるのでしょうか。相手の顔を見ると,感情的になってしまい,落ち着いて話ができなくなることだってあります。

 これらの事例から判断すると,大事なのは「会う,会わない」ではないように思います。

隣席の人にメールを出すのはおかしい?

 また,IT を使ったコミュニケーションの話をしていると,「横の席の人にメールを出すのはおかしい」という人もいます。席が近いのだから声をかければいいのに,なぜメールを使うのか,という意見です。この意見も一見正しいように思われますが,先ほどの例のように,明文化して会話の記録を残したほうがよいことだってありますから,一概におかしいとも言えないのではないでしょうか。

 そうなりますと,コミュニケーションする上で大事なことは何なのか。私は「言葉」を大切にすることだと思っています。

 人間同士のコミュニケーションの多くは,「言葉」を使って行ないます。その言葉の使い方がお互いで一致していなければ,意思の疎通を図ることはできません。

 例えば,「インターネット」という言葉を,Aさんは「Web サイト」のことだと認識していて,Bさんは「接続プロバイダ」のことだと認識していたとしたら,「我が社もそろそろインターネットをしましょう」という文章の意味はまったく違うものになります。言葉の意味を合わせておかないと,コミュニケーションは成立しないのです。

よいコミュニケーションは正しい「言葉」から

 また別の事例を挙げてみます。

 先日,某政治家が,某アイドル・グループのメンバーを「最低の人間だ」と批判したそうです。世間からそれは言い過ぎだろうという抗議を受けると,今度はその言葉を撤回し,「最低,最悪の行為だと言い換える」と言ったそうです。皆さんはこの言葉を聞いてどう感じたでしょうか。

 この政治家は,言葉の使い方を間違っています。「最低」「最悪」という言葉には,「もっとも望ましくない状態である」という意味があります。そうしますと,「最低,最悪の行為だ」ということは,「世の中にあの行為以上に望ましくない行為はない」という意味になってしまうわけです。そんなことはありませんね。もっと恐ろしい行為はいくらでもあります。

 コミュニケーションを円滑に進める上で重要なのは,「言葉」だと思います。言葉には意味があり,それがお互いで一致しているからこそ意思が伝わり,正しく使うからこそ正しく伝わります。

 みなさんも今一度,自分の言葉を見つめ直してみてはいかがでしょうか。「絶対にありえない」とか「みんなが言っています」とか,相手に誤解を生む言葉の使い方をしていませんでしょうか。よいコミュニケーションは,正しく言葉を使うことから始まると思います。