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 1000本ぐらい売れるだろうと思って2000年にリリースしたパッケージ(株式会社ヤザワの製品)は、最初の1年間でわずか2本しか売れませんでした。今回は、その原因を振り返ってみます。反省会です。

●反省1 作ればお金がもらえるという意識があった

 前回もお話しましたが、受託システム(特定の顧客の依頼に応じて作るプログラム)の開発ばかり手がけてきた私には、プログラムを作ればお金がもらえる、という意識が染み付いていました。これは、パッケージ(不特定多数の顧客に販売するソフトウエア)には当てはまりません。パッケージは、売らなければお金がもらえません。

 そんなこと百も承知のはずなのですが、パッケージを開発しているときに、いつの間にか、作ればお金がもらえるという意識になってしまったのです。パッケージは、「このソフト売れるの?」「売れるかどうかわかりませんが、作ることはできます」ではなく、「このソフト作れるの?」「作れるかどうかわかりませんが、売れるはずです」くらいの気持ちでやるべきです。

●反省2 リリースをあせってしまった

 私のパッケージは、企画の段階から製品名に西暦の年号を入れていました。そのため、その年の内にリリースしなければならないとあせって、事前調査や販売計画が不十分なまま開発に着手してしまいました。これも、受託システムの開発で体に染み付いてしまった感覚です。納期に遅れないように開発するという感覚です。

 売り先の決まっていないパッケージ製品なのですから、もしも開発が遅れても、誰からも文句を言われることはありません。それなのに、受託システムの開発のように、厳しい納期があると勘違いしてしまったのです。パッケージの開発に期限がないわけではありませんが、受託システムのような厳しい納期はありません。開発の期限を守ることではなく、事前調査や販売計画に力を注ぐべきです。

●反省3 事前調査は、否定的な意見を集めるべきだった

 まったく事前調査なしに、いきなりパッケージの開発を始めたわけではありません。ユーザーとなりそうな企業を10社ほど訪問して、事前調査を行いました。私のパッケージは、分析機器のデータ解析を行うもので、製薬会社、病院、試験場などが、主なターゲットです。製品の企画書を持って、1ヶ月ぐらいかけてターゲット企業を訪問して調査を実施しました。

 どの企業も好意的な意見を言ってくれました。私は、「このパッケージは売れそうだ」と手ごたえを感じ、とても嬉しくなりました。しかし、今になって思えば、この調査のやり方に問題があったのです。それは、パッケージの企画を認めてもらうことを目的としていたことです。ここでも、受託システム開発の感覚が出てしまいました。早く企画を認めてもらって開発へ進む、開発が終わればお金がもらえる、という感覚です。

 事前調査の際の好意的な意見は、社交辞令として言ってくれたものが多かったようです。調査内容も「こういう機能で十分ですか?」「他にどのような機能が必要ですか?」といった、企画を肯定させるような質問ばかりしていました。そうではなく、否定的な意見を集め、企画を練り直すことを何度か繰り返してから、開発に着手するべきだったのです。極端に言えば「この製品を買わない理由を教えてください」という質問をするべきだったのです。もしも、製品に対する否定的な意見を覆せないなら、パッケージを辞めるという選択肢も考えるべきだったでしょう。

●反省4 便利さを明確にしてから、営業すべきだった

 パッケージの開発が終わったとき、私は当たり前のことに気付きました。開発も大変でしたが、これからの販売の方がもっと大変だということです。私を含めた3名のスタッフで、あちこちの企業に飛び込み営業をしました。データ解析を効率的に行える画期的な機能を持つパッケージです。どの企業も、興味深く製品の説明を聞いてくれました。ところが、なかなか買ってくれません。

 営業先の企業で、必ず話題になることがありました。それは「どういう仕組みで、データ解析が効率的にできるか?」です。分析機器を使っている企業ですから、相手はなかなかの知識人です。博士の肩書きを持っている人さえいます。そんな人たちと仕組みの議論になると、必ずこちらが負けてしまいます。ただし、もしも仕組みの議論に勝ったとしても、このパッケージは売れなかったでしょう。なぜなら、パッケージというものは便利だから買うのであって、便利なら仕組みなどどうでもよいからです。

 「お客様と仕組みの議論になったら売れない」これは、私がパッケージの営業経験で得た教訓です。お客様に製品の便利さが伝わらないから、仕組みの議論になるのです。製品のウリを明確に伝える営業資料を用意しておくべきでした。それを、製品の企画の段階から考えておくべきでした。

 以上、様々な反省を述べましたが、すべてに共通する原因は、私がプログラマの感覚でいたことです。作ることに重点を置いていたのが、いけなかったのです。最後にまとめとして、若きITエンジニアの諸君に、これまで何度も繰り返してきたことをもう一度伝えます。「この業界にいるなら、いつかはパッケージをやりなさい。ただし、作ることが好きな人は、売ることが好きな人と一緒にやりなさい」。私は、パッケージを手がけたことで、「作る」と「売る」が別であることを学びました。「頭でわかっているだけではダメだ」ということも学びました。ずいぶん高い授業料を払って学びました。