PR

 前回までは法律によるソフトウエアの保護という視点で解説してきましたが,今回は,ソフトウエアと密接に関連するデータベースの保護について検討してみようと思います。

1 著作権法上の保護を受けるデータベースとは「情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」

 データベースについては,著作権法第2条1項10号の3,同法第12条の2に以下のとおり規定されています。

著作権法第2条1項10号の3
データベース 「論文,数値,図形その他の情報の集合物であつて,それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。」
著作権法第12条の2
1 データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは,著作物として保護する。
2  前項の規定は,同項のデータベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。

 上記のように,データベースが著作権法で保護されるのは,「情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」である場合です。

 したがって,データベースに格納されているデータが経済的な価値があるか否かとは関係がなく,「情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」と評価されない場合には,著作権法上の保護を受けることはできません。この点は,以下の東京地裁平成14年2月21日中間判決が,データの経済的な価値ではなく,あくまで,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるか否かを検討していることからしても明らかでしょう。

東京地裁平成14年2月21日中間判決
データベースとは,情報の集合物を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいうのであるところ,前記前提となる事実によれば,原告データベースは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能を持つ「リレーショナル・データベース」と呼ばれるものである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるのであるから,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。

 では,どのような場合に,「情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」と評価できるのでしょうか。この点について,同判決は,以下のように判示しています。

東京地裁平成14年2月21日中間判決
原告データベースは,別紙図1のとおりの構造を含むと認められるところ,そのテーブルの項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方について敷衍して述べると,PROJECTテーブル,詳細テーブル等の7個のエントリーテーブルと法規制コードテーブル等の12個のマスターテーブルを有し,エントリーテーブル内には合計311のフィールド項目を,マスターテーブル内には78のフィールド項目を配し,各フィールド項目は,新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ,期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,効率的に必要とする情報を検索することができるようにしているものということができる。すなわち,客観的にみて,原告データベースは,新築分譲マンション開発業者等が必要とする情報をコンピュータによって効率的に検索できるようにするために作成された,上記認定のとおりの膨大な規模の情報分類体系というべきであって,このような規模の情報分類体系を,情報の選択及び体系的構成としてありふれているということは到底できない。加えて,他に原告データベースと同様の情報項目,体系的構成を有するものが存在するとも認められないことは,原告データベースを含む構造(別紙図1)をM社のデータベースが含む構造(別紙図3),不動産月報(乙1),不動産の表示規約(乙33),株式会社Tの新築マンション詳細情報(1)(乙34)等と比較精査しても明らかである。

 この事案では,(1)「新築分譲マンションに関して業者が必要とすると思われる情報を多項目にわたって詳細に採り上げ」ていたという点から情報の選択についての創作性を認定し,(2)「期分けID等によって各テーブルを有機的に関連付けて,効率的に必要とする情報を検索することができるようにしている」という点から情報の体系的な構成についての創作性を認定しています。そのうえで,他に原告データベースと同様の情報項目,体系的構成を有するものが存在しなかった点を認定することで,創作性を肯定する根拠を補強しています。本事案は,データベースの創作性判断について言及した数少ない判決であり,データベースの保護を求める著作権者の主張,立証活動において参考となるのではないかと思います。

 この事案では,別紙として,テーブルの関連図が提出されており,原告データベースの創作性の認定に役立っているのではないかと思いますので,興味のある方はこちらを参考にしてみてください。