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 前回は,どの会社でも通用する仕事術を構成する7つの力のうち,「(4)交渉する」の前編を説明した。7つの力は以下の通りである。

(1)教える
(2)マネジメント
(3)仕事を頼む
(4)交渉する
(5)文章を書く
(6)褒める
(7)叱る

 特に立場の上の人との交渉術を身につけることは,大きな仕事を進めていくために非常に役立つ。前回は以下の内容を説明した。

・自分の部下や後輩といった「自分より立場が下の人」を動かすのは,それほど難しくない。立場が強い方(例えば,上司)は,弱い方(例えば,部下)をいざとなれば力ずくで動かすことができるからだ。

・これに対し,顧客や上司,目上の人などの「自分より立場が上の人」を動かすのは難しい。「部下が自分の企画を上司に納得してもらう」のは,「上司が命令して部下を行動させる」よりも困難である。

・立場の強い人と弱い人が仕事で対立した場合,立場の強い人が勝つ可能性は非常に高い。立場の弱い人が何も準備せず,自然体で臨んだとしたら,ほとんどの場合は立場の強い人に勝てない。

・「立場が上の人」を自由自在に動かせる能力があれば,仕事でこれほど役に立つものはない。

 立場が上の人を自由自在に動かすための仕事術が,「交渉を成功に導く7つのステップ」である。今回は,事例を使って7つのステップを説明することにしよう。

業務部門の課長を説得できず

 7つのステップの説明に入る前に,交渉が失敗に終わった事例を再度掲載する。この事例では,あるユーザー企業Z社がシステムを開発するにあたり,システム部の山本主任(仮名)が,事務部門の高山課長(同)に要件定義を依頼した。山本主任は,他部門の課長クラスに仕事を依頼した経験があまりなかった。

山本:早速ですが,このたび通信販売の販売管理・顧客管理システムを開発することが決まりました。会社の今後の成長シナリオに貢献する案件なので,販売業務部に要件定義を行っていただく必要があります。その連絡のために打ち合わせをさせていただくことになりました。それで,よろしいでしょうか。
高山:その件ね。企画部からうちの部長に連絡があって,昨日部長から聞いたけど,うちの課にはノウハウもないし,そんなことをしている時間もない。だから絶対に無理だと言っておいたはずだ。要件定義って,うちの現業とはまったく違う仕事だよね。新しいビジネスやシステムが必要なのは分かるけど,我々は現業を抱えている。余計な仕事を抱えたせいで,現業をミスしたら困るだろう?
山本:でも,これは会社の決定です。販売業務部が作業しないというのは,会社の方針に反していると思うのですが…
高山:でも,我々には無理だよ。会社の決定かもしれないけれど,うちの部門でやると決まったというわけではないだろう?…そもそも,君たちはシステムを作るのが仕事だろう? だったら,システム部でやればいいんじゃないか。
山本:(やや興奮気味に)何を言っているんです? そちらでやるべきでしょう。システム部だけでは,とてもできませんよ。
高山:なんだ君は,ずいぶん高飛車な言い方なんだな。課長や部長には苦情を言っておくからな。とにかく,システム開発はシステム部がやるべきことだろう? そっちでやってくれ。
山本:でも…
高山:忙しいので,申し訳ないがこれで失礼するよ。
山本:…

 結果的に,山本主任は高山課長を説得するのに失敗した。山本主任は,この交渉をどう進めればよかったのだろうか。