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 7月最後の週末,恒例の研究会旅行で丹後半島へ出かけた。例年なら梅雨明け後の安定した夏空が広がっている時期なのに,東京から4時間あまり電車を乗り継いで着いた天橋立駅は雨雲の下だった。東京,大阪,広島などから11人が集まった。先着していた人によると,私が到着する直前までどしゃぶりの雨だったという。

 幸いなことに,その後は空が明るくなって雨に遭うことなく観光できた。展望台で天橋立に背を向けて両足を開き,上半身を前に曲げて股の間から天橋立を見る「股のぞき」をやってみた。苦しいだけで,ふつうに見るよりきれいだとは思わなかった。

 天橋立は内海と外海を南北に隔てる3.6キロの松林の砂州だ。股のぞきで見ると,空に橋がかかっているように見えるので,その名が付いたという。北側から見るのが美しいというのが定説で,ほとんどの観光客は北側だけから眺める。我々はわざわざ両側の山から見比べてみた。南側の方がはるかに美しい。北からは見えない白い砂浜が見え,宮津湾が日本海へと広々とつながっていく,奥行きのある眺めがすばらしい。

 さて,今回はいかに分かりやすいプレゼン(あるいは話)をするか,をテーマにしたい。題材としてFMC(Fixed Mobile Convergence:固定電話と携帯電話の融合サービス)を取り上げる。

「分かりやすいプレゼン」は簡単

 7月某日,営業部門と製品開発部門の会議があり,筆者は開発側の一員として出席した。ディシジョン・ルームと呼ばれる立派な会議室には役員を筆頭に多くのメンバーが集まっていた。筆者は7月に実施したセミナー(関連記事)のエッセンスを紹介し,最後にまとめとして「売ってほしいのは三つです」とポイントとなるソリューションを三つ挙げてプレゼンを終わった。その途端,営業の責任者が開発部門の面々を見ながら,「分かりやすい。いつも,こう言う説明をしてほしい」と大きな声で言った。普段の開発サイドからの説明は分かりにくいと思っていたらしい。

 分かりやすいプレゼンをするのは簡単だ。三つのコツを知っておけばいい。それは,相手が「知りたいこと」を話すこと,相手が「分かること」を話すこと,「具体的に」話すこと,だ。

 開発部門には技術者が多い。どうしても技術の話が多くなりがちだ。しかし,技術は手段であって目的ではない。お客様や営業が知りたいのは手段ではなく目的だ。ソリューションや製品を採用することで「どんなメリットが得られるか」が一番知りたいことだ。知りたいこと以外をたくさん話しても,話が分かりにくくなるだけだ。相手が知りたいことは何かを理解し,「知りたいこと」に焦点をあてて話すことだ。

 相手が理解できないことを話したのでは分からないのは当然だ。相手が知らない専門用語を使ったのでは話にならないし,難しい技術の詳細にも言及しない方がよい。分かることだけを話す。当たり前と思われるだろうが,それが出来ていないのだ。相手の知識レベルや技術力を想定し,「分かること」だけを話す。

 抽象的な説明は分かりにくい。事例を示したり,経済効果をグラフ化するなど「具体的に」話すことだ。これで分かりやすくなるだけでなく説得力が増す。以下では簡単な例題としてFMCをいかに分かりやすくお客様に説明するか考えてみよう。

FMCのメリットとは?

 ここで言うFMCは,携帯電話事業者各社が提供しているサービスで,企業が契約している携帯(会社が社員に貸与している携帯)と企業のPBX配下の固定電話との間,携帯と携帯の間で内線番号による通話を可能にするものだ。会社の固定電話から外出中の人の携帯へ内線番号で電話したり,携帯から携帯へ内線で発信出来る。携帯電話事業者側で内線番号と携帯電話番号(080×××など)の対応付けをしているのだ。FMCの料金は定額で,契約した携帯,社内の固定電話間の通話がいくらかけても一定になる。

 FMCのメリットを挙げようとすれば,四つも,五つも挙げることが出来る。だが,お客様に分かりやすく伝えたいなら,一つか二つ,多くても三つくらいに絞るべきだ。あれも,これもとたくさん説明したのでは,どれが目玉なのか分からなくなるし,頭に残らない。こんな感じだ。

 FMCの一番のメリットは通話料の削減です。どの企業でも社員に貸与した携帯電話の通話料の高さに悩んでいます。その通話の多くは外部との通話ではなく,社員同士の通話なのです。FMCサービスを使うと社内の固定電話と携帯との通話も,携帯同士の通話も,いくらかけても定額なので安くなるのです。二番目のメリットは内線番号が使えることです。社内の固定電話から携帯にかけるときも,社員の携帯から別の社員の携帯にかけるときも,内線番号が使えます。電話をかける相手が社内にいようが,沖縄に出張していようが,内線でつながるのでとても便利です。

 知りたいこと,分かることを言っているのだが,通話料削減の具体性が弱い。筆者も会社から携帯を貸与されているが,外出中にメールのチェックで使うことは多くても,電話を使うことは少ない。内線通話が定額になっても,通話そのものが少なければメリットはない。本当に効果があるのだろうか? 疑問が生じれば調べて明確にすればいいのだ。