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 9月某日,客先でミニセミナーをするために東京郊外の街へ出かけた。その昔,ドラマの舞台として注目を集めたこの街も,今では住民の高齢化で話題になっている。しかし,意外にも駅からお客様のデータセンターへと向かう歩道ではベビーカーを押す若いお母さんと何度もすれ違った。広々した緑の多い空間に現代的な建物が立ち並ぶ駅周辺は今でも若い世代に人気があるようだ。

 セミナーではネットワークのトレンドや新サービスの活用について話した。脇道にそれたことをたくさん話すので,Q&Aを含めて2時間もかかってしまった。一番若い人が「今日の話は分かりやすくて,面白かった」と感想を口にし,部長の一人は帰り際に「今のネットワークを構築するとき,松田さんのホームページや本を参考にしました。おかげで大きなコスト削減が出来,私はヒーローになりました」と言われた。「そうだったんですか。今年は固定系も,ワイヤレスも新しいサービスが登場して,久々に面白いことが出来るようになりました。ぜひ,一緒に検討しましょう」と返した。

 さて,今回は携帯電話事業各社が始めたFMC(Fixed Mobile Convergence:固定電話・携帯電話融合)サービスで「内線」という概念が壊れてしまった,という話をしたい。

出そろったFMCサービス

 昨年(2008年)12月に,ドコモは「全国型内線サービス(仮称)」を今夏に始めるとニュース・リリースしていた。その通り,8月末に「オフィスリンク」という名称でサービスが始まった。KDDIとソフトバンクモバイルは,既に今年4月に同様のサービスを始めていたので,これで携帯大手3社のFMCサービスがそろったことになる。

 FMCサービスとは,携帯電話端末を企業の内線電話端末として使えるサービスだ。仕組みは図1の通りで,企業がFMCを使うにはPBXをFMC用回線でIP電話網に接続し,固定電話,携帯電話の内線番号などを登録する。FMCサーバーが090や080で始まる携帯電話番号と内線番号を対応付けすることで,企業内の固定電話から携帯電話の内線番号(10-3333)をダイヤルして通話することが出来る(図中の[1])。このとき,携帯には発信元の内線番号(10-1111)が表示される。通知された内線番号でコールバックすることも出来る。事業所間の固定内線電話間の通話(図中の[2]),携帯電話間の通話(図中の[3])も,同様に内線番号で可能だ。当然ながら固定電話も携帯電話も企業が携帯電話会社と契約したものでなければならない。

図1●FMCサービスの仕組み
図1●FMCサービスの仕組み

 携帯が使えるエリア内ならば,どこでも内線でつながるので利便性が高まる。また,固定と携帯間の通話,携帯と携帯間の通話,固定と固定間の通話がすべて定額になるため,社内通話が多い企業ではかなりの通話コスト削減が期待できる。

 社員に携帯を貸与している企業ではFMCに対する関心が高く,熱心に導入を検討しているところが多い。そういうお客様との議論を重ねていて,FMCサービスは内線と呼べるのだろうか,という疑問が沸いてきた。